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乙女に捧げる狂詩曲  作者: 遠夜
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荒ぶる乙女の絶叫

舞台ステージの上からあんた達を見掛けたんで急いで追いかけて来たんだよ~。どうだい、あたしもまだ満更捨てたもんじゃないだろ~?」


「ふぉっ!?」


名前を呼ばれて振り向いたら、見覚えのある美女が近付いてきて何故か思いきりハグをされ、顔面を柔肉に圧迫されて危うく呼吸が止まりかけているという、現在只今のこの謎の状況。


自分が男なら別の意味で天国気分だろうけども。生憎と私の性別は女。

この死に方はちょっと・・・・・!!


「ぐふ!(・・・し、死ぬっ!!)」


「おいテメーいい加減にしやがれ」


ベリッと音がする勢いでシグに美女から引き剥がされたお陰で、どうにか天国の扉は叩かずに済んだけど。

・・・なんというけしからぬお胸様━━━━。


「ぷっはあああ!!」


「あれま、やっちまったかい。ごめんよ~ハネズ」


「その、呼び方・・・」


目の前で『生テヘペロ☆』を披露しているのは、なんとさっきの美女ミスコンで一位を獲得した御本人様。

確か名前が、ネス・なんとかいったような━━━━━。



「・・・・“ネス”・・・・?」



妙な予感に襲われて、改めて目の前の美女を上から下までじっくりと眺めた上で、おそるおそる自分の連れを振り返ると、美女ミスコンNo.1に輝いた美女に負けず劣らずの美貌ビボーの男子は、何故か眉間にくっきりと深い縦ジワを刻んでいる。


「・・・まさか」


基本女子供に甘いシグがこれだけ塩対応する相手なんて、そういるもんじゃない。

━━━そして、私の名前を正しく呼べる人も。


まさか・・・まさかまさかまさかあああ━━━━━━━━っ!!!!


「ウィネスさんっ!?!?」


「大当たりぃ~~~!」


「ふんがぐぅ!?#@%♪#〇!?」


してやったり、みたいなイイ笑顔の師匠グウィネスさんに懐に抱き込まれてまたもや窒息寸前の私。

グウィネスさんの『変装』って・・・こういう事!?


いやさ!何十年もシグに見た目偽装の魔術を施してたくらいだし、このくらいお茶の子なのかもしれないけども!!

シグ一人でも持て余してんのに、グウィネスさんまでこんな常識外れなお顔だったなんてぇ!

・・・聞いてな━━━━━━い!!


城傾ばりの美男美女の取り合わせに、周囲の視線が集中しまくりだけど、流石にこの二人がセットになってるとナンパで声を掛けてくる度胸のある人間はいないみたい。

皆チラチラと遠巻きにこっちを窺うに留まっている。


傍目にはこの二人、お似合いのカップルに見えない事もないしねぇ。

本人達に言えば間違いなく全身全霊で否定するだろうけどー。


━━━なんて事をぼんやり考えてたら、思いっきり蚊帳の外にしていたセレンディードさんがふと声を発した。


「・・・その、“ハネズ”・・・というのは?」


聞き慣れない響きが気になったのか、やけに神妙な表情で問い掛けてくる。


「━━━誰だい?この人」


私の方を向いて首を傾げるグウィネスさんには、“魔道具屋キャリコのお客さんで、単なる顔見知り”とだけ説明しておく。


「他の人にはどうも発音しづらい名前みたいなんで、普段は愛称で通してますけど、()()が私の本名です」


「本名・・・、その、珍しい名前だね。由来とかは・・・」


これはまあ、故郷で知り合いになった人にも必ずと言っていいほどきかれた質問。

日本人にさえ日常的にはあまり馴染みのない単語だもんね。

だけど私のこの名前にはちゃんと意味があって、お母さんの名前と対になってるのだ。


父が頻繁に家を空けるようになる以前、まだ私が小さかった頃に、“その名前は僕が一所懸命考えてけたんだよ”と本人が照れ臭そうに語った事があった。


・・・父親に関する数少ない良い思い出のうちの一つだ。



「『華朱ハネズ』というのは、私の故郷の古い言葉で朝焼けの空の色を指す呼び名なんですよ。私が生まれた日の朝方、とても綺麗な朝焼けだったからって」


「へぇー、そうなのかい」


「ふーん」


「・・・・・っ、」


グウィネスさんとシグがごく軽い反応を示した横で、質問をした当の青年は何故か酷く困惑したような表情で声を詰まらせ、大きく目を見開いたまま固まっている。


?別にどこにも何も驚く要素なんてなかったよね???

赤ちゃんの名付け方としてはあるある的な発想だと思うんだけどなぁ。春に生まれたから『春子』とか、そんなノリだし。


「まさか・・・でもそんな━━━」


なにやらブツブツ独り言を呟いてるけど、私には何が何だかサッパリ意味不明。

━━━まあ、それはさておき。



「三人が揃った事だし、一緒にお昼ご飯にしませんかウィネスさん。私、あちこち歩き回って疲れちゃいましたよ」


「そうだねぇ、そうしようか」


これ以上赤の他人に付き合う必要性なんて、これっぽっちも感じないし。


「じゃあ、私達はこれで失礼しますね━━━」


なおざりに短い挨拶を済ませ、その場を立ち去ろうとしたその時。


「ごめん、ちょっと待って!」


やけに思い詰めた顔のセレンディードさんに呼び止められた。

無視してもよかったんだけど、保護者が二人に増えた事で気持ちに余裕が生まれたのが、結果的には仇になった。


この呼び掛けを無視していれば、その後の私の心の平穏は保たれたままだったのに━━━━━━。





「・・・君、“アカネ”という名前に心当たりがあったりとかは・・・」





それは私にとって、驚天動地の一言だった。


「何故、貴方がその名前を知っているの・・・」


「やっぱり・・・っ、やっぱり知っているんだね!!君はもしかして僕の━━━━━」


「ねぇ、セージ?何のお話をしているの・・・?」


「━━━━『セージ』・・・・・?」






・・・てんめええええええぇ!!本物の青磁ちちおやかあああああーーーーーーーーーー!!!!



セレンディード=姓という設定でした。

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