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乙女に捧げる狂詩曲  作者: 遠夜
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未確認生物乙女

例の朝っぱらのシグの救出劇が原因もととなって、その日は一日怪我人そっちのけで『謎扉』の検証が行われた。


━━━で。まず結論から先に言うと、自在に操れるようになりました。謎扉。


いったいナニがどうしてそうなったのか自分でもイマイチよくわからないんだけども。

グウィネスさん曰く、()()はおそらく生まれつき私の身に備わった能力だろうと。


魚が水を泳ぐように、鳥が空を飛ぶように、私は“空間を渡る”

━━━そういう生き物だと。

何気に人外生物クリーチャー扱いされている気がしないでもないけど、その言葉にちょびっとだけ“なるほど”と思う。


そういえば私は昔からよく迷子になる子供だった。

自分でも何がなんだかわからないうちに、知らない場所にいる事がよくあって、しょっちゅうショッピングモールの迷子センターや街の交番なんかのお世話になってた。

・・・もしかしたら()()も、このわけのわからない体質の影響なのかな?


まあ、それはともかく。このての能力というのは、本人の自覚の有る無しが力を制御する上で重要なポイントなんだって。


身の内に多量の魔力を抱えていながら、それを適度に放出する事もなく長期間ほったらかしにしておくと、やがて身体という器から溢れ出た魔力が思わぬ弊害トラブルを引き起こす事が多いようだ。


主な例は魔力過多で体調を崩したり、俗にいう騒霊ポルターガイスト現象のような症状を起こしたりとか。

私の場合、この特異体質というか特殊な能力のせいで、あらぬ方向に暴走しているということみたい。


『きちんと自分の能力を把握して、明確な意志を持って力に方向性を与える事が大事なのさ』


━━━と師匠グウィネスさんに言われたので、試しに『山の塒に繋がれ』と念じながら居間の窓を開けてみたら、拍子抜けするほどあっさりとシトラス山頂の洞窟に繋がって、しばらく開いた口が塞がらなかった。


そしてその後、自分の推論が正しかった事をその目で確かめたグウィネスさんによって、検証という名目の実験に延々と付き合わされる羽目になったわけだ。



「“異なる空間を繋いで渡る”という能力は、本来お伽噺や伝承の中に登場するような生き物━━━幻獣の類いが持つ異能とされていてね。実際にこの力が備わった人間の存在は、今のところこの世で確認はされていないんだよ」


「そ・・ソウなんデスカ・・・」


つまり私は現在只今珍獣認定されたも同然の身の上というやつか。

いわゆるあれだ、ツチノコだの河童だの、いるのかいないのかわからない正体不明の未確認生物(UMA)


「『幻獣』といや、()()もその一種だという説があったっけね」


「あれ?」


「フェアリーランプさ」


「・・・ああ。自然現象というわりにやたらと生き物っぽく感じますよね」


そもそも人間の記憶を読み取る時点でオカシイでしょ。あれ。


「元々『幻獣』の定義は曖昧でね。人間が自分達の理解の及ばない存在を、全部ひっくるめてそう呼んでるだけの事なのさ」


「はあ・・」


なんというアバウトさ。

でもまあ、気持ちはわからないでもないけど。


正体不明の存在や未知の現象を、『あれはUFOだ!』とか『宇宙人の仕業だ!』とかって思い込むのは、大衆心理的にはわりとありがちだし。


後々になって科学的な根拠が証明されてみると、実際は『なぁんだ』と思うような事が原因だったりして。


「『幻獣』と呼ばれるようなやつは、掴みどころがなくて突然現れたり消えたりするように見えるから、『あれは自分達が知らない、どこか違う世界からやって来てるんじゃないか』ってね。・・・この世に理解できない存在ものがいると考えるよりは、おそれや不安が少なくて済むだろ?」


「あー・・なる」


自分達のすぐ身近に、脅威となりうるかも知れぬ存在ものが身を潜めていると考えるよりは、たまにどこぞから気紛れに渡って来ているだけの存在と思う方が、気が楽には違いない。


ぶっちゃけ何もかもが曖昧で、はっきりした事が何一つわかっていないのが『幻獣』というものらしい。


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