44話 勝者と敗者 1
地傀儡。地属性の召喚獣。火耐性、風耐性持ち水魔法が弱点。
防御力は非常に高く攻撃力も高いが、動くスピードや攻撃スピードが非常に遅い。
ハロウィンは地傀儡については知っている。
だけど、目の前にいる地傀儡は何処か違う気がする。
火耐性はあると思われる。私の炎の魔法【夕日】を耐えていた。
風耐性もある。私の風系統の魔法をほとんど放ったが効果がない。
スピードも全然違う。
瞬発力。かなりの物であり、火系統の魔法のようなもの放ちながら瞬時に移動した。
これを考えてみると目の前にいる敵が地傀儡だとは言い難い。
何より一番の気がかりは敵の姿だ。岩のようにゴツゴツした姿をしているとハロウィンが読んだ書物には書かれていたが、目の前にいるのは岩ではなく鉄だ。
これは、鎧を纏う巨人だ。まぁ命名するなら・・・鉄魔人とでも言っておこう。
さて相手の分析を済ませた。後は、あいつ等を倒して詳しく知ればいい。
戦うのに注意すべき順番はまずはあの地傀儡だね。そして、あの最後に来た女は要注意ね。あの女は、もしかしたら魔法反射を持っているかもしれない。
メイドも危険だ。あの一撃は相当…いや…この私ハロウィンちゃんを殺せる一撃を持っている。だから、彼女も要チェック。残り一匹も何だか罠を仕掛けているからその罠に気を付けよう。
ケイトとの闘いの最中に取り乱していたハロウィンとは全くの別人のように落ち着き戦いに集中し始めた。
このハロウィンは認め始めていた。
好敵手だと。
笑みをうかべる。
やはり、魔法の研究も楽しいのだが新しい魔法や強大魔法をふんだんに使える好敵手と戦う時が一番楽しい。だから、ハロウィンは笑みを浮かべるのである。
「さて ハロウィンちゃんもやる気満々で行くよ」
ハロウィンは地傀儡と三人の女へと向かって攻撃を仕掛けた。
「…これで良し ハロウィンが攻撃を仕掛けてきたのなら… 」
「はい 完次さん 【プロト】の盾が32枚のうち24枚が損傷しています しばらく防御を控えてください」
「了解 なら このウキとスーからもらったプレゼントを使うしかないね」
「そうだね 完次 私とルーネはそろそろ持ち場にいくわ ハロウィンの相手 ヨロね」
「 戦 歎願 頑張って」
ルーネとチュームはそれぞれ別の方角に散っていき、ケイトは【プロト】の首筋に立ちハロウィンの方角を見ていた。
服装はメイド姿に戻っていたが、スカートからケーブルが伸びている。
伸びたケーブル先には、【プロト】の心臓部と接続されていた。
これからのハロウィンやケイト、チューム、ルーネの戦闘はおそらく一般人の完次の眼から見て別次元の戦いになる。それでも、完次は戦いに参加をしなければならない
だから、少しでも足を引っ張らないように【プロト】の戦闘力を上げることにした。
【プロト】と繋がったケイトが演算処理装置をしてくれている事により【プロト】の動きが格段と良くなっていた。
下手だった移動もケイトのバックアップが付くことにより滑らかな動きになる、そして完次が苦手としていた射撃攻撃もケイトがバックアップすることによりロボットアニメのエース級の命中率まで上がるのだ。
しかし、このケーブルによりケイトは【プロト】から離れられくなる為、ケイト自身の戦闘参加はない者とする。
そして、このケーブルがケイトのどの部分に接続してあるのか完次も知らないがスカートの中へとケーブルは伸びている。
「フフフッ 完次さん嬉しそうですね」
「いや すまない ウキやスーだけではないな ケイト達も作ってくれていたのだろう ありがとう 最高だよ」
無傷の盾の裏にはプレゼントが付いている。そのプレゼントは【プロト】の右腕にゆっくりと接続された。もちろんケイトの操縦で…
二連装の6銃身の大型回転式機関砲。ロボットキングにでてくるロボットの一機の主兵装。完次が好きなロボットベスト10に入るロボットの兵装を真似て作ってある。
