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アテン神☆ぷりーず2 ~ファラオの冥界大冒険~  作者: ヤミヲミルメ
ツタンカーメンは亡き父と再会を果たす
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「防護服」

 地上でカルブが倒れたのと同時に、冥界のツタンカーメンが目を覚ました。

 やわらかい……布団ではない……ブヨブヨした感触の場所から身を起こす。


「本当に見事なスカラベでした」

 かたわらから声が聞こえた。

 プタハ神だ。

 でもその顔は、視界がぼやけて、よく見えなかった。


「スカラベの護符の霊力カーは今、ツタンカーメン君の胸の中で、君の心臓として脈打っています。

 あつき祈りのこもった護符が君に、奪われた心臓に代わる、新たな心臓を与えてくれたのです」


 ツタンカーメンは荒い呼吸をくり返した。

 体がひどく重かった。


「けれど物質としての護符は、棺の中で砕け散ってしまい、君のミイラは無防備な状態に置かれています」

「カルブは!? カルブはどうなったんだ!?」

「心配いりませんよ。生ある肉体は強いですから。しばらく眠れば元通りです」


 ツタンカーメンは胸を撫でおろそうとした。

 けれど自分の胸に触れなかった。

「何だこれ?」

 全身が、妙な物に包まれていた。


 白くて、包帯ではなくて……

(服みたいだけど……)

 こんな風に腕や足や、頭の先まで完全に密閉する衣服なんて、エジプトの気候では考えられない。

(亜麻でも麻でもない……)

 見たことのない素材で、とても動きにくい。


 顔を覆う部分をこする。

 視界がぼやけていたのは、ここが曇っていたからだった。


 改めてプタハ神を見ると、プタハ神もツタンカーメンと同じものを着ていた。

「未来の言葉で『防護服』というそうです。

 三千三百年ほど後の世界から、トート君が時空を超えて霊体カーだけ借りてきてくれました」


 ツタンカーメンの時代には、これを説明できる言葉はないが、とりあえず何だかすごい物なのだなというのはわかった。

 トート神ではくちばしがぶつかって、このマスクは着けられないだろうなとも思った。


 それにしても、ここはいったいどういう場所なのだろう?

 屋外なのか、屋内なのか……

 プタハ神が手にしたランプが照らしているのは、赤黒い床、それぐらい……


「ツタンカーメン君は、地獄と妙な縁がありますね。

 君は謎の存在の襲撃を受けて、冥界の川に落ちて、地獄まで流されてしまったのです。

 ああ、そんな顔をしないでください。

 オシリス君の審判は合格しているのですから、ここを脱出したら君はちゃんとアアルの野に入れますよ。

 だからこそこうして防護服を着せて守っているのです。

 これは我々神々にとっても不測の事態なのです。

 アポピスは前に見ましたね?

 ここはその、でっかい蛇のお腹の中です」


「え? ……え……? えええええええええっ!?」

「ちょ! 大声を出さないでください!」



 二人の周囲で不気味な気配がうごめいた。

 何かが居る。

 それも、たくさん。


 オシリス神の審判で罪を暴かれた死者の霊体カーは、心臓を怪物アメミットに食われ、それ以外の部位は地獄に落ちて大蛇アポピスに食われる。

 アポピスの腹の中で、ツタンカーメンとプタハ神は、地獄の亡者にグルリと取り囲まれていた。


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