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乙女に捧げる狂詩曲  作者: 遠夜
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秘密の乙女ちゃん

「━━━幻灯機の核にヒビが?」


「そーなんだよぉ。魔晶石はうちの店に在庫があるからなんとかなるんだけどさ━・・。肝心の中身がスッカラカンじゃ話にならないんだよ。幻灯機ショーは初日の目玉だから、中止するとなると今後の運営委員会うちの評判に関わるんだよー」


駆け寄って来るなり現状を滔々と訴えて、ついには泣きが入り始めたニアさん。

頭の上にへにょんと垂れた耳の幻が見えるようだ。


「━━━それで?テメーはこいつに魔力をタダで提供しろっつってんのか?」


「お礼はちゃんとするよ!元々一人でこなせる作業じゃないのはわかってるから、魔晶石いしを満タンにできなくてもいいんだ。プログラムに手を加えて投影時間を短縮すれば・・・。なんとか、なる、・・・と思うし」


「他にあてにできそうな人はいないの?」


「お嬢みたく規格外な魔力持ちはそうそういやしないんだって!とにかく頼むよー」


「どーすんだ?ネージュ」


「ハァ・・、やるしかないでしょ。だいたい幻灯機ショーが目当てで居残ってたのに、断ったらただの草臥くたびれ損よ」


「んなこったろうと思ったぜ」


特に断る理由も無い以上、頼まれれば手を貸しても良いかなと思う程度にはニアさんとの関係は良好だ。


「引き受けてくれるんだ!?ありがとう!ありがとうお嬢ーーー!!」


・・・今度は尻尾の幻まで見えてきた。




私はその後すぐに、ニアさんによって幻灯機ショーに関わる主催者側の面子に『協力者だ』と紹介された。


連れて来られたのが子供にしか見えない相手という事で、あからさまに落胆した様子の人が多い中、溺藁の心境からか真剣な表情で「魔力量は?」と訊ねてきた人がいた。


「ちゃんと測った事はないけど、中程度の魔力容量の魔道具だったら十個くらいならなんとか」


「・・・こっちは真面目に訊いてるんだが」


「私も真面目に答えてるんだけど」


「・・・・・・・」


「・・・・・・・」


「おいニア、・・・このフザケたお子様はいったい何様だ。こっちは切羽詰まってる状況だってのに、法螺吹き小娘の相手なんざしてる暇はねえんだぞ!」


「うわあぁ、馬鹿馬鹿!お嬢がヘソ曲げたらどうしてくれんだよっ!!」


「馬鹿はお前だ!適当テキトーに魔力持ちを引っ張って来たんだろうが・・・こんなつまらん見栄を張るような子供を連れて来てどうする!!」


━━━うっわ、カチンときた、いま。


私が腹を立てたのがわかったのか、シグが面白そうに口許を三日月の形に歪めてる。

道化師の仮面マスクの下のニヤニヤした表情が手に取るように想像できる。


目の前のオジさんの気持ちも理解できなくはないけどね?

絶体絶命の状況に、見ず知らずの子供が現れて、大法螺としか思えないような調子のいい事を抜かし始めたら、私でも訝しむと思う。


でもねえ・・・・・実際にそれをやられると、やられた方は物っ凄ぉぉく、不愉快。

こちとら善意を押し付けるつもりはサラサラ無いけど、ここまで侮られちゃたまんないわー。

・・・・・よし、泣かそう!



「お嬢はこれでもれっきとした魔道具師の弟子なんだってば!」


「・・・()()()()?」


「あー、いや・・そのっ・・」


「魔道具師の・・」


「それならある程度期待してもいいのか・・?」


ニアさんが発した『魔道具師』という単語に、わずかにでも希望を見出だしたのか、絶望的な表情をしていた大人達の顔色が少しだけ回復した。





「“これでも”一応魔力量には自信がある方なんだけど、流石にこれだけ大容量の魔晶石を用いる魔道具となると、フルチャージするのは無理ねぇ。どこまでやれるかわからないけど、できるだけやってみる」


ニアさんが悪いんじゃないのはわかってるけど、つい嫌味が口をついて出てしまう。


壊れた核を幻灯機から取り出してみると、真ん中に大きなヒビが入ってて、耐用年数をとっくに超えていたものと思われた。

替えの魔晶石は透明度の高い水晶で、内包物インクルージョンも全く無い無色透明な石。


本当なら剥き出しの状態で手に触れるのが一番効率が良いんだけど、今回は幻灯機にセットしてから魔力を注ぐ方法を取る事にした。

ショーの時間になったら幻灯機を稼働させて、そのまま魔力を注ぎ続けられるように。


「・・・お嬢、ごめん。こっちが頼んだのに色々言われる事になっちゃってさ・・・」


「それはもう━━━━根に持つよ。成功したら後でキッチリ報酬を要求するから。・・・それより早いとこプログラムを組み換えちゃって」


「わかった」


“魔力を注ぐのに気が散るから”という理由で、技術者以外の関係者を遠ざけたから、今現在私の周りにはドーナツ状の空間が生まれている。

ジロジロ見られると落ち着かないのは事実だし。うるさいのに横から口出しされてもたまんないし。


街が所有しているこの幻灯機はかなり古い魔道具で、ニアさんのうちでも何度かメンテナンスを引き受けた事もあるらしい。

おかげで構造も熟知してるとかで、ある程度ならニアさんでも中身を弄る事が可能なんだとか。


「いけるか?」


ここまでの話し合いで全く口を挟まなかったシグが、笑いを含んだ口調で訊ねてくる。

━━━あ、これ完全に面白がってる。


「多分ね。元々私の魔力は循環型で、魔力が尽きる心配はしなくていいから。後は集中力の問題かな」


「・・何型だって?」


「その説明は後」


ごく最近になって気付いた私のチートだ。




さあ、空中ショーが始まるよ。

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