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「授業」
「おいでなさい、まずは新鮮な野菜ともぎたてのオリーブ!」
ハタプ神がパンッと手をたたくと、何もない空中から指定の品物が入った大きな籠が現れて、ファジュルの腕の中に降ってきた。
「お次は赤い牛の肉と白い牛のミルク!」
ハタプ神はさらにパンパンッと手をたたく。
しかしガサクの手の中に現れたのは、ミルクの壷だけだった。
「おや、牛肉は品切れでしたか。なぁに心配は要りませんよ、こちらは代用が利きますから」
神様は踊るようにパンパンパンッと手をたたく。
「山のようにたくさんのパン!」
「ぐわっ!?」
ツタンカーメンの上に、袋に入った大量の小麦粉が降ってきて、ツタンカーメンを下敷きにした。
「ふむ。材料しかありませんか。どうやらこちらもサルワ殿に渡した分が最後だったようですね」
ハタプ神は妙に芝居がかったしぐさであごに手を当てた。
「というわけで、今日の授業はパン作りです! 皆さん、がんばってください!」
「授業って言った! 今! 授業って言った!」
ファラオのわめき声を無視してハタプ神が手をたたく。
次の瞬間にはツタンカーメン達は厨房へ移動していた。




