昼食
ゴールデンウィーク終わりますね。初めてカギカッコ使いましたよね。
団体戦が終わったので、少し遅い昼食を食べるために応援席にあがった。
続く個人戦を想像しながら、昼食を口に運んでいた。個人戦は苦手だった。後ろに続く人がいないと、試合が長引き疲れた時に負けてもいいと思ってしまう。しかし、今日は佳奈がいるのだ。絶対に負けるところを見られたくない。個人戦で負けないということは、優勝するということになる。無理だと分かってはいるが、どうしても佳奈の前では負けたくない。負けたくない、でも優勝なんていくら何でも厳しい。何度も何度も同じ思考を繰り返していた。すると、隣に誰かが突然座った。
「なんでそんなに怖い顔してるの?」
佳奈だった。驚いて僕は固まったまま動けなかった。
「あ、お隣いいですか?もう座ってるけど。」
どうぞ、と多分言えたはずだ。思考も体も驚きで中々動き出さない。佳奈はそれ以上は何も言わずに座ったままだ。しばらく止まったままだった思考が、少しずつ動き始めた。何か言うべきだろう。まだ緩慢な思考がそう判断した。
「何か用でもあるの?」
言葉をもっと選べば良かった。思考が急激に動き出し、いまの言葉のチョイスが間違っていたことを後悔と共に教えてくれる。何か用でもあるの?では、ぶぶ漬けいかかがですか?のようなニュアンスで伝わってしまう。
「試合すごかったねって言いたかったけど、怒ってるみたいだからやめとくね。また今度にする。」
新たな言葉で取り繕おうとしていたが、それよりも早く返事が返ってきてしまった。立ち上がり、この場を去ろうとする佳奈の制服の袖を咄嗟に引っ張っていた。
「怒ってないよ。ちょっと驚いただけ。」
今度は、僕に引っ張られ再び隣に座らされた佳奈が驚いている様子だった。
「ずっと剣道続けてるんだ、すごいね。だから強いんだ!」
1度付き合ったことがあるとは思えない会話が続いた。佳奈は本当に僕のことを何も知らない。僕も佳奈のことを何も知らない。当然だ。付き合っていた時間は3日間しかなかったのだから。そうだ、僕はこいつのことが心底嫌いだったはずだ。なぜこの場に留まらせてしまったのか。もうすぐ個人戦が始まる。会話を切り上げて会場に向かう途中、佳奈が僕の名前を呼んだ。
「洸!頑張って!!」
初めて佳奈に呼ばれた。付き合っていたことがあるとは思えない関係だ。やっぱり佳奈は嫌いだ。そう思ってはいるのに、口元は緩むのを止められなかった。
何もしてないのに寝不足。