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7話 休憩所とルーネ 

森林から抜けるとそこには大きな山が連なっていた。そしてふもとには大きな広場に古びた小屋がいくつか見えていた。村長が説明していた通り、ここにはには昔小さな村があったように見えた。


完次は、荷物を降ろして体を伸ばしていた。久しぶりの重労働は、完次の腰と肩に痛みが襲っている。そして、完次の額には汗が流れている。上下セットの作業着ている完次は、首に巻いてあるタオルで額の汗を拭いた。そして、辺りを見渡しセラ達がいない事を確認すると、上着を脱ぎ汗で体にピッタリとくっついて半袖のシャツと体の間にタオルを入れ汗を拭った。


汗を拭った体に、汗を吸った半袖のシャツが再び肌に触れると少し冷たく少々気持ち悪いと思うのだが、前世界での夏の工場の生活ではいつもこの状態で仕事をしていたので慣れていた。


「完次さん ご苦労様です あちらの小屋で休憩しましょう」


完次はびっくりした。辺りを見渡した時には確かに誰もいなかった。なのに、完次が振り向くと少し赤面をしたケイトの姿がいた。なぜ赤面しているのかわからなかったが、自分の姿を見て気付いた。再び半袖のシャツがピッタリと体にくっつき、体のラインが丸出しだった。


自分で言うのもおかしな事だが、見られて恥ずかしい体はしていない。腹は出ておらず引き締まっているし、体は細くなく筋肉が多少付いていていい体だと思うが、半袖のシャツに乳首が浮き上がっているのだ。少し寒くて浮き上がってしまった。


「すまない 見苦しいのを見せてしまって」

完次はリュックサックの上に掛けていた作業着の上着を急いで着ることにした。


「いえ すばら・・・ 失礼しました。 お体にお障りますので 新しい半袖のシャツを着てください」


ケイトの手には、綺麗に畳まれたシャツを持っていた。ケイトは先程まで手には何も持っていなかった。いつ。どうやって取り出したのか。わからなかったが、きっと旅支度をしていた時に披露したマジックみたいなものだろうと予測して、これ以上醜いものを見せないように、ケイトから奪う形で半袖を受け取り背を向けて、急いで着替えをした。


「完次さん 洗濯させていただきますので 御召物をお預かりします」


ケイトは、中腰の姿勢で頭より高い位置に手を伸ばしていた。完次はその手の上に自分の大量汗を吸ったシャツを置いていいものか、少し躊躇したが「ありがとう」と感謝の言葉を伝え後、ケイトに洗濯をしてもらうことにした。


完次からシャツを受け取ると、ケイトの手や体は小刻みに震えていてブツブツと独り言を言っていたが、何を言っているのかは完次は聞き取ることが出来ずいた。ぎゅっと胸で大切そうに抱え込みながらケイトは立ち上がった。


「では 休憩所にご案内します 」


ケイトは、一礼を終えた後完次の前に立ち歩き始めた。完次は、ケイトにそのままだと自分汗や臭いなどがケイトのメイド服にも吸い込んでしまうと心配して声をかけたが、恍惚しているケイトはこれを聞いてていなく歩き続けている。完次は、ケイトの背中を急いで追うように再び重いリュックサックを背負うのである。


ケイトは一つの小屋の前に着くと足を止め完次の方に振り向いた。


「こちらが休憩所となっております 私は早速ですが、完次さんの洗濯してきます」


これを伝えた後、足早にどこに姿を消していった。ここで完次はここで気が付く。ケイトは、もしかして自分の体臭が臭くて我慢できずいたのだと思うである。これで、ケイトが小刻みに震えていたのも納得できる。大事に抱え込んだのは理由はわからなかったが、足早に洗濯をしに行ったのは早くこの匂いから解放されたいのだと推測をし、自分の匂いを嗅いでみるが無臭で特に臭いとは思うことはなかった。だが、自分の匂いというのは大抵じぶんでわからないものである。自分が臭いのを認識すると少し凹むのとこれからお風呂にはしっかり入るように肝に銘じることにした。


