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乙女に捧げる狂詩曲  作者: 遠夜
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乙女の後日談

短くてすみません。

私がグウィネスさんの家に転がり込んで二月ふたつきほどが経ち、季節は初夏に移り変わった。


このところシグは剣を片手にふらりと何処かに消えたかと思うと度々“戦利品”を抱えて帰るようになり、時折一人で街に降りてはそれをお金に換えて、グウィネスさんからの借金返済に充てているようだった。


戦利品は主に狩った獲物の肉や毛皮や角といった素材がほとんどだけど、ごくたまに出所のわからない貴金属やら宝飾品を持ち帰る事があって、そういう時のシグはひどく下衆ゲスい顔をしている。


・・・本気で山賊王を目指す気なんだろうか、あの男。



━━━そして私はというと、日々の家事とグウィネスさんの魔道具作りの手伝いをこなしつつ、趣味も兼ねて『手仕事屋』を始めた。


要はフリーマーケットというか、青空市で自分の作った物を売る商いだ。

お店に卸すのと違っていつ何をどれだけ売るのも自由だから、いたって気軽にやれるところが良い。

きっかけはグウィネスさんのお使いで例のクーベルテュールの街に出掛けた際、以前カカオバターとカカオマスを購入した香辛料のお店を訪ねて、店員さんにチョコレートの試作品をあげたら手放しで絶賛されて、ちょこっと調子に乗ったというか。

私としてはまた材料を仕入れて貰うための賄賂のつもりだったんだけど。


なんでも“カカ”は本来薬膳料理の風味付けに使われる程度のマイナーな食材で、興味本意で仕入れてみたもののなかなか売れずに困っていた品物なんだそうな。


原材料のカカオ豆をあそこまで加工する技術があるなら、あと一歩の工夫でチョコレートが完成していそうなものだけど、砂糖がかなり高価な事を考えると、あれだけ苦味のある食材を甘味にするという発想には至らなかったのかもしれない。


ただチョコレートは青空市の商品には向かないから、食品関係は他の物を売る事にした。

だってほら、夏は溶けるし。原価を考えるとあんまり安くは売れないからね。

私がやりたいのは“気軽に売れて気軽に買える”だから。


現在のところ商品のラインナップは、焼き菓子を何種類かとオリジナルブレンドの香草茶、季節の果物のジャム。それから手縫いの小物類。

小物では端切れを利用した和風デザインの巾着が結構評判良い。

着物や浴衣に合わせて持つコロンとしたあの形がどうも斬新に見えたらしくて、若い女の子を中心に良く売れている。


クーベルテュールに市の立つ広場は幾つかあって、ほぼ毎日どこかしらでこういった小商いが行われていると聞くけど、私が出店しているのはグウィネスさんの倉庫から一番近いグラニテ市場通りの奥の噴水広場。

以前布地を買ったお店のすぐ傍のところだ。

商店街の組合に小銀貨一枚の場所代を払えば、誰でもその日一日お店が出せるというシステム。

土地によっては売上の何割かを納めなきゃならなかったりするらしいから、ここのやり方はとても良心的だと思う。


・・・・・クーベルテュールの街といえば、この間拐かされた御当地なんだけども。

あの後大掛かりな捕り物があって、街の有力者が絡んだ人身売買組織が摘発されたらしい。


なんでも月の明るい夜に落雷を受けて倒壊したとある貴族の館から、どこからか拐われて来たとおぼしき獣人や森人エルフの子供達が、拘束具で身体の自由を奪われた状態で幾人も発見されたそうだ。

幸い崩れ落ちた建物の下から助け出された子供達は、衰弱してはいるものの掠り傷一つ負っておらず、駆け付けた役人に全員無事に保護されたもよう。


月の明るい夜に落雷て・・・・・・。


なんか色々突っ込みたい部分もあるけど、私は長いものには巻かれるタイプの日本人なので、何も言わないよ!


━━━ともかくそれ以降、役人や自警団による街中の見廻りが強化されたため、以前に増して治安はぐんと向上してるという話だ。






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