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アテン神☆ぷりーず2 ~ファラオの冥界大冒険~  作者: ヤミヲミルメ
ツタンカーメンは冥界の王の審判を受ける
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「旅の終わり」

 サルワがオシリス神の玉座の前へ進み出る。

 暗い広間の奥の奥なので、ツタンカーメンが目を凝らしてもほとんど見えないが、アヌビス神がサルワの霊体カーから心臓を抜き出しているようだ。

 サルワは痛がるような様子もなく、最後の嘆願の祝詞を唱えている。


 無意識に戸口から身を乗り出しそうになったツタンカーメンの肩を、プタハ神がそっと引き止める。

 ツタンカーメンは目を閉じて、サルワが神々に受け入れてもられるように祈った。


 不意にまぶたの裏に光を感じ、ツタンカーメンが目を開ける。

 天秤に載せられていた心臓を、アヌビス神が手に取り、サルワに返す。


 オシリス神の後ろで大きな扉が開いてゆく。

 その向こうが、アアルの野。


 冥界であることは間違いないのに地上のように明るくて、水と緑の豊かな香りが流れ込んでくる。

 あしの葉が、揺れてこすれる音がする。

 光の中に、いくつもの人影が、一組の男女を中心にして並んでいた。


「父様! 母様!」

 サルワが走り出した。


 両親は、亡くなった時の年齢なのだろうか、老いたサルワよりもはるかに若々しい姿をしている。

 サルワもまた、足腰の衰えた体から、脂ぎった中年の姿、うれいを帯びた青年の姿へと、一歩進むごとに若返っていく。

 二人のもとにたどり着き、抱きつき、数十年ぶりに甘えた時には、サルワは二人の息子にふさわしい少年の姿に戻っていた。

 魂は、望む姿になれるのだ。



 扉が閉じる。

 サルワはこちらを振り返らなかった。

 お風呂奴隷の話など、きれいさっぱり忘れてしまったようだった。




 さあ、次はツタンカーメンの番だ。

(おれを待っている人も、あの扉の向こうに居るんだ)


 歴代の高名なファラオ達。

 早くに死んだ母親。

 そして……


(父上……)


 ツタンカーメンの母親は、アテン神の巫女だった。

 結婚しないままツタンカーメンを生み、相手が誰か明かさないまま亡くなった。

 残された息子を、先王アクエンアテンが養子・・にした。


(どうして実の父親だって言ってくれなかったんだ……?)


 アクエンアテンはツタンカーメンを、アテン神の息子だと言い続けた。


(本人に、直接会って、訊き出す!)


 先王が永遠の楽園に居ることを、自分もそこに行けることを、信じる。




 まずは否定告白。

 覚悟を決めて、ツタンカーメンが最初の神の前へと踏み出す。


 ここまでずっとツタンカーメンの隣を歩いてくれていたプタハ神が、戸口を一歩入ったところで足を止めた。

 ファラオが振り返ると、神はファラオの黄金のマスクを頭にすっぽりとかぶっていた。


 マスクの両目が太陽のような光を放つ。

 四十二名の地方神は、古の神とエジプトの王の前に、一斉に両手を上げてうやまいを示した。


 ツタンカーメンが目をぱちくりさせる。

 これでもう、否定告白の儀式はおしまい。

「未来の言葉で顔パスと言うそうです」

 マスクをしたままプタハ神がえっへんと胸を張った。

 意味が微妙に違わなくもないことに、この場で気づいているのはトート神一人だけだった。



「私が導けるのはここまでです」

 プタハ神が、オシリス神へのあいさつを済ませてから、ツタンカーメンに向き直る。


「それではまた、次はアアルの野で逢いましょう」

 プタハ神はツタンカーメンの肩をポンとたたき、マスクを着けたまま、もと来た道を引き返していった。


 ツタンカーメンは深くうなずき、広間の奥へと歩き出した。


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