第二章7 出会い
最初に謝っておきたい。中二病が出てくる。
それにより多少の読み方の違いが表れる。混乱を避けるためその部分をここに書いておく。
真紅忘却 スカーレットオブリビヨン
深紅領域 ヴァイオレットフィールド
焔龍野獣 サラマンドラビースト
中二病の使い手 ゴッドエクゼキューター
初心者 ビギナー
以後出てきた場合にもこのようにして対応するから、この方式になれてほしい。
椎名においていかれた俺は、ゆっくりと学校へ向かった。校門の前には挨拶当番の生徒が数名、おはようございます。と、登校してゆく生徒に声をかけている。俺はそれが大嫌いなのだ。俺以外の皆はしっかりあいさつし返しているのに、俺だけ返さないのもおかしい。しかしおはよう。なんて言葉は言いたくない。そうこうしているうちに校門の前まで来てしまった。俺はもちろんガン無視で通り抜けてた。しかしすこし憂鬱な気分になった。(よし。今度から挨拶してみよう!!)下駄箱に着き靴を履き替えようとしたその時、上靴の下に何かが置いてあるのが見えた。恐る恐る確認してみると、それは、一通の手紙だった。(うわぁぁ。お、俺にこここ、告白かよ?俺もいい身分になったな。)ひとまず周りを見渡し、人がいないことを確認し鞄の中に急いでしまった。教室までの道のりをスキップしながら歩んだ。周りの人の視線が恐ろしく気になるのはさておき俺の興奮度はマックスになっていた。
「やはり、三次元も捨てたもんじゃないな。」
そんな独り言を残し教室へ入った。特に俺に向かう視線は感じられない。(そうか。この手紙を残した人物はこのクラスではないことか。他クラス?俺は交流なんてないぞ?あちゃー一途だったパターンかよ。)脳内妄想はどんどん広がってゆく。(しかし、この手紙を読まなければ進展はない。さぁ。どこで読むか。)恐ろしい速さで物事を考える。案が出てはすぐに否定される。そういう時の、頭の回転は恐ろしいのだ。それが日常でも出来るようになってくれればいいのだが…………… 答えが見つかったのは意外と早かった。その場所とはトイレだ。授業中に行くことも可能、授業中に行けばもちろん誰にも見られることなく安心して読める。
屋上という案もあったのだが、行く時間がないと言うのが現状だった。
「キーンコーンカーンコーン」
ホームルーム開始のチャイムが鳴った。
「お前ら。今日もいい天気だな。こういう日は勉強がはかどるぞ。」
そう言って、教室を後にした。俺は一時間目の用意をし平然を装いつつラノベを読んでいた。椎名は友達が出来たのか、わいわい話をしていた。(ふーん。やればできるじゃん。人間っていいね。)俺は上から目線でそう思っていた。本を読んでいると、会話が少し聞こえてくる。
「ねぇねぇりなちゃん!何か忘れたいことがあったら私の・真紅忘却を使って忘れさせてあげるね!痛いのは一瞬だから大丈夫!」
「そ、そう。では、何かそのようなことがあれば伺いますね。」
「りなちゃんりなちゃん。友達なんだから敬語じゃなくていいんだよ?」
「そ、そ、そそ。そうなんだ…………………………………愛華ちゃん、」
聞いていた俺はびっくりした。まさか、椎名の友達が最高峰の中二病だったとは。俺も彼女の詳細は知らない。盗み聞きで、情報を得るしかなかった。今わかっているのは、まず髪の毛は黒色、右耳の少し上のほうにリボンで髪を止めている。それと下の名前が愛華ということと、中二病」と言うことだけだ。会話は続く。
「りなちゃん。あのね。私の深紅領域に入ってしまった異性の人は私のことを好きになってしまうの。」
「そ、それはすごい効果ですね。今まで何人の男の人を寄せ付けたのですか?」
「能ある鷹は爪を隠す。りなちゃんはその言葉を知っているかい。」
最高にかっこつけて言い放った。
「はい。存じていますが。優れた実力の持ち主がそれをひけらかさない。そんな雰囲気の意味ですよね。しかし、今使えると言ってしまったということは…………………………」
「これ以上言っちゃだめぇぇー。」
愛華は椎名の口に手を当てた。そして会話は終わりそれぞれの席に着いた。俺はものすごく愛華のことが気になった。利用すればいいように使えるかもしれないとそう考えた俺は次の授業が終わったときに学校生活初めての女子に話しかけるという恐ろしい行為をすることを心に決めた。しかし、仲良くなるためには?と考えていると、やはり中二病なことをいうしかないという悲しい答えが待っていた。
「キーンコーンカーンコーン」
チャイムが鳴り一時間目が始まった。15分ほどして俺は、はっと思い出した。(すっかり、手紙のことを忘れてた。そろそろ演技開始するか。)急に机に顔を伏せ両手でお腹を抱えた。(頼む。早く先生反応してくれ。早く!)
