乙女の出会いをもう一度
・・・それにしても、これは予想外だった。
お爺様の真の姿がコレとか。
道理でグウィネスさんが散々シグを若造扱いするわけだ。
前々からチャラチャラした不良老人だとは思ってたけど、真実ただの現役不良だったとは。
これでよく将軍職が務まったよねえー・・・。
━━━とか、本人を目の前にしては絶対に口に出さないけど。
心の声というものは得てして面に現れるものらしい。
「何か言いたそうだなぁ、オイ。ネージュ?」
「・・・イエナニモ?」
正面で凄まれると更に破落戸感が増すんだけどー。
キレイなお顔が何とも言えぬ凄味を醸し出して、チンピラに恫喝されてる気分になるんだけどー。
「・・・ったく、こっちも何かに化かされたような気分だっての。今までさんざっぱら働いて、これから悠々自適な老後を送るつもりでいたってのに、これじゃあ隠居できんのはまだ当分先じゃねーか!」
「あははは・・・」
見た目の計算でいけば普通の人間ならまだ五・六十年は余裕で生きられそうだしね━━━なんて、私が思ってたら。
「生粋の森人や竜人は五百年や千年は軽く生きるから、混じり者もそれなりに長生きするしねぇ。あんたのその面で純人の国に長居してたら目立ってしょうがないよ」
「まさかの百年単位!!」
「いんやぁ?流石にそこまでは生きねーだろ。俺の場合色々混じり過ぎてっからよくわからんが、混じりもんの中には短命な種族もいたはずだ」
「そうさねえ━━━ただあんたのその図太さなら、佳人薄命とはいかないだろうがね」
あー・・・ウン、それは物凄く納得だ。
「五月蝿ェ、ババァ。・・・おめーもそこでナニ頷いてんだ!ネージュ!」
「ぎゃん!またしても頭鷲掴み!」
「あーそこ、ジャレ合うのはそのぐらいにして肝心な話をしようじゃないか」
「は、はい?」
「ババァ、まだなんかあんのか」
「あんたがいきなり家の中に現れた一件だよ」
「あ」
バタバタしてすっかり忘れてた!
そりゃそうだよ、よく考えなくても変だよね?おかしいよね?
なんだってあんなに急に目の前にポッと出てきたんだか。
「あぁ?俺が知るかよ」
「そうだろうねぇ、あんたはそういう奴だよ。昔っから物事を順序だてて説明するのが下手くそだった」
「るせェ」
━━━━これで将軍様・・・・・?
そう思ったのがまたしても顔に出てたらしい、テーブルの向かい側から伸びてきた大きな手にムニュッと頬を摘ままれる。
「あにふんほー!」
「ワハハハ面白れー顔!」
「ちょいとアンタ・・・どこの五歳児だいシグルーン。中身ジジィのくせして若い娘にベタベタ構ってんじゃないよっ!」
ズビシッ!!という音が部屋に響いて、シグが額を押さえて仰け反る。
魔女のデコピン、クリティカルヒット!!
「~~~~~っ!!!」
「━━━よく聞きなクソガキ。この家は外部からの魔力干渉を弾く仕掛けが施してあって、あたしの魔方陣以外の手段での侵入は実質不可能なのさ。地道に歩いて玄関から入ってくるならともかく、いったいどんな手段を使ってうちに潜り込んだんだろうねえ━━━━━?」
防犯装置が役に立たなかったって事?
すっごい気になるんだけど!
「だから、俺が知るか!いきなりそいつの声が聴こえたと思ったら、目の前に全く別の場所の景色が見えたんだよ。そしたら、犬っコロに持ってかれてとっくの昔に丸かじりされてるはずの小娘がすぐそこでピンピンしてやがる。そりゃ確かめるしかねえだろが!」
ああああ・・・・・・でもその後は分かる。
そのまま突進かましてきてグウィネスさんに殴り倒された、と。
「・・・へーぇ・・・」
シグの全く要領を得ない説明にグウィネスさんの目付きがますます胡乱げなものに変わる。
「だいたいなぁ、ワケが分からねえのはこっちも同じだぜ。いくら二度目だつってもいきなり別の場所に跳ばされんのは━━━━」
「ちょいと待ちな今、何て言った?」
「はぁ?だからワケが分からんと━━━━」
「その後だよ!・・・二度目だってえ?」
グウィネスさんが反応を示した言葉に私も思わずハッとなった。
そうだ、二度目だ。
あの謎の『どこ○も扉』━━━━━━。状況があの時とよく似てる。
今回は扉こそなかったけど、まるっきり別の空間を無理矢理繋げたような、この感じには覚えがある・・・。
━━━そう口に出したら、この後更にもう一度シグとの出会いから脱獄までの経緯をグウィネスさんに事細かく語らされる羽目になった。




