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乙女に捧げる狂詩曲  作者: 遠夜
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乙女の母の勘違い???

お母さんからの返信(てがみ)で、日本ではあれから既に二年が経っている事が判明した。


私が異界落ちする原因となった例の歩道橋からの転落事故が、当時“真昼のミステリー”としてSNSで拡散し、昼のワイドショーに取り上げられてしばらくお茶の間を騒がせたというからビックリだ。


そりゃまぁ、目の前で人間が消えたら驚くよね。普通(フツー)。

人通りが多い場所での事故だったから、現場を目撃した人も少なくなかったはずだし。


おそらくマスコミが面白おかしく騒ぎ立てて、身内(おかあさん)にいらぬ迷惑をかけたであろう事は想像に難くない。

だとすると昼間の電話でのあの塩対応も納得。


その辺の事情について、あえて手紙では詳しく触れていなかったけど、今は二人は移住先の国で穏やかな生活を送っているみたい。


私の行方がわからなくなったと知った当初、お義父さんは顎を外すくらい驚いて、慌てて移住を取り止めて帰国しようとしたらいしんだけど、お母さんがそれを止めたんだって。


私の“消えた”状況がそもそも尋常でないというか、あまりにも不可解過ぎて、普通に探して見つけられるものかどうかも怪しいからと。


仮にもし、日本にとんぼ返りして捜索を始めてもらっていたとしても、異界に落ちた私がそっち側で見付かるはずもないから、それで正解。


お母さんの手紙には他にも色んな事が書いてあって、その中には『青磁をよろしく』という一文もあったんだけど、これは面倒事を呼び寄せる予感しかないので既読スルーだ。


そして手紙の末尾に一言━━━━。




『男は顔じゃない』




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ハイ、その通りです。


・・・てか、例の写メ届いてたんだね。

“保護者”を紹介するつもりで、咄嗟にシグとグウィネスさんを撮影に巻き込んだんだけど。

おかーさぁぁん、勘違いだよーーーっ・・・!


別に私はアレの顔に血迷ったりしてないってば!!


・・・でも、例えこの叫びが届いたところで、お母さんは私の言い分を信じやしないだろう。

だって母娘(おやこ)だから!!


趣味嗜好の似通った実の母娘。かつてのお互いの異性の好みは熟知している。

『女が世話を焼きたくなるような、手の掛かる(顔の)良い男』が好きなお母さん。いわゆる母性本能を擽るタイプ?

今のお義父さんも家事全般はまるでダメダメだから、多分そこら辺がツボだと思う。


・・・私は、とにかく顔の綺麗な男が好きだった。性格は二の次三の次ね。

だってリアルで恋愛する気はゼロだったし。遠目に眺めてキャーキャー騒いでるだけなら、アイドルも二次元のキャラクターも同じような存在(もの)じゃない?


特に相手が完全な創作(フィクション)の登場人物(キャラクター)なら、一方的に自分勝手な妄想を滾(たぎ)らせたところで、誰にも迷惑はかけやしないし。


そんなこんなでリアルより二・五次元に愛を注ぎ続けた結果、裁縫の腕前がメキメキと上達し、進路の選択でかなり迷う羽目になったのは余談だ。


つまり話を戻すと、リアルに置き換えた場合、シグの見た目はかつての自分の好みに文句無しで合致してるってこと。

お母さんもそこを理解してるから、『やりゃあがった、あの娘(ムスメ)!』とでも思ってんだろう。


最初の夫を顔で選んで散々苦労したから、いざという時男に頼らなくても生きていけるように、娘の私には手堅い職業に就くよう何度も何度も何度も━━━そりゃあ熱心に勧めてきた。


それについては自分も同意だったから、面白味には欠けるとしても堅実な進路を選んだ事を、間違った選択をしたとは思っていない。


・・・実際には一度も通えなかったけどねっ・・・!



だいたいねえぇ・・・。遠目に鑑賞するだけならともかく、あれと付き合うだなんて発想は、タウンページ並みの面の皮の厚さを備えてなきゃ無理無理!




いつかまた、手紙をやり取りできる機会があったら、そこんとこはキッチリ訂正しよう━━━私はと思った。

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