「おい。鷲崎!何で寝てんだ!早くからだ起こせ。」
完全に先生は勘違いしている。俺は体を起こした。勿論お腹が痛い演技は続行中。(やっぱり、自分から言った方がいいか。よし!)
「あ、あの。先生。お腹痛いんで、トイレに行ってきてもいいですか?」
「大丈夫か?早く行ってこい。」
(キタぁぁぁぁぁこれこそが俺が望んでいた完璧なシチュエーション。)俺は教室を出て廊下を歩いた。あくまでもおなかが痛いため、先生が急に覗いたときのためにゆっくり前かがみになりながら歩いた。トイレに着き取り敢えず個室に入った。一息つきポケットから手紙を取り出した。
白色の封筒の中に水色の紙が入っていた。その紙を取り出しゆっくりと、紙を開いた。そこには
{鷲崎くんへ}
この言葉で始まった。俺の興奮度はマックスをはるかに上回っていた。読み続ける
{この手紙の内容は誰にも言わないでね。}
(うはぁぁぁぁ。秘密系だ。来た来た。勝ち組だ)
{鷲崎君とはもう話さないで手紙の中だけにしない?}
ふぇ?どういうことだかさっぱり理解できなかった。話したくないけど?意味わかんねぇよホント。
{椎名璃那より}
いや、お前かい。薄々気づいていたけれど、まさかお前だとは。
俺はトイレを後にした。教室に入り自分の席に着いた。周りからは見えないように机にその手紙を出した。
横から恐ろしい剣幕でこちらを見ている椎名がいた。そしてつねった。
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い」
俺はすぐに手紙をしまった。しかし、手紙では非常に効率が悪い。何故メールにしないのか。そこはあえて聞かないことにした。授業終了五分前、俺は再び作戦を練っていた。愛華という人物に迫るための作戦だ。
中二病的発言から入ることに決めたのは良いが
全然思いつかないのだ。(ファイヤウォールプリズンちがうな。フェニックスミラージュ違う違う。なにかこう、相手の心を揺さぶるような。野生、本能、お!きた。焔龍野獣だ。これつかお。)物事に集中すると時間が経つのは早いもので。
「キーンコーンカーンコーン」
終了のチャイムが鳴った。号令の後俺はすかさず愛華と呼ばれる人物のもとへ駆け寄った。
「こ、こんにちは。鷲崎っていいます。よろしくお願いします。」
(おいおい。さっき考えた中二発言はどうするんだよ。)
「あ、鷲崎っていうんだ!この出会いは神が定めた運命。あ、私は高瀬愛華!これからよろしくたのむぞ。」
「俺の焔龍野獣が高瀬に興味を示したのさ。」
「まさか、おぬしかなりの中二語の使い手なのか?」
「は?エク、キュー太?へ?」
「まだまだ初心者のようだな。」
訳の分からない会話が続いた。椎名のほうを見ると席にいない。どこだ。どこにいる。なんと、高瀬の隣にいたのだ。ボッチの悲しさを知った椎名はすぐに友達の所へ駆け寄るような、弱い子になってしまったのだ。
高瀬愛華 ただの中二病では、なさそうだ。
この出会いが再び俺の人生を大きく狂わすことになるとは、まだ誰も知る由もなかった。