40.5話 ウキ&スーのお留守番
「暇ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
ウキはいつも機械音で賑やかで完次が良くいる地下3階で駄々をこねている。いつも騒がしいこの場所には現在誰もいない。ウキとスーのみ、皆外に出かけている。
静かなこの場所にはウキの叫び声は良く響いていた。未だにウキの声が響き渡っている。
「お姉ちゃんはパパが居なくても駄々をこねるの?」
「ブーだ。スーはいいの?いまだにパパとお話しとかあまりできなくて・・・」
「別に パパが帰ってくれれば スーはそれでいいもん」
「ふーーーーーーーーーん スーはそれでいいだ 」
何かを隠している顔をしている。これは姉妹だから。双子だから。ということではなく誰が見てもわかりやすいような何かを隠しそして何かを企んでいるような顔をしている。
スーは考える。
こういう時にお姉ちゃんは、『何かあるの?』とか質問をしないと拗ねる。話をしないといけない。正直めんどくさいと思う人が多いが、こんなお姉ちゃんが可愛らしく愛らしいから好きなのだ。
こちらの世界に来て最初に話し合ったのがエイト達姉妹の設定をどうするか…という簡単な話し合いをした。長女エイト次女セラ三女ケイト四女チューム五女ルーネ六女マーニャ七女スー八女ウキと誰しもが結論となろうとした時、スーはウキのお姉ちゃんという立場を嫌がりウキをお姉ちゃんにしてほしいとスー自ら八女の立場を選んだ。これで皆が納得したと思ったのだが、一人最初から頑固に違う主張をしていた。その一人というのがスーの目の前で駄々をこねているウキである。
ウキは自分が一番最初に製造されたんだから一番が長女と主張しているが、エイト達が子供をなだめるように対応してその場を凌いでいた。
その時エイトお姉ちゃんがとっていた行動をマネをするようにスーはウキに問いかける。
「お姉ちゃんは何か閃いたの?」
「ふふふ お姉ちゃんは頭がいいのです パパが帰ってきたらお願い事を聞いてもらう約束を覚えてる?」
「覚えてるも何も さっきまでお姉ちゃん何をしてもらうか 考えてたじゃん」
「そう ウキちゃんは考えたのです そしてパパ一人占めにできる方法わかったのです。 これでパパはウキちゃんのものなのです」
鼻息をフンフン言わせながら嬉しそう笑っているウキは、よほどの自信を持っているように思えるのだが妹として少し不安である。ウキは頭がいいかというと・・・あまり良くない。だから、その名案を聞いて本当の名案ならそのまま褒めればいい、ダメだったらどことなく誘導すればいいと思っていたが…。
「どんな方法なの?」
「教えな―――い」
お姉ちゃん…っと心声が漏れそうになった。スーは幾度なくウキをフォローをするが、なかなかうまくいかない。うまくいかないからこそ可愛らしいと思うのだ。
「スーは何をお願いしするの?」
「ナイショ お姉ちゃんも言わないから」
「ぶーーーー いいもん ウキちゃんは魔法使えるからそれで調べるもん」
ウキはスーに掌を向け小さな円描くように手を回した。まるで何かの念をスーに送りそれで読み取ろうとしている。馬鹿げている。だけど、ウキは必死だ。眉を寄せほっぺを膨らまし顔が真っ赤になる。
「お姉ちゃん そんなことやってもわからないよ」
クルクルと回していた手が止まり、ウキはスーの眼をジッと見つめた。
「 …パパと一緒に… 」
「!!!!」
スーは正直に驚いた。スーの願望を的確に当てたのだ。不思議だった。どうやって理解したのかわからない。互いの考えていることがわかる【ライン】はしていない。スーのデータベースを探してもウキが理解をした理由がわからない。
「くふふふふふ、ふふふふっ スーの顔 真っ赤 太陽さんみたいになっている」
きゃきゃっと笑っているウキがスーを指をさしながら笑い転げている。スーは自分の顔を触ると熱がこもっているのが分かる。ウキの言う通り太陽のように真っ赤になっているのだろう。
「お姉ちゃん 笑いすぎ ところでなんでわかったの?」
ウキは膝をポンポンと叩き立ち上がると、転げていたところは床が微妙に綺麗になっているのだが、ウキの背中には埃がたくさん付いていた。その背中に着いた埃を取って上げた。
