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第一章4 作戦

作戦

それを聞いて皆様読者様は何を思いますか?

俺、鷲崎奏太は、毎日を同じように過ごし、ただただ無駄な日を送っていた。そんな日が、去年いっぱい続いたためか、リア充になることはおろか、彼女を作ろうとさえしなかった。確定的に終わっていると思うことは人間には基本的に無関心ということだった


 しかしそんなある日。転校生がうちのクラスにやってきた。その転校生の名は椎名璃那。とてつもなくかわいい。初日でクラスの人気者になっていた。もしかしたら、転校生というものはそういう扱いなのかもしれないがそれを軽く上回るくらいの人気っぷりだった。人と話すことは苦手な模様。椎名は世界最強の天然であった。


一番変わったのは俺の心情だ。今までは、

「かわいい」「かわいい」「かわいい」

しかなかったにもかかわらず、今は

「絶望」「怒り」「復讐」

の三つになったことだ。そこで俺はある作戦を考えることにした。


キーンコーンカーンコーンキーンコーンカーンコーン


四時間目の始まりを告げるチャイムが鳴った。よかったことに、コミュニケーション活動をするような授業ではなかったため、早速作戦を考え始めた。


{椎名に嫌われるぞ作戦}

~作戦内容~

1椎名が落としたものを一切拾わない。

2机がくっついているから、離していく。

3最終手段 無視


という内容だった。(実行するのは、昼休み後の授業。すなわち、五時間目の授業からにしよう。)内心そう思いながら、残りの時間を過ごしていた。たかが少し引かれたくらいで、本気で嫌われに行く俺の心が、異常だとは思ったが、かわいさの前には嫉妬など様々な感情が沸き、その気持ちを抑えきれなかったのだ。

そんなことを考えていると時間がたつのは早い。すぐに四時間目の授業は終わった。俺は昼休み、すなわちランチタイムにおいて、弁当を食べる場所を考えていた。(椎名の隣では、食べたくないな。よし。屋上行こうかな。)席を立ちあがり、教室を出た。階段を三階分上り、屋上に出た。


「やっぱり一番落ち着くのはここかな。」


そういって、静かに腰を下ろした。俺の髪の毛をなびき、すべてを忘れさせてくれた。弁当箱を開け中身を確認した。まぁまぁといった中身ではあったが、嫌ではなかった。すぐに食べ始めた。

 何分かして、食べ終わり、たそがれていると、ガチャっと、屋上のドアが開く音がした。


「あーーーそうただ!何組だったの?」


と、なじみ深い声が聞こえてきた。彼女の名前は、森沢梨美。目は大きくきれいで、背は低め。ショートヘアーの容姿端麗美少女と言ってもいいだろう。欠点は、口が軽いことと、その口から発される中二病発言だ。俺とは幼馴染みで、幼稚園児の時からの付き合いだ。ケンカはしたことがない。なぜ梨美が俺のことをそうたと、呼ぶのかというと、奏太の{奏}の字が、演奏の奏と、同じことに小学一年生くらいで気づき、そこからずっと呼ばれ続けている。

