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第一章3 思い込み

前回までのあらすじ。


椎名璃那は最強の天然だった。

俺、鷲崎奏太は、毎日を同じように過ごし、ただただ無駄な日を送っていた。そんな日が、去年いっぱい続いたためか、リア充になることはおろか、彼女を作ろうとさえしなかった。確定的に終わっていると思うことは人間には基本的に無関心ということだった


 しかしそんなある日。転校生がうちのクラスにやってきた。その転校生の名は椎名璃那。とてつもなくかわいい。初日でクラスの人気者になっていた。もしかしたら、転校生というものはそういう扱いなのかもしれないがそれを軽く上回るくらいの人気っぷりだった。人と話すことは苦手な模様。運動神経はわからない。

わかったことと言えば、椎名璃那は世界最強の天然であることだ。


椎名も


「っできたぁぁぁ。」


そういってこっちに見せてきた。


「え?」


俺は戸惑いを隠せなかった。その絵を見たとき俺は、写真か、何かかと思うほどの、うまさだった。到底鉛筆一本で描いたとは思えないほどの完成度だった。


「ど、どうだったかな?」


「ええええ、えっと……うまい。うますぎる。人間が書いたとは思えないし、書いたのだとしても、高校生が描いたとは思えないよ。」


 椎名は照れているのか、口を膨らませていた。授業開始から四十分経過したとき


「ゴホン。えーでは、みんなの作品を、見せてみろ。」


一人づつ、黒板に貼っていかれた。なかなかの作品から、作画崩壊と叩かれるものや、もはや人間とすら呼べないものまであった。順番が巡って、俺の番になった。


「おおお」

と少し歓声が上がった。俺は素直にうれしかった。そして次、椎名の番になった。


「おおおおおおお!!!」


スタンディングオベーションになった。クラスの皆はサッカーで点を入れたときのような歓声で騒いでいた。俺はかなり恥ずかしかった。なんせ、描いてある人物は俺だからだ。俺を書いたその絵でみんなが歓声を上げている。とんでもなく恥ずかしかった。先生が全力で静かにさせた。そのあとに出てくる絵がかわいそうに思えた。そんな素晴らしい授業も終え、三時間目となった。三時間目は{英語}俺のとっては昔から大嫌いな教科だった。将来の夢は自宅警備員として頑張るつもりなのに、英語?は?くそくらえよそんなの。しかし、椎名がいるということで少しはやる気になった。


「Hello, everyone.」

始まってしまった地獄の時間。

「Let's communicate with eacu other.」

聞くことだけならできる俺は、言葉の意味を理解してしまった。先生はおそらく、コミュニケーションをとれ。とかそんなことを言ったのだと、思った。また椎名。また椎名なんだよ。一時間目は良いとして、2、3、と来てるからなぁ。もしかして、実は椎名は運命の人なんだと思い込んでしまった。

「では皆さん。 隣の人に様々な質問をしてみましょう。」


俺はできる限り流暢に言った。


「うぇあー どぅー ゆー りぶ?」


俺の最高はここだった。すると、


「I live in Tokyo」


 帰国子女のような、発音の良さで俺は聞きなおしてしまった。


「I live in Tokyo」


同じ答えが返ってくる。とりあえず


「さ、さんきゅー」


と返した。(やばいやばい英語ができないのがばれる。てかもう、ばれてるか。)椎名は休む暇を与えなかった。


「What is your favorite car?」

「え、あ、え。えっとー。 あいらいくふぇらーり」


これで伝わっているのかはわからないが、とりあえず椎名は納得してくれたらしく。うんうんとうなづいていた。幸い英語のコミュニケーション活動はすぐに終わった。俺の心は軽くなった。先生が黒板に授業の内容を書き始める。俺はいつもの通りに、ノートを書いていた。


「カチカチカチカチ」


(今日はやけにボールペンをカチカチする音が聞こえるな。少しうるさいからやめてほしいな。)内心そう思っていた。自分の机に目を落とすと、そこには無数のボールペンが俺の机を覆っていたのだ。僅かながら、ノートが見える。俺は恐る恐るペンをどかし、ノートを見た。(やってしまった。)ノートがありえないほどにカラフルになっていたのだ。普段はノートを書くとき、黒、赤、青の三色程しか使わないのだが、今日はそれ以外に、緑、黄色、オレンジ、ピンク、紫、水色 Etc....とにかくたくさんの色を使ってしまったのだ。椎名にそれを見られたら終わる。そう思って、隣を見た。ガン見していたのだ。しかし椎名は気持ち悪いようなそぶりを一切見せつけず、


「すごいカラフルだね。 あ、オレンジ色貸してもらってもいいかな?」

「あ、ありがとう。はいオレンジ色。」

「ありがとう。」


そんな数秒の会話をして、椎名が机にペンを置いた瞬間だった。

それは、高い高い、絶壁。富士山から、地面と直角に落ちていく、石のように、机の上から、消しゴムが落ちていった。勿論俺は、そんな絶対的チャンスを、見逃すはずがなかった。頭の中で恐ろしい計算をし始めた。


「………………落ちる位置はここだぁぁぁぁぁ」


その位置に手を伸ばすと、消しゴムとは違う何か温かい感覚を覚えた。そこに視線を向けると、純白の色をした、手があった。反射的に手を引いてしまった。俺は一瞬固まった状況把握にかなりの時間を催してしまったのだ。俺は椎名の手を触ってしまったのだ。椎名のほうを見ると、少し引いたような、軽蔑したような眼で見ていた。(うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁやってしまったー。絶対的、確定的に嫌われたぁぁ。)とっさの判断をして


「ご、ごめん。」


「う、うん。いくらなんでもやりすぎかなと思った。あと、わかりやすすぎ。意識しすぎて行動が………」


俺は振られたみたいになった。落ち込み、机に顔を伏せた。何かおかしいと思った。(展開が早すぎる。転入生が来るのは、まぁまぁ良いとして、出会って二日目で振られるとか、意味わかんねぇ。普通ラノベとかだったら、一週間とかしてから、じわじわ俺が気づいていくとかそういう系じゃないのかよ。)そう思いながら机の上に顔をうずめていた。はたから見たら、ただのキ〇ガイだった、授業中に消しゴム拾おうとして、なおかつ起き上がったと思ったら、急に机に顔を伏せている。本当に自分が今思い返しても変人だなと思った。

 俺は人生史上最強的な地獄を味わっていた。振られた相手にはおそらく皆様なら近づかないと思うが、俺が降られたのは誰だ?椎名璃那だ。そいつの席はどこだ?俺の席の隣だ。休み時間を終えても、また会わなければならない。たとえ学校が終わっても次の日には………隣に待ち構えている。挙句の果てには、コミュニケーション活動。振られたやつと話すなんて最悪だ。これは、俺がふてって、八つ当たりしているわけではない。ただ、イライラしているとしか言いようがなかったしかしそれは、俗にいう、前に並べた言葉たちだった。俺の中には絶望、怒り、復讐の三つの言葉が脳を、恐ろしい速さで巡っていた。ノートに計画を書いていた。俺はその時にやけていたらしく、


「おい、鷲崎。お前なんで笑ってるんだ?」

「あ、え、えーと。昨日のテレビを思い出してしまいました。」

「しっかり集中しろよ。」


 また思った。振られたのに笑ってるとか、とんでもないM男か、ポジティブ思考半端ないやつだなと思ったが、すぐに、あの三単語でかき消されてしまった。


俺の心にはあの三文字。「絶望」 「怒り」 「復讐」の言葉でいっぱいになったのだ。

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