「航跡雲」
ネフェルテム神の駆るスイレンが、触れれば破裂する霊力の花粉を、雨のようにアポピスへ降らせる。
対するアポピスも負けてはいない。
蛇といえば毒のイメージが強いが、大蛇は獲物に体を巻きつけて絞め殺すという戦法も使う。
スイレンはアポピスの体当たりをかわしながら爆撃を続ける。
花びらの水分が水蒸気となり、真っ白な航跡雲が蛇の胴と絡み合って、二重の螺旋を描き上げる。
ネフェルテム神の攻撃力。
アポピスの防御力と回復力。
力をぶつけ合う激闘はいつしか、互いを攻めるために有利な場所を奪い合う、スピードを競うものになっていた。
アポピスはスイレンを、胴体の真ん中で捕らえたい。
ネフェルテム神はうろこで覆われたアポピスの、軟らかさのある喉を狙いたい。
何度目かの攻防の後、アポピスが不意を突く動きを見せ、胴ではなく鋭い牙の生えた大きな口でスイレンに襲いかかった。
スイレンは回避できる体勢ではない。
太陽の船はようやく揺れが治まったところで、船員に負傷者が出ており、すぐには戦闘に戻れない。
ネフェルテム神が、嗤った。
スイレンにはネフェルテム神とツタンカーメンの二人が乗っていたはずだ。
しかし今、幼神の隣に少年王の姿はなかった。
アポピスの目にツタンカーメンが飛び込んだ。
文字通りに。
一瞬前、すれ違いざまに、スイレンからアポピスの頭に飛び移っていたのだ。
蛇の目にはまぶたはなく、二十四時間、開きっぱなしで、代わりに透明なうろこが眼球を守っている。
ツタンカーメンの両掌から、ヤグルマギクの花びらが吹き出す。
ネフェルテム神から預かった力がアポピスの瞳にゼロ距離でぶち込まれ、強烈な閃光がアポピスの視力を吹き飛ばした。
貴様二太郎さまからファンアートいただきましたーーー!!
ネフェルテム神は幼児の姿と青年の姿のどちらにもなれる神様で、こちらは青年バージョンです♪
かっこいいです! イケメンです! ありがとうございましたーーー!!
航跡雲=飛行機雲。
飛行機のない時代の話なのでこちらの言葉を使いました。