俺は気にならないのだが、唯一迷惑がかかるとしたなら、初対面の人に勘違いされることだった。その誤解を解くのには大変苦労している。


「梨美。何の用だ?」

「そうたって変わってないね。」

「どうしたんだよ急に。」

「なんか、クラスの雰囲気になれなくて、そうたなら、ここにいるかなぁと思って、」


俺はすごく恥ずかしくなった。(まさかあいつは俺に助けを求めている!?)とりあえず俺は


「らしくないこというなよ。お前なら大丈夫だって。」

「はぁぁぁぁっさすがっそうた。私が見込んだだけはあるわね。」

気が緩むといつもこうなる。

「じゃあな。」

「次現れるときはそうたが死ぬときか。」

わけわからないフレーズを残して、屋上を去っていった。再び静寂が訪れる。俺はこの空気が一番好きだ。何にもなれる空気。誰も何も言わず気にもしない。俺の最終目標は空気になるはずだった。しかし今はどうだ。椎名に嫌われたい。空気でもなんでもない。しかし、俺はその時だいぶ思考回路がおかしくなっていたのか、(男に二言はねぇ。やるぞ鷲崎ぃぃぃぃ)屋上で叫んだ。すっきりしたのか教室へ戻った。椎名は自分の席で静かに読書をしていた。遠目に見たが、何の作品かわからなかった。俺も静かに席に着き、鞄をあさり、小説、ラノベを読み始めた。横目に作品を見たが堅苦しい文字の羅列が、吐き気を催した。ラノベとは違う何かがあった。昼休みも終わり、五時間目の授業に入った。俺はいつにもましてやる気に満ち溢れていた。(作戦開始)心の中でそうつぶやいた瞬間と言ってもいいほどのジャストタイミングで、椎名の机から、消しゴムが落ちた。その消しゴムは地面の跳弾を経て俺の椅子の下まで転がってきた。俺は本気で無視というか気づいていないふりをしていた。椎名がこちらを向いている。(やばいやばいやばいやばいやばい。ここで拾ったら俺の負けだ。我慢我慢我慢我慢)椎名は諦めたのか椅子から降りしゃがんで俺の椅子の下に手を伸ばした。とれたのか、椅子に座り授業を受け始めた。しかし、思いもしなかったことに椎名の口が開いた。


「もしかして、さっきのこと気にしてる?」


前を向いている俺に話しかけてきた。俺は無視しようとしたのだが、それをやめた。いや、出来なかったのだ。


「かなり気にしてた……」


そういった。椎名は、


「ごめんなさい。そっけない態度をとってしまって。」


と謝罪してきた。俺は嫌われるためなのか、勝手になのかわからないが、無反応で授業に戻った。作戦失敗かと思った。奇跡は舞い降りて、来なかった。あいまいな感じで終わってしまったことへの反省を込めて、無視することを決意した。五時間目の授業も、終わり、最後六時間目の授業へと移った。科学室で、実験が始まった。実験内容は、炎色反応。それを聞いたとき、みんなの頭の中には、?が浮かんだはずだった。それもそのはず。一言も、一ミリも授業でやっていないからだ。(暇なときに教科書を読んでいて助かった。)内心そう思っていた。簡単にいうと、火の中に様々な物質を入れると、色が変わる反応のことだ。早速実験が始まった。俺は何気なく、ガスバーナーに火をつけて、様々な物質を入れていった。班の人たちが


「おおおおおおぉぉぉ」


となる中でやっていた俺はすごく恥ずかしかった。一番自分の中で、良かった反応がリチウム反応だった。火の中に入れた途端色が深紅になった。それが美しく自分の心にしみた。

 瞑想にふけっていると、よこから痛い視線が来た。チクチクチクチク刺さるような視線だった。ふと、その方向を見ると、椎名が俺の顔を見ていた。俺と目が合い、気まずくなったのか、燃えている火を見た。近くで燃えていたからか、椎名の長い髪の毛が、火にあたりそうになっていたのだ。


「椎名。危ない。火にあたるぞ。」


椎名の肩を力ずよく引いた。周りからの視線がすごかったのだが、下からの視線もすごかった。そこには、上目使いをして、甘えている椎名がいた。(ふん。俺にはそういう戦法は聞かないのだ。毎日毎日、妹の攻撃を食らってから慣れてしまったのだな。はははは)そう思っていたが、違う本当の理由を見つけた。俺は椎名に嫌われたい。好きなどの好感情を持ってはいけないと思っていた。したがって、俺の目には、椎名の行動がすべて、嘘なんじゃないか、誘っているんじゃないか。かわい子ぶってるだけなんじゃないか、というマイナスな発想しか、想像できないフィルターがかかってしまったのだ。俺は、咳払いをして椎名をどかした。椎名はふてくされたのか、また火を見つめ直していた。俺は、椎名の目をばれないように見た。普段よりも、潤っている感じがした。考えすぎなのかもしれないが、確かに潤っていた。

 そんなこともあり、理科の授業が終わった。


この時まだ、誰も二時間後に事件が起こるなんて思いもしなかったはずだ。


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