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Diary  作者: 海砂利水魚
4/5

中学2〜3 市群総体 団体戦

忙しかった。頑張ってなかったわけではないのです。

地元のやんちゃな友達たちと遊ぶのにはすぐ飽きたが、やはり学校には中々行くことができなかった。

2年生になっても状況は変わらず、ほとんど出席をしないまま3年生になった。このままではまずいと感じていたので、3年生の春から小学生以来の毎日登校を始めた。最初のうちは、久しぶりの登校ということで視線が集まって、本当に吐きそうだった。視線になんとか耐え登校を続けるとそのうちに視線が少なくなっていった。部活にも久しぶりに顔を出した。毎日素振りをして走っていたが、さすがに剣道の動きは鈍っていた。それでも顧問の先生は、僕を団体戦で使うと言ってくれた。


市群総体。ここで個人ではベスト8、団体では2位以上に勝ち残れば県大会に進める。

まずは、団体戦が始まった。当日の朝オーダーが発表された。僕は先鋒に選ばれた。試合の流れを左右する大事な役目を、ブランクの長い僕に任せるとは中々思い切った選択だ。素振りで体を温めていると、たくさんの見慣れた制服を着た生徒たちが会場に入ってくるのが見えた。応援に来ているらしいが人が多すぎる。どうやら、試合開始の遅いバスケ部の応援の生徒が開始時間の早い剣道の会場に一旦来ているようだった。佳奈がいた。すぐに気づいた。どうせバスケ部応援に決まっている。しかし、団体戦何試合かは見られるだろう。あいつの前だけでは、絶対に負けたくない。


試合開始と同時に打ち込まれた竹刀をいなした。最初に相手に打たせるのが僕のやり方なのだ。構えを見ればだいたい相手の実力は測れるが、最初に打たせるとより明確に相手の力量が測れる。同時に面を打てば、自分の竹刀が先に届くという確信を得てから勝負する。初戦の相手は構えから分かってはいたが、大した相手ではなかった。早々に二本先取し、先鋒としての仕事を終える。自分の旗があがるたびに起こる歓声は心地よかった。

準々決勝まで勝ち進んだが、次の相手は去年の県大会優勝チームだった。誰もうちが勝つことを想像していなかったし、僕も勝てるとは思っていなかった。幸いにも、正午を回り、バスケ部の応援団たちはもういなくなっていた。ここまで僕は全勝だ。負けるところを見られてはいない。


準々決勝、先鋒戦、主審が試合の開始を告げる直前、見上げた応援席に真っ白い肌の人形のような女の子がいることに気がついた。バスケ部の応援じゃなかったのかよ。一瞬佳奈に気を取られている間に試合が始まり、それと同時に相手の竹刀が打ち込まれた。

最初に打たせるのが僕のやり方で、それは相手との実力差を明確にし、無理な勝負を挑まないためのもの。

しかし、その一瞬は反射的に体が動いた。いなすのではなく、応じた。今まで行ってきた反復練習の賜物だった。僕の旗が3本同時にあがった。


試合結果は1勝2負2分でうちの負けだった。僕の団体戦は全勝のまま終わった。相手は去年の県大会で3位だったそうで、ほんの少し会場がざわついて、すごく顧問が褒めてくれた。試合後に佳奈を見ると目があった気がした。僕は県大会3位の人に勝ったりするんだぞ、振ったことを後悔してしまえ、と思った。偶然でも、それが佳奈の前で起こったことがとても嬉しかった。いてくれて良かったとも、少しだけ思った。


明日から頑張る。

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