完次は目を輝かせる。男ならこの武装を見れば目を輝かせるだろう。
デカい。連射。これだけでロマンの塊。
見ているだけで興奮をする。これを見ながらならご飯何杯でも食えるだろう。しかも、撃ってるいう…2万発も撃ってるなんて最高だよ。
完次の手元に引き金がある。この引き金を引けば弾が出る。難しい計算や標準合わせる事はケイトがすべてやってくれる完次はこの鳥がねーの引き金を引くだけ…
ごくりと唾を飲み。
引き金がを引いた。
引くと同時に操縦席にも聞こえる銃声。豪雨に撃たれるテントのように激しく聞こえる。
トリガーを引くと同時に、操縦席も小刻みに何度も何度も揺れる。
弾がハロウィンに向けて飛んでいく。雨のように…
だが、
それをハロウィンは全て避ける。
さすが魔法使い。何かしらの魔法を使っているのだろう。まるで鳥のように空中を自由に飛び周り全く当たらない。
だが、こちらも負けはしない。
標準は素早いハロウィンを追いかける。
さすがケイトだといいたい、完次はただただトリガーを引くだけの簡単な仕事。
逆にケイトの仕事は方向を合わせるために【プロト】の身体を動かし、細かな標準を合わせるために細かな腕の動きの操作、ハロウィンの行動予測など様々なことしている。しかも、一瞬でだ。さすがロボットと言いたい。完次はこうもうまく操縦は出来ないであろう。
近距離攻撃を持っていない【プロト】に近寄らせてないだけ十分だった。十分だったのに完次は当てたい欲を出してしまった。
「完次さん 撃ちすぎです 少し押さえて下さい」
完次は目の前のモニターにでかでかと書かれたケイトのメッセージを見て引き金を引くの辞め、モニターの端を見た。
残段数638という数字が真っ赤に点滅している。
「残り弾数638… やばいなこれ トロウィの事をもう二度と馬鹿にできない」
*(トロウィ=ロボットキングに出てくる人物の一人で、先程の武器を持っているロボットの操縦者であるが、戦いの中で度々弾を打ち尽くし、ネットで役立たずや考えて戦闘しろなど酷いこと言われていた人物)
おそらくケイトは何度も声をかけてくれていたのだろう。興奮状態であった完次が悪いのかもしれないが、操縦席にも響き渡っていた銃声これも一つの原因ともいえる。
だが、今こういう立場になってわかったことがある。こういうの物は打ち尽くしたくなる。残数が少ないともわかっていても撃ちたくなり、これ以上撃ったら状況は最悪になる事もわかっているのに撃ちたくなるものだった。
だが、それはゲームとかなら許せる話。今は戦。反省しなければない。
今回の反省…残り残数が少なくなったらアラームを付けるようにする。プラス。残り残数や残りエネルギーの表示も大きく表示するようにする。
「完次さん 私も打ち尽くして失敗しました。 次回は気を付けましょうね」
「は・・・はい。」
完次が原因で状況は最悪ともいえる。遠距離攻撃の主兵装がほぼ使えない状況になった。
残された遠距離攻撃…
すぐさま武装に変更する準備にかかる完次は、手元のボタンを複数回押す。
すると、【プロト】の口元はパッカっと開かれる。
開かれた口元からは勢いよく出てきたの水だ。
ウォータージェットカッター。(水圧カッター)
小さな穴に水を加圧することによって、鉄板など切断する代物。
言葉の響きはいいが、実のところ超至近距離で相手を固定した状態ならばの話である。数百メートル離れているハロウィンの身体を傷つける事は不可能。
この水圧カッターは、工場の壁や床の汚れを取るための掃除には大変便利であった…言い換えると高圧洗浄機である。
だが、この高圧洗浄機にハロウィンは距離を置いた。しかも、かなり驚いた様子である。なぜ驚いたのか理由がよくわからない。
よくわからない。
なぜ。
理解をできなかったが、この高圧洗浄機並びに水圧カッターにより、ハロウィンに向かうはずの戦局が実は完次にむかっていたのだ。