「メジェド、か」
段差も多い、岩だらけの道。
昼夜なく薄暗い冥界の空から、白い何かが降りてくるのが見えて、ツタンカーメンとファジュルはその場所に駆けつけた。
「何だあいつは!?」
「待って! 見覚えが……あった! ここに挿し絵が!」
ファジュルが死者の書を開き、ツタンカーメンに示す。
「メジェド、か。見た目はあんなだけど正義の味方らしいな。だけど……」
だけどどうしてそのメジェドが、ガサクに詰め寄っているのだろう。
全身を布で隠したメジェドからは、もちろん表情はうかがえない。
ガサクは、悲しそうだった。
メジェドの布の両脇が膨らんだ。
遠目には両手を広げたように見えた。
けれどすぐに違うとわかった。
その膨らみが立ち上がったからだ。
一人目のメジェドの布の下から、同じ大きさのメジェドが左右に一人ずつ出てきて、三人になった。
不気味さに、ファジュルが怯えた声を漏らした。
三人になったメジェドの布の中から、新たに二人ずつのメジェドが現れた。
ツタンカーメンが唾を飲み込む。
最初は一人だったのに、布の中に九人ものメジェドが隠れていたようにはとても見えなかった。
その九人からさらに二人ずつ増えて、ツタンカーメンは数えるのをやめた。
ただ、二十七人のメジェドが円になってガサクを取り囲んでいるというのが、穏やかな状況でないのだけは間違いなかった。
「おまえら! 何をやっている!」
ツタンカーメンは声にファラオの威厳を込めた。
メジェドはオシリス神に仕える番兵。
ファラオはホルス神の霊体を預かる分身。
地位はファラオのほうが高い。
メジェド達が振り返った。
その一人……おそらく最初に居た一人目のメジェドの両眼から、光線が放たれた。
光線はツタンカーメンの背後にいつの間にか迫っていた悪霊を打ち倒した。
「アクリョウ クル」
布で口の動きが見えないので、どのメジェドが言っているのかはわからない。
「アクリョウ ハイリコム」
同じメジェドなのか違うメジェドなのか。
「ケッカイ ガ ユガメラレテ イル」
メジェドの攻撃を受けた悪霊は地底に消えたが……
「ケガレ」
良く見れば岩陰から無数の悪霊がこちらの様子をうかがっている。
「ハイジョ スル」
メジェド達の視線が、ガサクに集まった。
ガサクは達観した目をしていた。
「悪りィな、ファジュル。ここでさよならだ。
つーたん……ファジュルを頼むな」
息を吸う。
寂しさを飲み干すように。
「俺、墓泥棒なんだ」
結界のひずみが大気を震わせるのがツタンカーメンにも感じられた。
ツタンカーメンは王だ。
地上においてならば一声で死刑囚を解放することだってできる。
それでもガサクの告白には、足もとにうずくまるファジュルのような泣き崩れ方をせずにいるのでせいいっぱいだった。
二十七人のメジェドが自身の足もとに向けて一斉に目から光線を放った。
ガサクを中心に、地面が円に切り取られ、床が抜けるように下の階層へ……地獄への穴が開く。
ガサクが目を閉じた。
そのまま落下していった。
挿し絵、いただきましたーーー!!
メジェドについて資料にあったのは外見と役職と空を飛ぶのとビームを出すって点だけで、しゃべり方と増殖能力は筆者による設定です。




