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乙女に捧げる狂詩曲  作者: 遠夜
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真実を告げる者、汝の名は乙女

━━━お母さんの話を持ち出した途端、青磁が号泣して話をするどころじゃなくなってしまった。


「なんつーか・・・、あんま似てねえ父娘だな?お前ら」


成人した男子が人前で臆面もなく泣き崩れる様に、呆れを通り越してむしろ感心すらした様子でシグがポツリと呟いた。


「私は母親似なのよ」


実際に母娘共通の知人には、この子は顔も性格もガッツリ母親似だとよく言われていた。

━━━ただしスタイル以外は、と。

余計なお世話だっつの。


「ううぅ~~~・・あ”っ、がね”ぢゃあああ~~ん、、、ご、ごべんだざいぃぃ・・・」


「だがまぁ、この泣きっぷりには見覚えがある」


五月蝿うるさいよ」


わざわざ指摘されなくたって、自分もわりと明け透けなのは自覚してるし。


感情を溜め込むのが苦手。面と向かってアレコレ言われるより、コソコソ陰口を叩かれる方が何倍もキツイ。

そもそもここは、本音と建前タテマエの使い分けが必須な“島国日本ニッポン”じゃない。

言うべき事は言って、怒る時は怒って、泣きたい時には泣かないと。

『言わなくても察してくれるはず』は通用しない。

特にこの━━━保護者様シグルーンには。




青磁が泣き止んだのは、それから四半時(だいたい十五分)ぐらい経った頃。

・・・青磁のペースに任せて会話してたら、話がちっとも進みやしない。

こうなったらこっちの言いたい事、勝手に言わせてもらおう。


「━━━青ちゃん、さっきの話には続きがあるの」


「・・・聞くよ」


「お母さん、再婚したの。私がこっちに来る直前に。青ちゃんの失踪から七年で法律上死亡が成立した後━━━長い間ずっと間お母さんを支えてくれてた人に求婚プロポーズされて」


「・・・そっか・・・。茜ちゃん、独りじゃないんだ・・・・・」


その後で、『よかった』と呟いた青磁の声は、今にも消え入りそうなぐらい小さかった。


寂しさと、切なさ。それからほんの少しだけ安堵の色が滲む声。

いさかい憎みあって別れた夫婦じゃないから、内心ものすごく複雑なんだろう。


だけど、“異界落ち”が不可抗力にしろ、元妻と離別して一・二年でとっとと再婚してる青磁に、お母さんの再婚についてとやかく言われる筋合いはない。


本人もそれをわかってるから、それ以上何も言わないんだろう


「青ちゃんにも奥さん、いるよね?」


「うっ、・・・うん」


見ちゃってんだからね。今更ごまかしは通用しないよ。

ここであのひとのとの関係について「後悔してる」だの「ただの間違い」だの、見苦しい言い訳しようもんなら━━━━━。


「半年前に、結婚したんだ」


「・・・そう」


「僕さ・・・、こっち来てすぐ行き倒れて・・・彼女と彼女のお父さんに助けてもらったんだ」


「青ちゃん、生活能力ゼロだもんね」


「うっ、否定できない・・・」


あーあーあー。その後の成り行きに大体予想がついちゃった。


青磁という人間の為人ひととなりについてよく知る者ほど、庇護欲を掻き立てられるものらしい。

それこそ老若男女に拘わらず、だ。

━━━それで人生棒に振った女の娘が言うんだから間違いないよ。


根っからのド天然で、警戒心の欠片も無くて、ドジっ子属性まで備えたそこそこ顔の良い男。

見ているとハラハラしてつい、世話を焼きたくなるんだそうな。

私にはどうにもよくわからない感覚だけども。


青磁の現在いまの奥さんとその父親とやらは、ついうっかり出来心で拾った男の面倒を、一生みる羽目になってしまったのかもしれない。



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