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乙女に捧げる狂詩曲  作者: 遠夜
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乙女の回想と無駄になった決意

グウィネスさんとのお茶の時間は、そこで交わされる会話の端々からこっちの世界の一般常識に触れる良い機会。

もっとも、グウィネスさんが普通の一般人にあたるかどうかは不明なんだけど。


だってねぇ、『魔術師』ってどうもかなりレアな職業みたいじゃない?

『魔力』自体は誰もが持ってるものだとしても、小さな火種を熾こす程度の魔法でさえ使える人は百人に一人ってとこらしいから。


巷で『魔法使い』を名乗る実力がある人間となると数千人に一人いるかいないかで、大きな町に一人か二人の魔法使いが居れば良い方なんだって。


そういったごく一般的な魔法使いでさえとても貴重な存在なら、その上級職とも言うべき『魔術師』は推してしかるべきなんじゃないかと。





「そういや、ハネズ。あんたは魔方陣の事故か何かで遠方から跳ばされて来たと言ってたね」


・・・・・はい、そういう事にしときました。

和やかなお茶の席で私一人が妙な汗をかいてます。

本当は命の恩人に隠し事なんかしたくないけど、余計な事をベラベラ喋って面倒な事になったらと思うと・・・。


「あー・・・実際のところは自分でも何が何だかよく分かんないです。ただ、こっちで一番最初に会った人がそういう風に推察してて、そういう事もあるのかなぁって・・・思うぐらいで」


「ふぅん、そうなのかい。まぁ確かに転移用の魔方陣てのは術式の中でも飛び抜けて複雑だから、取り扱いを間違えると大きな事故に繋がり易いのは事実だね」


ごめんなさいウィネスさん。適当な方便ウソっぱちです。


「でもまぁ無事で何よりさ。魔方陣の事故ってやつは大概悲惨な結果になる事が多いからね」


「・・・ちなみにどのような?」


「転移先が多少ズレるぐらいならまだマシな方さ。いきなり空中だの水中だのに放り出される可能性だってある。五体満足でいられる保証すら無いね」


「・・・怖ッ!」


━━━━異世界恐い。


でもまぁそこら辺の危険度は日本あっちでも同じようなものかもしれない。

飛行機だって墜ちる事はあるし、電車が脱線する事もある。

自動車事故なんて最早日常茶飯事で、ニュースで取り沙汰されない日は無いぐらいだった。


「あたしは失敗ヘマしないけどね」


余裕の貫禄でどこぞの女医のような台詞をサラリとのたまうグウィネスさん。

かなりの実力者と見た・・・!!


そこからちょっと専門的な話に突入して私には半分も理解出来なかったけど、魔方陣が素人には手も足も出せない代物だって事だけはよく解った。

断じて私の頭が悪い訳じゃない、と思いたい。




「━━━それでその、旅の道連れだったっていう男は、あんたに良くしてくれたのかい?」


魔方陣からの話の流れで、何故かお母さんにお持ち帰りされるまでの経緯をグウィネスさんに説明し直す事になって、話題に上がったのはシグルーンの事。


「はい、その、どうやら私かなり子供に見えてたみたいで、扱いは雑でしたけどちゃんと面倒見てもらってました」


「うーん、それはそれで良かった、・・・のかねぇ?若い娘が見ず知らずの男と道中二人きりってのも心配だし」


「その人かなり年配の男性だったので、お子様は射程外だったんだと思いますよ?しかも女の人には不自由してなそうな感じでしたし」


「なんだい、そんなに色男だったのかい?」


「顔だけは良かったです」


思わず賽銭投げてでも拝みたいと思う程度には。


「━━━顔だけは?」


「顔だけは」


今頃どうしてるんだろうとか、ちょびっとくらいは私の事を思い返してくれてるんだろうか、とか、一日一回思い出すくらいには強烈なお顔でしたよ。


あのまま行動を共にしてたら、私の面食いの病が重症化して「顔だけでもイイ!」とかほざいて一生を棒に振るような事態になってたかもしれない。・・・・・遺伝恐い。


口さえ開かなきゃ『細マッチョの老エルフ』って感じで格好良かったのに。

髪なんか雪みたいに真っ白で、ロン毛の似合うお爺様なんて二次元にしか生息していない生き物だと思ってたけど、なんていうか似合い過ぎてて違和感無かったし。


あれでもうちょっと繊細な気遣いが出来る人だったら━━━って、イヤ待てよ。

それはそれで面倒な事になってたのは確実だ。


「頼れるお爺様!きゃあステキ!格好良い!!」


・・・とかって、自分が入れ揚げる結果になってただろう事は想像に難くない。


ウン、あの人はあれで良かったんだ。

見た目がアレで中身まで完璧だったら、とんでもない女殺しの出来上がりよ。


ヨカッタヨカッタ。


私の平穏な人生に分不相応な美形は要らん。

今生こそ、平凡で平均的な家庭を築いて、曾孫に看取られて大往生するんだから!!



━━━━と。


一人胸の内で決意も新たに拳を握り締めていたら、窓の外からお母さんが何か言いたげに家の中を覗き込んでるのが見えた。

今日も来てくれたんだ。


「毎日毎日ご苦労だねぇ、あんた達・・・・・ん?なんだって・・・?」


立ち上がって窓辺で大小の天狼を出迎えたグウィネスさんが、何やら奇妙な表情で首を傾げた。


「━━━ハネズ。あんたの親が、この近くの山中にあんたの匂いを纏った男がうろついてるって言ってんだけどね。心当たりはあるかい?」




「 は? 」




心当たりって・・・・・そんなもの。

一人っきりしかいやしませんて━━━━━━!



「何やってんのお爺様ぁぁぁーーーーーーーー!!!」

































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