小屋の中に入ると、ところどころに穴が空いてあったがに気にならない程度小さく、隙間風が起きても寒くと思うような気温でもあった。そして、ボロボロになった敷布団と少しボロボロになっているベットらしきものを置かれている。ボロボロではあったが貧困生活を送っていた完次にとっては気にならない程度になっており、少し修復すれば住むこともできると思っていた。


 完次は小屋の隅に大きなリュックサックを降ろし中からこれからセラの修理に必要な物を取り出していく。T型レンチ、スパナ、ペンチはもちろん検電器なども取り出していく。それからセラがベッドに座っていいように埃などを叩こうとしたが、叩けば叩くほど埃が出てきてしまった。


その埃にてんやわんやしていると、少し恥ずかしそうなセラとどこかすっきりしたケイトが小屋に入ってきた。


「ケイトすまない このベッドを埃を綺麗にしようとしたら収拾がつかなくなってしまって・・・」

「わかりました。 私ケイト 今エンジン全開なので 任せてください」


ケイトはボロボロで完次が綺麗にしようとしてさらに汚れてしまったベッドの前に立つと、いつ取り出したのかわからないハンディ掃除機を片手に掃除を始める。ケイトは手際よくみるみるうちに完次の失態を掃除内に収めていく。これまた手品のように一枚の綺麗な白のシーツを取り出すとボロボロだった敷布団に綺麗にかけると、品質の良い中古のベッドのようになっていた。少し鼻息を漏らしケイトは納得した様子でいるケイトに完次は感謝の言葉を伝えた。


「セラ このベットに寝てくれないか? 治すからさ」

「おっおう」

セラは緊張した顔しながら頷き、ベットの方へ足を運んだのだった。歩けているが戦闘はできない状態であるセラは、ベッドに着くと横になる。完次は故障している右足の膝の部分を立たせようと触る。


触るのと同時に自分の手が冷たいのが原因なのかわからなかったが、セラは甘い吐息を吐く共にビクッと体を震わせた。


ここでまらルーネが「変態」「エッチ」という罵声が来るだろうと完次は身構えたが、その罵声は完次の耳に届かなかった。


完次は、麓に着いてから一度もルーネに見ていないことに気が付いた。いつも、無口ではあるが完次の側から離れていなかったので守ってくれていたルーネがいない。高級時計を初めて買い意気揚々と身に着けたのに何処かに置き忘れた気分に陥っていた。


「ルーネがいないだが 大丈夫なのか? 何かあったのか?」

「ルーネちゃんなら周辺安全確保をやってますので そんな慌てなくて大丈夫ですよ」

「本当に一人で大丈夫なのか? この辺もモンスターがいたらどうする そして物凄い強いモンスターに襲われたら…」

「あの娘なら平気です 完次さん落ち着いてください」


小屋の中をぐるぐると回っていた完次をなだめているケイト。自分より強いことは知っているが本当に平気なのか?という不安が完次の精神を襲っている。心配性な完次はこの不安というものにめっぽうに弱いのだ。


完次から見てルーネは幼く見える。人間に例えると中学生になったばかりにしか見えない。そんな少女がモンスターがいるかもしれない場所に一人でいるなんて不安しか感じない。子供が山奥で迷子になった親の気持ちが今完次には痛いほどよくわかる状況になっていた。

  

「わかりました 完次さんが不安なら仕方ありません ルーネちゃんの様子を見てきます 」


「頼むよ おそらくモンスターを戦っても勝てるだろうし 勝てない相手が襲ってきたらこちらに逃げてくれると信じている。 だが、セラが戦闘して壊れた箇所はしっかりとした新品の品ならおそらく壊れず セラも何事もなく戦闘を終えていたと思う 俺が・・・情けない大人だったから中古の品でお前たちを作ってしまったから・・・セラが損傷してしまったのだ 」


完次は考える。『もし』彼女たちの部品が新品だったら・・。間違いなく一度の戦闘では壊れる事ない。損傷することはあるかもしれないが、それは戦闘後メンテナンスをすればたいしたことない。


