第二章6 恐怖
返信が遅いと言っても三十秒ほどで返ってきたのだが………
メールにはこう綴ってあった。
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送信者:莉那
件名:考えておく
本文:
考えてみたけどどうせ切り札ってあれでしょ?
私の体調が悪かった時におんぶをねだった。ってことでしょ?
あれは100パーセント完璧な対処術を見つけているから使えないよ。
それと
https://www.omosiroi.com/image/no1.jpg
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本文には一つのURLが載せてあった。俺は恐る恐るそのメールに添付してあった、URLを押して見た。
少し重たいのかロードが四分の三を行ったところで固まってしまった。数秒待つと画像がスマホにダウンロードされた。ダウンロードされた場所をゆっくりと慎重に開いた。するとそこには、ブランコの柵に足がかかり顔が地面についている状態の写真があった。
俺は恐怖に青ざめ、手が震えた。すぐさま
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送信者:鷲崎
件名:お前
本文:
いつどうやってとったんだよ。
こんな完璧な画像。
本当に拡散やめてください。
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と、椎名に送った。刹那にも満たない速さで再び返信が来た。
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送信者:莉那
件名:焦ってるね。
本文:
まず、飛んだ瞬間に面白い気がしたから撮ったんだぜ☆
この他にもいろいろあるぜ☆
拡散だっけ?
まぁそれは、今後の鷲崎君の
行動によるかな。
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と書いてあった。俺は本当に怖くなった。カーテンを開け椎名に見えないように、椎名の家の窓を覗いた。あいにくカーテンが閉まっていて、中の様子がうかがえなかった。疑心暗鬼になってしまったとき
「かなたー。ごはんですよー」
一階のほうから母の声がした。すぐに一階に降り、席に着いた。今日の夕飯はエビフライだった。いつになくサクサクだった。何をしたらこんなになるのかっていうくらいサクサクだった。食卓がサクッという音でハーモニーを奏でていると言えるほどいい音だった。そんな食事もすぐに終わり俺は部屋に戻った。じっくり今後のことを考えていた時、部屋の扉が開いた。
「お兄ちゃん。ここの問題がわからないの。教えて。あれ?何か考え事してた?」
妹の香蓮が入ってきた。どうやら学校でやった二桁のひっ算がわからなかったらしい。俺は自分の椅子に香蓮を座らせ丁寧に教えてあげた。しかし、いまいちわかっていないのか、頭の上には{?}が浮かんでいた。二十分ほど説明するとようやくわかってくれたのか、笑顔で部屋を出て行った。俺がさっきまで考えていた、ことをすべて忘れさせてくれた。俺はおもむろにスマホを取り出し、大好きなアニメを見始めた。一度に5話分見てしまった。時計を見ると、10時45分だった。
宿題をする時間と、風呂に入ることを忘れてしまった。(今からするにしても時間的な問題がある。今日は諦めて明日の朝にするか。)
「キュッキュッキュッキュ」
油性ペンでルーズリーフに
:明日起きたら:
・宿題
・朝風呂
と書いておいた。間もなく睡魔に襲われた。
━━━━━夢の中━━━━━━
パッと目を覚ますとそこは、俺の部屋だった。慣れている俺は、再び起きるのが面倒くさいので左手の甲をつねっておいた。まもなく母に呼ばれ朝ごはんを食べに行った。
今日の朝ごはんは 白米 魚 みそ汁 と言った、超絶日本人的な朝食だった。すぐに朝食を済ませた俺は香蓮を起こし身支度をこなした。(毎度毎度同じ展開だよ。そろそろこの展開にも飽きたな。)そんな独り言を言い放ち、一階の玄関へ向かった。ドアを開けるとき、ふとある悪夢がよみがえった。ドアを開けた先には椎名がいるのではないかと言う恐怖にドアが開けられなくなったのだ。
何分立っただろうか。俺の体感時間では三十分?いや一時間と言ったところだ。実際は三分しかたっていなかった。俺の中ではすごく迷っていた。開けて椎名がいたらどうしよう。ああああ。等、しかし一つ完璧な案を見つけたのだ。(待て待て。これって、未来視だろ?ってことはやり直しがきくじゃんか。あー心配して損した。)堂々と家のドアを開けた。すがすがしい朝日が俺を照らしていた。
「少しまぶしすぎるくらいがちょうどいいぜ。」
誰に言ったのかもわからない中二発言。そのまま歩き出した。鼻歌を歌いながら。
「ふんふふーんふーんふふふん」
近所の皆さんの表情はかなり曇っていた。 スキップしながら通学していると、道の凹凸に躓いて転んでしまった。
「パシャッ」
カメラのシャッター音が聞こえた。音のした方を見るとそこには、椎名が立っていた。俺は怖いを通り越して気持ち悪くなってきた。
「お、おま、いつから俺の後ろにいたんだよ。」
「いいこと教えてあげる。」
そう言い、少し間を開けてから、
「私ね。実は、み……しが……る。」
「なんだよ。何言ってるかわからねえよ。おい。椎名!」
見る見るうちに夢の中の世界が、歪んでいった。急いで俺は右手をつねった。
━━━━━現実世界━━━━━━
「はぁはぁはぁはぁ。」
息を荒げていた。おもむろに時計を見ると五時だった。(今寝たとしてもあと一時間、確か三十分前はセーブが出来ない。ってことは、もう起きとくか。)昨晩、予定していたことを思い出し、宿題を始めた。五時半になると同時に宿題が終わった。そして、風呂に入った。朝風呂は今までしたことがなく、寝ぼけていた俺を覚まさせてくれた。
「あれぇ?かなた。朝風呂入ってんの?なんで?」
お母さんに見つかってしまった。俺は正直に
「えっとねー。昨日アニメ見てたら寝落ちしちゃったから、風呂入れてない。」
「あらそう。お母さん朝ごはん作ってくるから。」
と言ってきた。俺は風呂を上がると、珍しくドライアーで髪を乾かした。自分の部屋に戻り、夢のことを思い返した。しかし何も思い出せない。
俺はその時頭の上に {電球} が浮かんだ。我ながら完璧な考えを思いついたのだ。
(夢の中に行ったときに、何か起きたら右手つねって、起きるだろ?そこで、紙にかけば、夢のことが忘れても大体のことならわかるぞ。キタァァァァァァァァァァァァ。)そのことも忘れると思ったからか、紙にしっかり書いておいた。
「かなたーご飯よー。」
<以下省略>
玄関を開け、清々しい日差しを浴びた。気分がよくなってきたのか、
鼻歌&スキップで登校した。少し道に凹凸があった。俺は気づいていたのだが、大丈夫だと思い、そのままスキップしていった。すると、躓き、顔から転んだ。そこに、上からハトの糞が降ってきた。ちょうど俺の頭にヒットした。その瞬間
「パシャッ」
カメラのシャッター音が聞こえた。音のした方を見ると椎名がカメラを向けていた。
「お、おま、いつから俺の後ろにいたんだよ。」
「…………………………………………拡散」
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉ」
一連の流れをすました俺は椎名と一緒に学校へ向かった。
「なぁ。椎名」
「………なに?」
「なんでお前、そんなに俺の写真撮るんだよ。」
「何かあったときの……………護身用…………」
「そ、そうか。」
無言で学校へ向かう。学校に近づいてきたとき
「じゃ、勘違いされるからさき………行くね。」
そう言って先に行ってしまった。