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乙女に捧げる狂詩曲  作者: 遠夜
23/156

乙女とその後のお爺さま

視点の変更有り。

獣人てのは多かれ少なかれ、獣化した際には獣の本能が強くなる。

そしてそれは、血が濃い者ほど顕著に表面おもてに現れる。

“先祖返り”というやつだ。


早い話がただのケモノに近くなるという事で、中には長期間獣化しててヒトの姿に戻れなくなる奴もいるらしい。


ただ、単なる“混じりモノ”の自分には全く関係の無い話だと、そう思っていたんだが。



「・・・・・ここどこだ?」



ふと気付いたら、見知らぬ山中で素っ裸のままボンヤリ突っ立っていた。


━━━━ボケ老人か!!


ネージュを咥えたまま西の空へ飛び去った天狼の後を追い、山脈の谷間を縫うように伸びた街道を進む途中、人気の無い山道で何度か野生の獣の群れに襲われたところまでは覚えている。


度重なる襲撃に護身用の山刀クリス一本でいちいち相手をするのが面倒になって、獣化して獣道を強硬突破し続けていたら、途中から盛大に記憶が跳んだ。


・・・・・はあああああぁ。


「何やってんだ俺は━━━、若僧じゃあるまいに」


このての野生の衝動による暴走は、未熟な若い雄にありがちなやつだ。


あれから何日経ってる?

・・・普通に考えりゃ、あの娘の件はとっくに手遅れだ。

頭からまるかじりされて今頃骨も残っちゃいまい。

後味はあんまり良くはないが、ここいらで踏ん切りをつけるべきだろう。


面倒な柵から解放された今なら、何処へ行こうが何をしようが━━━━俺は自由だ。


「・・・・・・・・」


だのに、俺は、『何』に拘ってやがる・・・・・?




「━━━ネージュ」




そうだ。『何』に拘ろうと、俺の自由だ。


まあ、取り敢えずは、服をどうにかしねえとだがな!











グウィネスさんの魔術講座が始まってすぐ、私にも一応そこそこの適性がある事が判明した。


しかも私の場合『習うより慣れろ』の方が性に合ってて、専門用語が飛び交う魔術理論の座学より、実地での下積みの方が遥かに向いているみたいだった。


「うーん、普通の人間はもっと細かい説明が必要なんだけどねぇ。なんだろうねぇ、あんたのこの“慣れてる”感じは・・・」


作業部屋で作りかけのキューブを手にグウィネスさんが首を傾げる。

数日前から私は、形成された素石の立方体キューブに魔力を注ぎ込むお手伝いを始めた。

ちょっと集中力が必要だけど、やってみたら案外簡単にできた。


「あー、それ多分イメージの問題かと。私の故郷は魔術の代わりに色々と便利な道具が発達してて、キューブと同じような働きをする物があったんですよ。一般人なんで詳しい構造なんかの説明は上手く出来ないですけど」


言うなれば『魔力』の代わりが『電力』で。

調理器具や照明といった、ありとあらゆる家の中の道具ものがそれで動いた。


「ふぅん、なるほどね。━━━じゃあ次、こっちの刻印済のキューブに魔力チカラを充填しとくれ」


「あ、ハイ」


魔力操作も私の場合とにかくイメージだ。

血液の流れを意識して指先から流し込み、ついでに某格闘アニメの主人公よろしく『オラに○○○を分けてくれ!』とばかりに、周りから足りない分をかき集める感じ。

あくまでイメージだけどね?

ゲームとかみたいに魔力が目に見えたら楽なのになぁ。



「それが終わったら昼休憩にしよう。今日のお茶請けは何だい?」


「生地に野菜を練り込んだ焼き菓子です。スコーンていって、今日はカボチャ(モドキ)とニンジン(モドキ)を入れたやつです。食事代わりなんで甘さ控え目ですから、ジャムやハチミツをつけて食べるんですよ」


「それは美味しそうだね!あんたが来てからお茶の時間が楽しみだよ」


グウィネスさんが青灰色の目を細めて笑うと、隙のない女教師のような印象がぐっと砕けて可愛らしくなる。


何でも完璧にこなしそうな人に見えて、実は家事の類いが大の苦手だそうで、少しでも独り暮らしが楽になるようにと発明したのが『キューブ』だったんだとか。

普通なら使用人を雇えば済む事だけど、自分の領域テリトリーに他人が入り込むのは気に入らないんだって。


「私はいいんですか?」って前に訊いたら、「あんたはあたしの友人の娘で身内みたいなもんじゃないか」って言ってくれて、凄く嬉しかった。





「午後から出来上がった品を卸して、ついでに街で買い出ししてくるから、この後食糧庫のストックと消耗品の在庫を調べといておくれ」


「あ、ハイ。わかりました」


優雅な仕草で茶器を傾けつつ、かなりのハイペースでスコーンを消費してゆくグウィネスさん。

スラリとしたこの細身の身体のどこに、あれだけのカロリーが消えて行くのか、相変わらず謎。


「・・・でも、どうやって街まで?かなり遠いんですよね?」


グウィネスさんの家は野中の一軒家で、しかも馬や騎獣の類いは一切所有していない。

気軽に外出とはいかないはずだ。


「ハネズ、あたしの職業を忘れちゃいないかい?」


「職業・・・?魔道具職人、ですよね?」


「・・・うーん。急いで詰め込み過ぎて、あっちこっち説明を端折っちまったねぇ・・・」


グウィネスさんは、やれやれしまったという風な表情だ。


「魔道具を一から“創り上げる”のに、魔術の正しい知識が必要不可欠なのは解るだろう?」


「はい」


「簡単に言うとだね、魔術師の資格が無けりゃ魔道具作りは出来ないんだよ」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・って!えっ!?ウィネスさんて『魔術師』なんですか!?」


「そういう事。━━━で、魔術師の修士課程には“魔方陣の構築とその応用”という分野があってだね。・・・早い話が転移用の魔方陣が使えるのさ」


「!!」


出ました、リアルファンタジー!!


まだまだこの世界には私の知らない事がいっぱいあるようです・・・・・。


















































































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