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乙女に捧げる狂詩曲  作者: 遠夜
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乙女は征くよドコまでも

私が一人で街歩きをするようになった件を、後日帰宅した際にグウィネスさん経由で知ったシグは、案の定渋い表情かおをした。



「お前を一人で出歩かせると、ぜってー碌な事にならねぇ」


ほらね、予想通りの反応。


「だからっていつまでも保護者同伴てわけにはいかないでしょ?こっちの基準では一応成人なんだし」


「そりゃそうだが、そういう事じゃねーんだよ」


ハァ、と溜め息をつきつつ眉根を寄せる表情までが、嫌味なぐらい絵になってムカつく。


「私が子供っぽく見えるのは百も承知だけど、中身まで子供じゃないのよ」


「・・だから余計に困るんじゃねーか」


「え?なに?」


最後の部分、口の中でモゴモゴ言っててよく聞こえなかった。


「取り敢えず、グウィンから貰った護符は肌身離さず持っとけ。でもって少しでもヤバそうな雰囲気を感じたらすぐに跳んで逃げろ。お前になんかあったら、今度こそ街の一つや二つ簡単に吹っ飛ばすぞ、あの『親』」


「う、・・わ、わかった」


ソンナコトナイヨと、言い切れないところが恐ろしい。


天狼のお母さんが雛に向ける愛情は、とても深くてストレート。

人間なら実力行使を躊躇うような場面でも、獣のお母さんに報復を踏み留まる理由はどこにも無い。


私は悪意を持ってちょっかいかけてくるゴロツキがお母さんにプチッとされたところで何とも思わないけど、無関係な人を大勢巻き込んで平気な顔をしてられるほど面の皮は厚くない。


「逃げ足、鍛えとこっかな・・・」


そうは言っても根っからのインドア派に、体力面での伸び代がそれほどあるとも思えない。

となると、残りの選択肢はただ一つ。



『ど○でも扉』の精度を上げる。

これしかない。



異なる空間同士を繋いで移動を可能とする私の異能は、基本的に知らない場所には跳べない。

全く不可能というわけでもないけど、その場合かなりの高リスクを覚悟しないとならない。


だって、ドコに跳ぶかわかんないんだもん。

空中だったり水中だったり、火山の火口とかだったら一発アウトだし。


ただし“見えてる範囲”での移動なら、初見でも問題なく跳べる事は検証済み。

いざとなったら小刻みに跳んで逃げればいいだけから、大抵の追跡はこれで躱せるはず。


この方法で一つ問題なのは、着地点の安全面までは完全に把握しきれない点よね。

パッと見で隠れた危険までは見抜けないし。


跳んだ先にどんな危険生物が潜んでいるかわからないじゃない?

でもそれを口にしたら、シグになんか物凄く呆れた目でこっちを見られた。


「この世でも指折りの危険生物を親代わりにしてる奴が、どの口で言う」だと。


そういう問題じゃないのよ。

私自身は非力な乙女なんだから、どんなに小さな危険に対してだって警戒を怠らないのはポリシーよ。


安全第一『いのちだいじに』で、曾孫の顔を見るまで長生きするのが目標なんだからねっ。




後日シグを巻き込んで、短距離転移の特訓を行った。


見える範囲での移動を繰り返していたら、わりと遠くまで行けた・・・・・というか、大陸の端まで行った。

流石に海の向こうまで行ってみる気にはなれなくて、海岸線から一息に帰宅したんだけど、何故かこの件でシグには超弩級の危険生物に認定され、「もうお前からはぜってーに目を離さん!!」と、ヤンデレめいた宣告までされた。




・・・怖いんですけど。


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