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乙女に捧げる狂詩曲  作者: 遠夜
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乙女の手仕事

数日間自宅に引きこもって製作活動にいそししんだ結果、今日の午後になってシグの服が取り敢えず何着か出来上がった。

自宅マンションへの出入りが自由になった今、私の着替えは特に急ぐ必要がなくなったので優先度を変更したわけなんだけども・・・。


いまだかつてない極上の素材モデルに興奮した私の脳内ではアドレナリンが大量分泌され、普段着を縫わなければならないというのに、ちょこっとでも気を抜くと宝塚ヅカ仕様の美麗な盛装のデザインが頭をよぎり、できるだけシンプルに仕上げるのに物凄い労力を要した。


今回縫い上げたのはシャツが二枚とズボンが一着、それからロングカーディガン風のシルエットに仕立てた薄手の上着の合計四着。

シグの白い髪を引き立たせるように、全体的に濃いめの配色でまとめてみた。




「おー、なかなかイイ感じだぜ」


「そうでしょうとも。こういっちゃなんだけども、わりと自信作よ」


服の出来映えに満足げなシグの顔を見て、いつになく気分を良くする私。


居間でゴロゴロしている居候シグに出来上がった服を渡したら、例によってその場で生着替えに突入したのは如何なものかと思うけど、着替え終わったその姿を目にした瞬間、私は「yes!!」と親指を立てて叫んでしまった。


ブラボー!顔が良いって素晴らしい。

製作者冥利に尽きるって正にこの事よね。

シグは背丈も申し分ない上に手足の長さのバランスが絶妙で、理想的なモデル体型だから見映えは抜群に良い。


オーソドックスな黒いパンツスタイルに白シャツの組み合わせが、こうまで格好良くキマる人間て初めて見たわー。


「もう一枚のシャツはともかく、これから夏に向かう時期になんで上着?」


「ああ、それね。━━━日除けと視線避け?薄くて軽い布で風通しも良さげでしょ。被り物(フード)の部分が着脱可能だから、邪魔になったら外せばいいし」


「あぁ、なーる・・・」


この前市場を歩いた時、十メルテ置きに逆ナンパされたのを思い出したらしい。

しかもお相手は老若男女を問わず。

だけどナンパ相手が女子供の場合は笑顔であしらうシグも、流石に男は圏外らしくて絶対零度の視線でチビらせて、市場通りに何体もの氷像を作り上げてた。


若返りの弊害だと当人はボヤいてるけど、被害を被ったのはむしろナンパ男達の方だと思う。


女と間違えて(かどうかは知らないけど)男に言い寄ったあげく、大の大人が人前で漏らすという痴態を大勢の通行人の目に晒して、彼らは当分表を歩けないぐらいのダメージを心に負ったに違いあるまい。


うっかり直視すると網膜の奥に残像が残るとか、繁華街の電飾ネオン並みにピカピカキラキラと実に自己主張の激しい顔だ。

環境に優しくない。


「おやまぁ!家事の合間に部屋にこもってると思ったら、もうこれだけ縫い上げてたのかい?随分仕事が早いじゃないかハネズ」


「道具の力ですよ」


ちょうど午後のお茶の時間になって、グウィネスさんが作業部屋から顔を出した。

どうやら自分の仕事に一区切りついたらしい。


「お茶の用意しますね。香草茶と珈琲のどっちにしますか?」


「「珈琲で」」


二人とも即答だった。




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