乙女的に中二はちょっと・・・
幻視の能力で“目標”を定めてからのグウィネスさんの仕事は素早かった。
ズタボロにされた自分の作品を目にした私が一人で逆上している間に、ちょいちょいっと魔法陣を展開して、一瞬で“目標”をこちら側へと強制転移させていた。
「なんてことしてくれんの、この馬鹿シグーーーーー!!その外套を仕立てるのに私がどれだけ時間を割いたと思ってんのよぉぉぉぉぉ!!」
「お、おぅ・・・スマン・・・」
「スマンで済むか馬鹿ああああーーーーー!!」
居間の床にペタリと尻餅をついて座り込んだシグの胸ぐらを、むんずと鷲掴みにして思いっきりガクガク揺さぶる私。
━━━え?相手は怪我人??
んなこたぁ知っとるわ!!
でもねえぇ・・・。やたらめったら頑丈な上にプラナリア並みの回復力を有するこの男にとって、この程度の打ち身や擦り傷なんて怪我のうちに入りゃしないのだ。
それよりも、修復不可能なまでに破れてしまった外套に対する(私の)精神的ダメージの方が重症だ。
「うわああああああん!!」
「おまえなー・・、俺はどうでもいいのかよー」
「当たり前でしょ!自己修復するシグと違って、私の作品は元通りにはならないんだからねっ!」
「俺の命は外套以下か・・・」
「鱗族並みに頑丈な男が些細なことで拗ねんじゃないよ、気持ち悪い」
“鱗族”というのは肌が鱗で被われた、いわゆるリザードマン的な種族の総称で、身体能力がずば抜けて高いのが特徴らしい。
「あんたは天狼親子とこの子にせいぜい感謝するがいいよ。ハネズが最短で通路を繋げてくれたおかげで、あたしも素早い対応ができたんだ。さもなきゃあんたはまだ、あの崖っぷちにぶら下がってるとこだよ」
「━━━・・やっぱこいつの仕業か?あのおかしな現象は」
「そのようだねぇ。本人は自覚無しだけどさ」
「マジかー・・」
本人抜きのまま、頭上で会話が交わされる。
シグの口振りからすると、ある程度予想はしてた感じ?
「あの、私・・・特に何もしてませんよ?魔力の流れを意識してたのも最初のうちだけで、後半はウィネスさんの幻視に同調してただけだし」
「あたしの幻視はそれほど精度が高くないと言っただろ?毎回あれだけ鮮明に見通せるわけじゃないんだよ。むしろ今回はあんたの魔力で底上げされてた感じかね」
「そうなんですか・・」
・・・全然実感ないけど、師匠がそう言うならそうなんだろう。
こういう事に関して嘘や出鱈目は絶対に口にしない人だから。
「どうもあんたは脊髄反射で魔力を使うタイプみたいだねぇ。頭で考えて術を組み立てるんじゃなく、本能的に作用するとでもいうか」
「はあ」
「今までどんなに努力しても初歩の術さえ発動しなかったってのに、切羽詰まって身の危険を感じると、あっさり空間を割る」
「へっ!?」
「━━━ハネズ。おそらくあんたの能力は、自己防衛の本能に強く関わっているんだろう。だから普段どれだけ頑張っても滅多な事じゃ発現しないのさ」
それってあれですか・・・。考えるな!感じろ!的な。




