第三章2 意外
俺は高瀬と一緒に帰っていた。+椎名。
そろそろ家に着くころ、高瀬に最後の望みをかけて一言言った。
「なぁ。ま、まなか。お前、俺の家知ってどうする気だよ。」
「えっと~、こんど遊びに行っちゃおっかな~。なーんて。」
後ろのほうから足音が聞こえる。身の毛がよだつような殺気を放っていた。椎名は俺に嫉妬をしている?
と、勝手に妄想していた。この先のことを想像した。
椎名が俺の恥ずかしい写真を見せる
椎名が無理やり自分の家に連れ込む
椎名が何らかのかまって行動をする
など、様々なことが考えられたが、どれも確信はできない。いざとなったら、おんぶ………と言ったことを言う覚悟までできていた。
あと少し。あと、本当に少しだ。家まであと三メートルのところで、後ろから椎名が走ってきた。
「サッ」
俺の視線に入ったと同時に下のほうに消えていった。それは本当に一瞬の出来事だった。俺と、高瀬を走って抜いた。そして、あからさまにわざとらしく転んでいった。勿論傷一つしてない。地面に這いつくばる椎名を見て俺と高瀬は一回だけ椎名のことを見て
「さ。まなか。行くか。」
「そうですね。」
椎名のことは完全に無視をしていった。振り返ったがまだはいつくばっている。ちなみに顔は地面にしっかりとついているため、俺らのことは一切見えていないはずだ。と、すると本当にかまってもらえるまで這いつくばっている気だ。(いかんいかん。一瞬かまっちゃいそうになった。危ない危ない。)そしてやっとの思いで俺の家に到着した。
「ここが、俺の家だよ。」
「おおおおおおお。広い!そしてキレイ!」
「そんなことないって。んで、どうすんの?帰んの?」
「それ以外に選択肢が?」
「なくはないと思うぞ。」
「じゃ、お邪魔します。」
ついつい俺は高瀬を家に入れてしまった。高瀬を家に入れるために玄関を開けて待っていた。まだ、椎名は這いつくばっていた。
俺は高瀬を自分の部屋に招いた。特に何も置いていないため片付けることもなく普通に入れた。
「えっと?それで、りなちゃん家が、隣だから、あれ?」
高瀬は窓のほうに指をさして言った。高瀬の怖いところは無駄に勘が鋭いことだ。ひょんなことから大きなことまで。そのレパートリーは非常に多かった。
「そうだよ。」
「へ~」
窓を覗きながら答えた。
「って、窓からのぞけちゃうじゃん。覗いてるでしょ?」
「そんなことしねーよ。第一、あいつの窓の方が上にあるんだから普通に考えて、無理だろ。」
「たしかに。」
そんな会話をすると、今度は、部屋を詮索し始めた。
「まなか。何見てるんだ?」
「えー?変なものおいてないかなー。と思って。」
「置いてねぇよ。」
そんな会話をしていると、俺の部屋のドアがガチャっと、開いた。俺と高瀬は開いた方をじっくりと見ていた。
「あれ?小さい女の子?わ、わわ、鷲崎君そんな趣味が」
「ちげぇよ。俺の妹だよ。」
「鷲崎香蓮っていいます。よろしくお願いします。」
「かれんちゃん!私は、高瀬愛華っていうよ!まなかって、呼んでね。」
「じゃ、じゃあ!まなかおねえちゃん!」
「ほほぉぉぉぉぉぉ。お姉ちゃん?今おねぇちゃんって言った?」
「うん……」
「これから毎日来てもいいかな?」
「うん!」
「って、おいおい。勝手に……」
そんなことがあり、高瀬は俺の家に毎日来るようになってしまった。数時間して
「ばいばーい。」
そう言って、高瀬は帰っていった。静かになる部屋に少しばかりの寂しさが残った。香蓮は高瀬に何を教えられたのかわからないが、中二発言を発し始めた。まぁ、学校でそのようなことを言わなければいいのだが…………
