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乙女に捧げる狂詩曲  作者: 遠夜
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乙女のお宅拝見

ある日唐突に異界側から日本の自宅に出入りが自由になった事で、私が異界こちらで日常生活を送る上で抱えていた諸々の小さな悩み事はほぼ八割方解消された。


元々グウィネスさんの家がこちらの一般家庭の水準では有り得ないぐらいのハイテク屋敷だったお陰で、それほど不自由は感じていなかったけど。

それでも全くの異文化なだけに些細な違いに戸惑ったり、違和感を覚えたりする場面は多かった。


自宅の設備がそっくりそのまま使用可能だとわかった時には、思わずヨッシャ!と拳に力が入りましたともさ。

これでいつでも気兼ねなくお風呂もキッチンも使い放題、洗濯だって全自動で乾燥までおまかせだ。

今ならウォシュレット教の信者にだってなれる。

文明開花バンザイ。




「なぁ、おい。こいつは何のカラクリだ?━━━うわっ!!取っ手を捻ったら水が降ってきた!、、、って、今度は熱っ!拷問ゴーモン装置か!?」


「だから、なんで勝手に人のウチに入ってくんのよシグ・・・・・」


この間、珈琲を提供するのと引き換えに自宅への立ち入りを禁止したはずなのに・・・。何べん言っても聞きやしないこの男。

私が異界部屋に入り浸って作業をしていると、毎回のように押し掛けてきてあっちこっちを引っ掻き回してくれちゃうから困りものだ。


今日はシャワーに興味を示してそこらを弄り回し、頭からお湯を被ってずぶ濡れになったところだ。


「・・・何やってんのもー。あっ・・・ちょっと待って!水浸しの格好でリビングに戻らないでよ!」


「あぁ?裸になれってか?」


「何言ってんのおバカ!浴衣を持ってくるからお風呂場の中で服を脱いで待ってて!外に出ないで」


「風呂?・・・もしかしてこのちっせー桶が浴槽か!?」


小さくて悪かったね!これが標準サイズのユニットバスだっての。


「グウィネスさんちのお風呂とは使い方が違うのよ。この浴槽の中で身体を洗ってシャワーで流すの。身体を暖めるにはあんまり向いてないお風呂だけど、この家の季節は常に春だしそんなに寒くはないでしょ」


タライで行水するようなもんか」


実はグウィネスさんちのお風呂は日本や古代ローマみたいに、“暖まるためのお風呂”なのだ。

広い浴槽に追い焚きの機能が付いてて、身体を洗う場所が別になっていたりする。

初めてあのお風呂を目にした時、私は感動のあまり咽び泣いたものだ。


女神グウィネス様ありがとうございますぅぅーーーーー!!』と。


「いっそのこと身体洗っちゃえば?朝から表で剣を振り回してて汗かいてるでしょ。朝食ブランチの時間に汗臭くしてるとウィネスさんに叱られるわよ」


「それもそうだな・・・」


言った端から服を脱ぎ出す裸族。


「ちょっ・・待って!先に、使い方説明するからっ!」


何故そう、すぐに脱ぐ!!





「すんげー気持ち良かった・・・」


「・・・左様で・・・━━━、、、くっ! 」


誰かこいつを殺せっ・・・・・!!


あれよあれよという間に服を脱ぎ始めたシグに、取り敢えずシャワーの使い方を教えて階下に浴衣を取りに行って戻ってみれば。

またしても腰にバスタオル一枚巻いただけという半裸の格好のシグが、リビングのソファーで悠々と寛いでいた。


濡れ髪にセミヌード。ほんのり上気したお顔で“事後”を思わせるような台詞を吐かれた私は、思わずダン!と床に突っ伏したくなった。


「あの“しゃんぷー”とかいうやつ凄ぇな。全身丸洗いでスッキリだぜ」


「そだねー・・・」


元々私が面倒臭がりな事もあって、うちのお風呂では全身洗えるタイプの“全身シャンプー”を愛用している。

浴槽の中で何度も髪や身体を洗い流す作業が手間で、『一気に洗う』→『一気に流す』で済ませられるこのアイテムは私のお気に入りだ。


「とにかく・・・!いつまでもそんな格好で人んちの中をウロつかないで。せめて浴衣を着て!」


嫁入り前の娘に何を見せつけとんじゃ己は。


「素っ裸の俺を散々撫で回しておきながら、今更ナニ言ってんだ、お前さん」


「!?!?なにょっ!?」


━━━ 噛んだ。


「獣姿の時に嫌ってほど人のカラダをもてあそんでくれたじゃねえか」


「・・・なんだ、あれか。あんなのは普通に毛並みを愛でただけでしょ。目の前に毛皮があれば、そりゃモフるわよ!モッフモフなのよ!?モフらないわけがないじゃない!!」


「・・・お、おぅ」


むしろあれでも手加減してたくらいだ。

もしあれが本当にただの獣だったら、お口にチューとかお腹に顔でスリスリも実行してたし。

動物の腹毛が特に柔いのはお母さんとチビちゃんで確認済みだからね。


「お前は俺の毛皮だけが目当てなのか・・・」


何故そこで拗ねたような表情かおに・・・。

まるで初な生娘に『アタシの身体だけが目当てなのね』と責められたような気分になるからヤメテ。


もちろん毛皮だけじゃなくて、人の姿のシグも綺麗だと思ってるよ?

本人には口が裂けても言わないけどね。



そんでこの後、浴衣に着替えたシグが濡れ髪のままで家の中をウロついてるのがどうしても気になって、トリートメント(洗い流さないタイプ )やドライヤーでヘアケアを施したら、純白のゆるサラ髪に天使の輪っかが生まれて、シグの美貌が無駄に神々しさを増す結果に。


その姿をうっかり正面きって直視した私が、流血沙汰を起こして洗面所に駆け込む事になったのは想定外だ。



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