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アテン神☆ぷりーず2 ~ファラオの冥界大冒険~  作者: ヤミヲミルメ
ツタンカーメンは冥界の王の審判を受ける
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「急展開」

 スカラベは、甲虫の六本足の、上の二本で天秤を吊るす糸を掴み、下の四本で横の棒を支えていた。


「良い職人に恵まれたな」

「はい!!」

 オシリス神に友達を誉められたのが嬉しくて、ツタンカーメンは輝くような笑顔で答えた。


「良くぞ参った、清きファラオよ。永遠の楽園は汝を歓迎する」

 オシリス神が天秤からスカラベを外す。

 さっきは確かにかたむいた天秤は、今はピタリと釣り合って、ツタンカーメンの心がこのわずかな時間のうちに成長したと示していた。



 広大な広間が和やかな空気に包まれた。

 が……

 それは、ほんの一瞬で終わった。



「ヒャヒャヒャヒャヒャ!」

 神聖な社殿に、若い女の不気味な声が響き渡った。


 いつの間に、どこから入り込んだのか、黒い蚊柱のようなカゲが、否定告白の神々の頭上を舞う。

 笑い声は、蚊柱の羽音だ。


 アメミットが吠える。

 ネフェルテム神の放ったスイレンの花びらが、投げナイフのように蚊柱を切り裂く。


 蚊柱は霧散したが、しかしすぐにまた集結し、立ち塞がる神々の合間をすり抜けて、女神マアトが持つ天秤に……

 そこに乗せられたツタンカーメンの心臓に踊りかかった。


「何をするつもりだ!?」

 ツタンカーメンが蚊柱を止めようと手を伸ばしたが、蚊柱は指の間をすり抜けてしまう。


 あっという間だった。

 空振りした手をもう一度振り直す暇すらもないほどに。


 蚊柱はまるで血を吸うように心臓の霊力カーを吸い取って、ファラオの心臓が、縮んで、縮んで、天秤皿から消えてなくなる。

 ツタンカーメンの体が、時が止まったかのように一人だけ動きを止めた。



 神々が蚊柱を取り囲む。

 蚊柱が、ツタンカーメンの体を突き飛ばした。


 ものすごい力だった。

 ツタンカーメンの体は社殿の壁を突き破り、庭園を飛び越え、川に落ちた。



 神々があっけに取られている隙に、蚊柱自身も壁の穴から外へ逃げる。

 ツタンカーメンの体は下流へ流されていく。

 心臓を奪った蚊柱は上流へ向かう。

 冥界の川の上流は、地上のエジプトのナイル川に繋がっている。



 真っ先に動いたのはアヌビス神とトート神だった。

 二人は顔を見合わせて、トート神はツタンカーメンを追いかけて下流へ飛び、アヌビス神は川べりを上流へと走り出した。


「たいへんだぁ!」

 庭園の隅では、審判に関わらないため社殿の外で様子を見ていたアテン神が、無数の触手を口もとに当ててオロオロしていた。


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