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乙女に捧げる狂詩曲  作者: 遠夜
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乙女の買い物は長丁場

ここ最近で二度も『全裸の男に跨がる』という変態プレイを犯した私。

全裸『で』じゃないのがせめてもの救いだけど、嫁入り前の娘としては完全にアウトだと思う。



「━━━というわけで、今後シグとは節度を保ったお付き合いをさせていただきます」


「・・・・・はぁー?それが人を裸に剥きながら言う台詞かよ」


「っ、ただの採寸で人聞きの悪い事言わないでくれる!?・・・それもこれも、シグが片っ端から服をボロ雑巾に変えるから!繕いきれなくてしょっちゅう新調する羽目になってんだからね!」


・・・以上の理由で、本日朝から居間でシグの採寸と布合わせを実施中。

使い慣れたメジャーを片手に、肩幅から股下まで細かくチェック。服を脱がせているのは正確なサイズを測るためであって、けして私の趣味とかではない。


職業ジョブ猟師マタギと山賊の間で揺れ動くこの偽若人は、人が丹精込めて縫った服を、野山を駆けずり回って度々台無しにしてくれる。それはもうかなりの頻度で。


何が大変て、採寸はともかく布合わせの作業がとにかく面倒。

こっちでは紙が貴重品だから、布の裁断に型紙を用いるという発想自体が無くて、布を直接身体に当ててイメージ通りの仕上がりになるように試行錯誤しながら鋏を入れなきゃならない。


日本の自宅に型紙用のハトロン紙の買い置きがあれば良かったんだけど、残念ながら引っ越し直後で色々と品不足気味。

生活用品はともかく、趣味の道具は徐々に揃えるつもりでいたからね・・・。


「うーん。もっとこう、厚手で丈夫な布があると良いんだけどなぁ。・・・いやでも夏だし、通気性とか考えるなら粗めの麻とかの方が━━━━」


「・・・・・おい、まだ終わんねーのか?」


「まだよ!」


シグ自身は衣服に関してわりと無頓着で、『着られればなんでもいい』とかってよく言うけど、私としてはパリコレモデル以上の逸材に、似合わない野暮ったい服を着用させるつもりは毛頭無い。

衣服を“創る”人間として、そこはぜったいに妥協するべきじゃないと私は思う。


「いっそのことああしてこうして・・・うーん・・・、よしっ!」


「お?ヤレヤレやっと終わ・・・」


「これから布を買いに行くわよ!」


「━━━はぁあ?」





━━━という事で、その後すぐに転移陣を潜った私達は、以前クーベルテュールで布を買い求めたお店にやって来た。


例によって店内のお客が女性ばっかりで、案の定視線がシグに集中しちゃってるけど、こればっかりはどうしようもない。

外を歩く時は被り物(フード)で視線を遮ってたけんだけど、お店に入った途端「鬱陶しい」とか言って外しちゃったんだよね。

周りにいたお客さん全員ポカンとした表情で、シグの顔をガン見してる。


わかるわかる。信じられないぐらい綺麗な顔だよね。私もシグの顔を初めて間近に見た時、腰を抜かしそうになったっけ。

以前の姿なら“美丈夫”と表現するのが一番しっくりくるけど、本来の若さを取り戻した現在いまとなっては、“傾城”と称して差し支えないほどの超絶美人だ。


これで外見につりあう中身が伴ってさえいれば・・・・・・・・だめだ、ろくでもない結末しか思い浮かばない。


「おい、早いとこ見繕っちまわねーか」


「りょーかい。ちなみにシグ、好きな色とかある?」


「そうだな・・・。特に色にこだわりはねぇが、濃くて渋めの色が好みかもな」


「へー」


これまでクーベルテュールで見かけた達は、どちらかというと原色に近い鮮やかな色合いの服を着ている人が多かった。

柄も派手でとにかくカラフル。まるで絵の具箱をひっくり返したみたいな感じ。


ついでに言うなら服を着ている人達の、肌の色、目の色、髪の色もそれぞれ様々。

故郷ではけしてあり得なかった色彩も、こちらではとりたて珍しいものではないらしい。

単なる色の組み合わせで言えば、シグの白い髪と氷翠の目はそれほど目立つ方でもない。


あくまでも『色』に関しては、だけども。


「どちらかというとシグは寒色系の方が合うかな・・・。深い青━━━群青とか紺色とか藍色とか、暗めの色合い」


「あー、全部お前さんに任すわ」


「丸投げ・・・!」


いや、いいんだけどね。シグが着る物にこだわらないのはいつもの事だし?

取り敢えず気になる品を片っ端から見てみよう。




相変わらずチラチラとまとわり付いてくる女性客の視線を掻き分けるようにしながら、店内を隈無く歩き回ってお目当ての品を探すこと数十分。取り敢えず何点かは気に入るものが見つかった。


「うん、ここはこれでよし。シグー、次の

お店に行くから精算よろしくー」


カモン!私のお財布!


「・・・まだ買う気か?もう両手が塞がってんだろが」


「何言ってんの。誰かさんが片っ端から服を駄目にするから、着替えなんていくらあっても足りない状況なんだからね!さ、早く早く!」


いつの間にやら例の出所不明(?)の宝飾品を裏のルートでコッソリ換金して、シグの懐が現在それなりに潤ってる事、私ちゃーんと把握してんだからね?


ハァ、と溜め息をつきながら、シグが懐の隠しに手を入れて皮の小袋を取り出す。

カウンターで支払いを済ませる様子を横で眺めていたら、皮袋の中には一枚一万円相当の大銀貨がぎっしり詰まってた。

・・・・・お主もワルよのぅ。


「さ、じゃあ次行こっか」


「マジかー・・」


私に散々店内を引っ張り回され布選びに付き合わされたシグが、ゲンナリした顔で溜め息を落としてる。


「ほらほら、行くよー」


渋るシグの袖を引いて出入口に向かおうとしたその時。



「あのっ、ちょっといいですか!」



━━━と、若い女の子の声で呼び留められた。


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