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乙女に捧げる狂詩曲  作者: 遠夜
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常識ってなんだっけby乙女

異界部屋の一件で私の素性がバレた後、グウィネスさんによる一般教養講座が再開した。


私が魔道具作りのお手伝いをするようになってからは、座学より実習に重点がおかれていたんだけど、異界人という予想外の身元が明らかになった事で、一般人としての基礎知識というか常識についてもう一度見直しをした方がいいという結論に達したからだ。


ざっくりとだけど地理も習った。

「自分がいる場所を俯瞰ふかんで知りたい」と言ったら、グウィネスさんが地図を用意してくれて、ざっとおおまかな説明をしてくれた。


図面には木の葉のような形をした楕円の大陸しまが右肩上がりに描かれていて、ど真ん中を幾筋もの山脈が重なり合うように縦断している。

そのうちの一つが私が現在いまいるシトラス山脈って事らしい。


この地形が理由で大昔から大陸の東西の交易はごく限られた範囲に留まっていて、近年になって航海技術が発達し海路が開拓されるまで、大規模な文化交流はほとんど無かったみたいだ。


大きな国は東に六つ、西に七つで、その半数以上が純人にんげん主体の国。

純人以外の国としては森人エルフ竜人ドラグーンなんかが代表格。


ただしこの他にも小さな国は幾つもあって、しかもしょっちゅう数が増えたり減ったりするとかで、全体数を正確に把握するのはとても難しいとグウィネスさんは言っていた。


ちなみに、ここいらの山岳地帯はどこの国にも属していないそうだ。



「━━━まぁ、しいて言うならここは『獣の領土』ってとこかね。シトラス山脈だけじゃなくって大陸中央部の山岳地帯には、特に凶暴なやつばっかりが棲みついてるもんだから、普通の人間はまず近付かないよ」


「そ、そうなんですね・・・」


「この家の周囲半径五百メルテ以内は安全だから安心おし。あたしの対物理結界と魔力反射の結界が張ってあるから、無理に侵入しようとする輩は即刻挽き肉になるって寸法だ」


・・・・・うわああぁ。


なんというエグい仕掛け。



そんでもって、ここが声を大にして喝采を叫びたいポイントなんだけど。


『魔王』だとか『勇者』だとか『聖女』とかいう、無駄にRPGめいたフワ~ッとした設定の職業が、この世界には存在しないという事実が判明しましたーーー!!


平凡ライフを全うする事が目標の私の人生から、密かに気にしていたラノベ的な展開に繋がる不安要素がこれで一気に消えた。


━━━とはいえ、『魔物』と呼ばれてこそいないものの、この世界の生き物の中には人間の脅威となりうるものが数多く存在しているもよう。

地球上に存在していたどんな野生の獣より、遥かに凶暴で尚且つ知能も高い━━━厄介極まりない獣が。


だけどそれに対応するための組織も一応ちゃんと存在してるらしい。

狩人組合ハンターギルドというのがそれで、依頼を受けて害獣を討伐する、日本でいうところの猟友会みたいな組織だ。

間違っても『冒険者』なんぞという面白オモシロ可笑しそうな名称ではない。


もちろん各国に軍や警察に相当する組織もあるみたいだけど、こちらは主に対人用で犯罪とかを取り締まる役目の方が大きいそうだ。


「討伐対象になるような獣の中には、身体能力の劣る純人にんげんだけじゃ到底太刀打ちできないようなのもいてねぇ。そういうのは嵐が通り過ぎるのを待つようにして遣り過ごすしかないのさ」


「魔法使いは討伐に加わったりしないんですか?」


「・・・魔法使いってのは本来研究職だからねぇ。実践で使い物になる奴はほとんどいないんだよ。持久力も反射神経も期待できないとなると、かえって足手まといになりかねないし、詠唱の間を狙われたらイチコロだね」


「な、なるほど・・・」


つまり、今私の目の前にいる御仁は、世にも稀な例外という事だ。


「魔法使いを戦わせようと思ったら、後方うしろに隠しといてコッソリ支援させるのが常套手段だよ」


体力の面で一般人よりも劣る魔法使いを矢面に立たせて戦わせるなんてのは、余程の馬鹿のする事さ━━━と、グウィネスさんはそうのたもうた。


・・・・・・あのー・・・もしもし?

“元”将軍を出会い頭に拳で殴り倒したのはどなたでしたっけ?



グウィネスさんの補習はこの後も毎日続いた。


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