「ウキちゃんはね スーのお姉さんだからだよ」
ウキの返答にスーの頭の上にはたくさんのクエスチョンマークが浮き出る。答えになっていない。どうしてどうしてとずっと考えている。
「もー ウキちゃんはスーお姉ちゃん 何でもできるの 」
どうだと言わんばかりに、胸を張っているウキがいる。
スーは、この答えを聞いてもわからない。お姉ちゃんは、どうしてわかったかそればっかり気になっていた。
「そ、れ、に」
言葉に合わせて指震わす姿は、可愛らしくそれに嬉しそうである。スーはこんな可愛らしい動きはできない。おそらく大変可愛らしいのは、幼く可愛らしさを持つウキの笑顔とウキから放たれる心地よい雰囲気
が作り出したものだろう。スーはこんなことはできない。
ウキとスー双子だから顔はよく似ていて、姉妹であるエイトやケイトでさえ時には間違えるほど似ている。だが完次は一度間違えた事ない。何度も騙してやろうとウキとスーの唯一の違いである小さな泣きぼくろをケイトがメイクでスーに泣きぼくろ付けて完次の前に訪れたが、完次は間違えることなくウキとスーを当て、スーに付いているメイクまで落としてあげた。
この時は、姉妹でもあるケイト達も驚いていた。正解する者はいないではと思うほどの超難関問題を完次は瞬時に解いてしまうからだ。メイクした二人の写真を撮ったモノを間違い探しクイズに出したら、誰しもが同じ写真を出されたと勘違いをする。それぐらに似ているのに、完次は悩む事無くすっぱりと当ててしまう。ウキとスーはその出来事は悔しいと思うが本当の所嬉しかったのだ。
特にスーは、雀躍という言葉が似合うようにスーは完次がいないところでピョンピョンと飛び跳ねるように嬉しがっていた。
スーは、印象が残らない娘と思っていた…お姉ちゃんは天真爛漫だ。甘えたい時には甘えられる素直で良い性格だ。スーも甘えたい時もある。スーはウキの双子の妹、ウキが甘えん坊ならスーも甘えん坊なのだ。だが、その気持ちをグッと堪えてお姉ちゃんが甘えている時は自分は我慢していた。甘えているお姉ちゃんはよく知られていると思うし良く顔を覚えてもらえていると思うが、甘えん坊を隠しているスーの特徴は覚えていないと思っていたが…
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〈なんで わかったの?〉
〈うん? スーもわからないのか〉
〈泣きぼくろ?〉
〈それもそうだけど スーの顔は常に優しい顔してるからな 〉
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完次はスーの悩みをスパッと鋭い刀で切ってくれた。自分には特徴がないと思っていたスーにとっては、嬉しかった。自分の顔はあんまり好きではなかった。お姉ちゃんの方が泣きぼくろがあって可愛いと思う、だが、完次に言われて自分の顔も好きになれた。
「ウキちゃんは パパが作ってくれたスーパーロボットだもん 」
「そうだね」
スーはウキのこの言葉に対しては自信もって答えれる。
うちの完次は世界一だと。
・・・・クン・・・クン・・・
ウキは犬のように嗅いでいる。嗅ぐの辞めるとウキのテンションはMAXに上がって、その場で飛び跳ねている。その要因は、スーもほぼ同じタイミングで気が付いていた。
「パパが帰ってくる やったぁー」
完次が帰ってくるのだ。だが、スーは少し疑問に思のだ。帰るのが少し早い。嬉しいが何か不気味で嫌な感じを感知をする。だが、嫌な感じがするのにパパからは嫌な感じがしない、むしろ、ワクワクしている?
完次が何を楽しみにしているのかわからないが約一分後にくらいに工場に到着するのが分かる。それを確認したくてスーの体は疼く。スーの体が疼くのと同時に、ウキが動き出す。
「あぁああああああああ パパにナイショの物 隠してない 急いで隠さなきゃ 」
ウキは両手を広げて、飛行機のようなポーズを取り全力で地下へと走っていく。急いでいるのならその走り方は遅いと思うが、走る速度は幼い子供の速度ではない。
スーっとそよ風のように気持ちよい感触と共にもぅウキの姿はこの階層にはいなくなってしまった。
「待ってお姉ちゃん」
スーもウキと変わらない優しい風を起こしながらスピードで地下へと向かっていくのだ。