セラの修理が完璧に行えていないのに喜び、壊れた箇所が自分に原因なのに自分ができたと思い込んでい数十分前の自分のにやけついてる自分を殴りたくなる。


完次が口を閉じ、考えている間に小屋の中には重い空気と沈黙の空間ができている。そして、セラやケイトまでも口を閉じそれぞれ考えていた。


おそらく、自分が中古の部品を使っている事を言ったことが原因で不安にさせ、失望させたのだろう。こんな無責任で御粗末な人が製作者なんてセラ達は嫌だろう。私はいつもこうだ。せっかく周りがいい方向に向かおうとしているのに、完次が不安を感じさせるようなことを言い空気を重たくする。こんなやつに友人ができるはずもなかったと改めて自覚をした。


完次の目の前に一人の女性が立ち、下向きになっていた顔を覗き込んだ後おでこをデコピンをした。


「今は仮の話なんてどうでもいい 完次仮の話をしても話は進まないぜ まずは目の前のことに全力だろう? いつもそう言ってたじゃないか」


おでこにデコピンしたセラの言う通りだ。工場経営で苦しい時も、ロボット作りがうまくいかない時、常に目の前の事を全力でやって何とかここまでやってこれたことを思い出した。


「そうだ・・・そうだよな・・・あり・・・」

セラに感謝の言葉を伝えようとすると、シャツの袖が強く下に引かれたので中腰の姿勢になると、ケイトは背伸びをし完次の耳元で小さく囁いた


「完次さんが頑張ってるところちゃんと見てますよ」


シャンプーとリンスのいい匂いが薄れていった後、完次はケイトの方を向くいつも素敵な笑顔をくれる彼女だが照れくさく笑っていてるのを見ると少し心を奪われそうになった。



「それでは私はルーネちゃんの様子を見てきます」

「すまない 俺はここでセラといるから」


ケイトは完次にお辞儀をしセラの方を少し見たが特に何も言わずに小屋から出ていくのだった。振り返ると、セラの顔は頬を赤く染め小声で何を言っているのかさっぱりだった。


完次は、そんなセラをさて置き道具と部品持ちセラを再びベットに座らせ、前回と同じく膝の部分を開くと溶けた配線や切れてしまっている配線など損傷している部品を取り出す作業を始める。前回よりか安全な場所で作業ができるので気持ちに余裕があり、セラを恥ずかし攻めをすることなく順調に作業を行えていく。 


「作業しながらでいいから聞いててくれ」


全ての損傷個所を取り除き終わる時だった、セラが語りだす。セラ達を作っている時にラジオ等を流して作業している事を思い出す。作業場が静かなよりも何かが流れている方が完次にとっては作業がしやすかった。


「うちらもあんまり記憶がないからうまく説明できるかわからないけど うちらは完次が作り上げた時からの記憶がある。だから、ウキが一番完次の事よく知っている。 ウキは良く完次の自慢話を聞いていたよ」


そんな自慢するような話があったかと思い直しても一つも思い浮かばない。


「そして、エイト姉さんが誕生した日に完次も知っていると思うが、うちらは人間みたいになったんだ。」


・・・ セラ達も 人間になった理由が沸かないのか ・・・


「最初みんな驚いたが、それより嬉しかったんだ。言葉を出せる、物に触れる事もできる、そして、完次に触れる事も話すこともできる。うちらにとっては最高の一日なったよ。完次はどうだったがわからないけどさ。」


・・・ 最初は私も混乱はしたけど今となっては最高の一日となっているよ。あの日から自分の夢が動き出した気分だ。 ・・・


「それで戦闘の件なんだけど 実のところ私もよくわからないだ。 ただ、戦闘中に項目欄が出てきてその中から自分で選択をするとその項目に書かれていることが出来たんだ。 ロボットキングの技もその一つだったからできた。 」


・・・ ゲームと同じような感覚か。セラ多人数向けではなく一対一向けこれは覚えていたほうがいいかもしれない。 ・・・


「私だけが戦闘をしていたから完次はわかなかったとおもうけど、あの戦闘時にケイトもルーネもそれぞれ項目が出てきたって言っていたから。 ルーネも戦闘ができる。 そして、他の皆もできるって考えていいと思う」


