乙女の兄???
「あの青年とハネズは血の繋がった父娘なのかい?義理の間柄でなく━━━」
「残念ながら」
グウィネスさんの口からこんな台詞が出るのは、やっぱりどう見ても青磁の見た目が若過ぎるからだろう。
こっちの純人の寿命も向こうとそう変わらないみたいだから、二十歳そこそこの外見の男に十八の娘がいるのは、どう考えてもおかしい。
世間で“混じりモノ”と呼ばれる異種族間の婚姻で生まれた子供は、それぞれの血の影響で成長の仕方が異なってくるから、一概に見た目で年齢を判断するのは難しいらしいけど、私も青磁も混じり気ナシの純人だ。
「・・・確かに、おまえとアイツの匂いはそっくりだったな」
「匂い?」
「獣人系は鼻がきくんだぜ」
あぁ、なるほど。狼だしね!
「それにあの人、見た目はあんなですけど、とっくに三十越えてますよ」
「そうなのかい・・・て、ん?それにしても年齢がおかしくないかい?」
「あのヤロー何歳で女を孕ませやがったんだ!」
「えっと、それが実は・・、私にもよくわからないんですけど、向こうとこっちでどうも時間の流れ方が違うみたいで━━━」
私は青磁とやり取りした会話の内容を、二人にかいつまんで説明した。
「向こうでの八年がこっちでは一年ちょっとだったってのか?」
「ふーん、なるほど・・・。空間を移動する術式を組む際も、細かな計算を怠ると座標がズレたり時間が前後したりする事があるからね。全く異なる空間からの転移ともなると、歪みも大きくなるのかねぇ」
きっと今グウィネスさんの頭の中では、物凄い勢いで色んな仮説が組み立てられているに違いない。
顔付きが研究者のそれになっている。
「で、お前はどうしたいんだネージュ」
こっちを振り返ったシグが、ふと真顔だ。
「・・・どう、って」
「あの“父親”と復縁する気はあんのかって、訊いてんだよ」
「『復縁』!?」
「あいつがお前の父親だと主張してお前がそれを認めるなら、血の繋がった実の父娘として“一緒に暮らす”という選択肢もあるってこった」
青磁と、一緒に ━━━━・・?
「死んでもお断り」
青磁の無事を素直に喜んで受け入れられる時期は、もうとっくに通り越している。
“父親”が行方を眩ますその度に、私に隠れて涙を流すお母さんの姿を見て見ない振りをしながら、私の心の片隅に残っていたなけなしの愛情や信頼は、ガリガリと削られて消えていった。
「それに保護者なら充分間に合ってるもの」
今の私にはグウィネスさんやシグがいて、それに天狼の“お母さん”までいる。
━━━うん?何故そこでシグがドヤ顔してんのかな?
「まあ、そりゃ当然だよなぁー。こんだけ頼り甲斐のある兄貴分がいりゃあ、他人の手助けなんざイラネーよなぁー」
「図々しい年寄りだねえ」
・・・まったくだよ。
可愛い妹分の秘蔵のお菓子を勝手に貪るような、思いやりの足らない『兄貴』のくせに。
取り柄といったら、顔とか顔とか顔とか顔とか・・・・・、━━━━顔しかないんだけど!?