今の時刻は午後五時。ごはんの時間まで、あと一時間ほどある。俺は、ひとまずアニメ視聴を始めた。学校に俺は友達がいない。強いて言うなら高瀬くらい、俺は男友達がいない。したがって、一緒にアニメを語る、そもそもの会話をすることが出来ない。しかし俺は悲しいなんて思ってはいなかった。一人でも俺にはアニメと言う存在があった。それのおかげで今まで助かってきた。しかし、これから毎日高瀬と会わなければならない。俺は思いのままにアニメを見れないのだ。そう。それがどんなに嫌なことか。
たとえるなら、したいことが出来ない、そうそれは、スマホで遊びたいのに、電波が一切飛んでいない。
ご飯が食べたいのに金がない。本当にそういう気持ちだ。俺はただただイライラし始めた。そのイライラを抑えるために、俺はアニメを見た。ちょうど三話ほど見終わったところで、
「かなたー。ごはんだよ。早く降りてらっしゃい。」
「ほーい」
俺は軽く返事をし、一階に向かった。
その後、何か大ごとのようなことは起きず、俺はただただアニメを見て優越感にどっぷりと、浸かっていた。俺は本当に三次元と言うものに興味がなかった。すると、俺の部屋の扉が再び開いた。そこに立っていたのは香蓮だった。
「お兄ちゃん。少し深刻な話がある。」
「ど、どうしたんだ?お前が深刻だなんて、よっぽどだぞ。」
なかなかに深刻そうな顔をして言ってきた。その時の俺の感情は心配の二文字しかなかった。
「あ、あのね。そのーさっき…………」
(えええええええええええええええええええええええええええええええさっきって、おいおい。さっきって、)あまりのことに俺は動揺が隠せなかった。
「あ、あの、さっきの、お姉ちゃんの名前って、なんだったったけ?」
「ファッ?」
驚きのあまり変な声を出してしまった。さっきのお姉ちゃんって、え?
「高瀬愛華のことか?」
「は!そうだ!」
とてもうれしそうな表情に変わった。確かに、香蓮は人の名前を覚えるのが少し苦手で、ごくたまに聞いてくることがあるが、勿論俺が知っている人でじゃない。そんなときは、五十音、席がどのあたり?などと、あらゆる方法を使って答えを導き出していった。
香蓮は気分よさそうに、俺の部屋を出て行った。数秒後再びドアが開き
「ありがと。お兄ちゃん。」
といって、ドアを閉めていった。俺の視線はスマホのほうに落ちていった。それから数時間し、俺はいつも通り風呂へ向かった。スマホをいじっていると時間が経つのは非常に速いと、誰よりも痛感できると思っている。
風呂場に着き、衣類をすべて洗濯籠の中に入れ、バスルームに入った。頭を洗おうといたとき、小さな事件が起きた。
(ぶちゅ。ぶちゅ。キュッキュッ)
「あれ?シャンプーが、って、あああああああああああああああああああああ。もうないじゃん。うわーーー。悲しいな。」
俺はたわいもないことで一喜一憂する謎の性格だ。容器の中にシャワーで水を入れ、ふたをし、振って頭からかぶった。以外にも泡立ちがよく、なぜだか納得できている自分がいた。洗い終わると、シャワーで爽快に泡を吹き飛ばした。
体もきれいに洗い終わり、フィナーレともいえる、熱い熱い風呂に、飛び込んだ。あまりの熱さに一回、湯船の外に出てしまった。その後ゆっくりと肩まで使った。本当に何もかも忘れさせてくれる風呂が二番目に好きだ。一番目はもちろん自分の部屋。三番はと言うと、トイレだ。あの個室的空間がたまらないのだという。俺は変わった趣味をしているとつくづく思う。しかし、俺の弱点としては長く風呂に浸かっていられないということだ。すぐにのぼせてしまう体質だ。
風呂を上がり、ドライヤーで髪を乾かした。パジャマに着替え、俺は完璧な寝る体制を作っていた。残り5分と言う時間を有意義に過ごしていた。