その言葉聞いても完次は正直驚きはしなかった。ここは異世界何が起きてもおかしくはないと思ってた。

 


それに、セラの故障でわかったことがある。セラが戦闘で使った『技』は、現状のパーツでは耐えきれないかもしれないのだ。


ベット周辺の床にはボロボロになった部品が散らばっている。そして、セラの脚部には損傷個所がなくなっていた。完次は、セラの話が終える頃に治療はすべて終えていた。


「セラ 壊れてた部分は直した だけど、この先戦闘が起きるようだったらできるだけさっきの『技』は控えてくれ」

 

セラは、何か言いかけたけどそれを辞め、素直に頷いたのだ。何を言おうとしたかわからないけど、無茶をするセラの行動を予測することは簡単であった。


セラの治療を終え、出していた道具など片づけていると外から大きな雄叫びが聞こえたのだ。

 

完次は、急いで穴の隙間からのぞいてみるとさっきまで通っていた道に大きなモンスターがいた。


オーガだ。オーガは数十体をいるようにみえる。


オーガの軍は、大きなこん棒を持ちこちらをじっと睨んでいているものもいれば、余裕の表情をみせているものいる。当然だった、オーガだけではなくオーガの周りにはゴブリンが多く存在したのだ。数では圧倒的な不利だった。


ルーネ達の事がさらに不安になるころに、平然としたルーネとケイトが帰ってきた。


「外にオーガとゴブリンがいたけど大丈夫だったか」

「平気です。あいつらが現れる前にはこちらに向かっていたので、あいつらの数十メートル以内には入っていません。」

「それは良かった。早くここを出よう」


あんな数を相手にすることは無理だ。あんな群衆を見たら逃げるしかない。でもどうやって逃げるのか?逃げる場所があるのかと、完次の頭の中はパニックを起こしている。



完次の裾をチョンチョンと引くルーネ。裾を引っ張られていることに気が付く完次は、自分の身長の半分もないルーネに目線を合わせる。


「平気 ここ 安全」


ルーネが、自信を持って言っている。そして、瞳には強い意志が感じられた。



グォオオオオオオオオオオオオオオオおおお


再び雄叫びが聞こえた。先程より大きくそして勇ましく聞こえると、小屋は大きくゆれ地響きが鳴り響いた。


完次は急いで外を見てみると。オーガ達がこちらにむかって全軍で突撃してきた。土煙が巻き起こしながら向かっていくる。


一歩 


また一歩


こちらに大きな塊が迫ってくる。


そして、さらに一歩踏み出すと


モンスターの消えた。


次々にモンスターは消えていく様子に完次は自分の眼を疑った。何度も擦ってみたが、擦るたびにモンスターの数は減っていき、気が付いたらモンスターはほとんど消えていた。


「『罠』 仕掛けた たくさん」


ルーネが作った落とし穴にモンスターが掛かったのだ。そして、罠にかからなかったモンスター達は脅えている。他のモンスターが落とし穴をを飛ぼうとすると、杭が大量に備え付けられている柵が地面から現れゴブリン達を行先阻む。その柵は、森と麓の境界線となりモンスター達の壁となっている。


一匹のオーガがゴブリンを掴み、こちらに投げ込んだが、麓内に入る空中で何かに捕まっている。完次は目を凝らしてみてみると、ゴブリンは有刺鉄線に突き刺さっている。有刺鉄線は麓を鳥かごの様に中には何も入らないように張り詰められている。


そして、ルーネが持っているスイッチを押すと有刺鉄線に捕まったゴブリンはバチバチと音を立てている火花と共に燃え、骨だけとなると麓に落ちてきた。


「安心した? ここ 安全」

ルーネは、完次の方を見つめていた。ルーネの手は泥などが付着し服も泥などで汚れていた。ここに来てからいろいろと頑張ってくれていた事が目でわかる程だった。


そんなルーネの頭を完次ごく自然に撫でた。

「ありがとう ルーネ」

ルーネは頬を真っ赤にして、顔を下げフードを深くかぶり小屋の隅にいき、本を開いたのだ。



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