「作戦会議」
「さて、どうやってここから出るかについてですが、空間転移は使えません。
ツタンカーメン君の中にあるのは別人の心臓なので、無理な転移をすれば心臓だけ置き去りになってしまうおそれがあるのです。
食道を遡るのも、腸を突き進むのも駄目です。
今はアポピス自体が地獄に居るのだから、アポピスのお腹から出ても外は地獄、それも君が前に行ったのよりもはるかに危険な奥底なわけです。
ですが心配は要りません。
アポピスは夜明けになれば、太陽の船を追って地上に出ます。
そこでネフェルテムが助けに来ます。
それまで一人でも大丈夫ですね?」
「へ?」
教鞭口調がすっかり癖になっているプタハ神の、最後の一言に、ファラオがすっとんきょうな声を上げた。
「この防護服ですが、いかに霊体だけとはいえ、我々の時代に存在しないものを時空をゆがめて持ってくるのは、時空にかける負担が大きいのです。
ですからトート君は時空の修復に追われていて、私も手伝いに行かなければならないのですよ。
君を連れて行けないのは歯がゆいですが……ああ、もう! 気を強く持つ!」
「だってェ……」
ツタンカーメンの手の中で、ランプの光がどんどん弱まっていく。
「心を清く保って! 生前の、楽しかったことを思い出しなさい!」
「……アンケセナーメえええン……」
「すみません。君には早すぎました。
生前ではなく死後の楽しみ! アアルの野での暮らしを想像するのです!
涼しい河辺に揺れるアシの葉。豊かに実る麦畑。イチジクだってナツメヤシだって食べ放題です。ご先祖様は君を暖かく迎えてくれます。
さあ、そんな素敵な景色の中で、未来の君は何をしていますか?」
「……お風呂に一人で入ってる……」
「何でそれで光が弱まるんですか!? 自信を持ちなさい!!
ええい! 君にとって、これから一番、楽しみなことは!?」
「太陽の船に乗る」
ランプが輝きを取り戻した。
「カルブと約束したんだ。カルブが地上でミイラ職人として頑張ってる間に、おれは一人前の航海士になる……
それでカルブが年を取って死んだら、おれの権限でカルブを太陽の船に乗せてやるんだ!」
ランプがまばゆく輝き出す。
「その意気ですよ、ツタンカーメン君。これなら安心です」
「当然です! お風呂だって一人で入れるし!」
「では、私はもう行きますね。なぁに、夜明けはすぐそこです」
ファンアートいただきましたーーー!
かっこいい着物つーたんですーーー!




