38話 ケイトVSハロウィン 1
・・・ さて これからどうすれば 良いのか ・・・
後ろにいまだに蹲っているトロロ・・・ケイトの立場から考えれば自分の足で立ち上がり、この場から立ち去ってくれるのを願うのだが、トロロという子は殴る蹴るの暴行を完次さんがかけつける前から受けていただろう傷が多くあり・・・出血も見られている。それに、ボロボロの服の隙間から見られるあざの跡・・・あれは定期的に暴行を受けていて証拠だ。
とりあえず、完次さんが遠くに逃げる時間を稼いで、この中年男性を迅速に倒してから・・・この場からトロロを連れて帰る。これが理想なのですが、この理想をあの魔法使いは許してくれるのか・・・それとも何かしかけてくるのか・・・いまだによくわからないが・・・とりあえず、しばらくはこの中年男性と戦って・・・
ケイトは、大量の血しぶきを浴びた。ケイトの血ではない。
目の前にいた中年男性が左右半分に何かで切られ、大量の血を辺り一面に吹きだしている。これは、ケイトがやったのではなく・・・そう、空の上で気色悪い笑みを浮かべていたハロウィンの仕業だということがすぐさま理解をした。
先ほどまで賑わっていた群衆も中年男性の無残な姿を目撃をして、嘔吐する者。ケイトと同じく血を浴びた者。その場がからそそくさと逃げていく者もいた。
ケイトものその者達と一緒にトロロを連れて逃げていきたかったが、そうもうまくいかない。ハロウィンは空からゆっくりと箒に乗りながら降りて、ケイトの前に降り立った。
「ねぇ あんなくっそよえぇ奴より ハロウィンちゃんと勝負しない? あなた暇そうにしてたしいいじゃない。」
ハロウィンはそう言いながら、指をパッチンと鳴らすと、中年男性の屍に炎が付いた。そのは炎は、一瞬で中年男性だったものを跡形もなく燃やし尽くした。
・・・ 最悪ね これは いや極悪 かもしれない ・・・
「ねぇ どうなの? いいよね?」
「返事をする前に仕掛けてるのなぜなの?」
ケイトはそう言いすぐさま後ろに下がると、ケイトが元いた場所が炎に包まれた。
「あらぁ なんで避けれたのかしら ハロウィンちゃんの詠唱なしの火の魔法【朝】」
ハロウィンは少々驚いた顔をしていたが、ケイトの目にはどこか嬉しそうに見えていた。
「あらら そんな凄い事だったのかしら その詠唱なしの魔法というものが ごめんなさいね 簡単すぎて気づきませんでしたわ」
「それ本気で言ってる? 詠唱なしよ 相手が何の呪文唱えたかわからないという点だけで魔法戦で大きな差が付く これ常識よ?」
・・・ なるほど 常識ね つまり 詠唱あるやつないやつがあるのね 前の戦いでハロウィンが使った魔法は炎の魔法【夕日】嵐の魔法【風渦】嵐の魔法【風輪】この3つは詠唱していた。 これは見たことがありるからある程度避ける事も対応できる。だが… ・・・
ケイトはチラッと今は亡き中年男性が居た場所を見る。
・・・ 一番警戒しないといけないのは、中年男性を真っ二つにした技… おそらく魔法。それに確証はないが無詠唱魔法。これは、対策しないすぐにやられるわね。 【朝】も炎に包まれる前まで見えない魔法 だけどこれは完治さんのおかげで助かりました・・・
先ほどの詠唱なしの火の魔法【朝】をケイトが避けれた理由。それは、ケイトがいた空間だけが異常に温度が上昇している事を、完次が取り付けていたサーモセンサーで気づき避けることが可能だった。
しかし、あの技はケイトが取れる情報では理解できないかった。
・・・ ハロウィンと戦うことになるのだったらルーネから魔法の事教えてもらえばよかった。 帰ったらすぐさま魔法の勉強もしなきゃいけませんね それにこの取れた情報をウキちゃんとスーちゃんにも見てもらって原因を解明してもらわないといけませんね ・・・
ケイトは【ココ】でルーネと通話しながら魔法の情報を得ながら戦おうとも考えたが、その考えをすぐさま辞めた。
集中。
目の前にいるハロウィンの一つ一つの行動の変化。そして、自分の身の回りの変化。すべての変化に気を配りながら戦わないと、スクラップにされそうな予感・・・いや危険だと警告を出されている。
実際にそうだった。ここまで考え出す間にケイトは多くの攻撃をぎりぎりのところで避けていた。火の魔法【火球】これは、下っ端の魔法使い達が使っていた情報があったが、そいつらより威力も早さも段違いに早く強かった。それに、下っ端が出していたのは火の玉は一つだったが、ハロウィンは一度に3つも出していた。そして当然のように詠唱なしで【火球】をポンポンと出してくる。
これを、ケイトは【火球】を【朝】と同様に温度の変化から発生場所を予測計算をし、そこから直線的に目標を目指すので簡単に避ける事ができる。しかも、これをトロロに当たらないよう自分の立ち位置とトロロがいる場所が直線的に結ばれないようにも計算して戦っている。
そして、さらにもう一つハロウィンは嫌な魔法を使っている。名前は知らないが、【火球】の着火地点から火の柱が3mほどそびえ立つ。永続的なのかわからないが最初に発動したものが、いまだに残っていることを確認すると〈永続的〉と考えることにした。これにより、ケイトの移動範囲が【火球】を使うたびに狭まっていく…
・・・めんどくさいわね それになんか弄ばれる気がするし あのニヤ顔もイライラする ・・・
♪
こんなしんどい戦いをしている最中に誰よ。まったくと着信をみてみると完次さんの側にいるチュームからであった。もしかして完次さんになんかあったのかと思い、集中しないといけないのだが念のためにチュームから着信に出ることにした。
着信の内容は最初はただの冷やかしの電話かと思い嫌ではあったが、自分の状況を伝えたすぐ後にチュームからのボイスメモが添付されたメールが届いた。
ボイスメモを確認すると、自分が愛している人声が録音されていた。内容は、しばらくハロウィンとの戦闘を続投してほしいのと頑張ってほしい事の要件だった。そして、40分間も戦っていれば完次さんが助けに来てくれることだった。
どんな内容でも完次さんの命令とならば即答で了承する。しかし、こんな私でも助けに来てくれることも嬉しさ半分申し訳ない気持でもあった。見捨てても構わない身でもあるのに、助けに来てくれる完次さんの偉大なるお心に感謝の気持ちでいっぱいであった。
・・・ 完次さんからたくさんのエネルギーもらいましたから さらに頑張りましょう まず、『頑張ってくれ』といった所をリピート そして再生。 これで15分頑張れますね そして 『お前を救うからな待っていてくれ』 これでを25分間リピート設定して これでやっと周り雑音から解放されるわ・・・
先ほどまでケイトの耳には、周りにいた群衆の悲鳴と、うめき声がいたるところに聞こえていた。
ケイトとハロウィンの戦闘を始めると、徐々に周りにいた大勢の群衆は巻き添えを食らていた。【火球】で燃えた者もいればその付近にいた人達はその後発生する火柱で燃えていく。そう、ケイトとハロウィンの周りには、今燃えている人や燃えきってしまった者がたくさんいる。
その燃えた者達のことを何とも思っていないケイトは、彼らのうめき声や悲鳴など ケイトにとっては雑音にしか聞こえないため静かにしてもらいたかったのだ。そこに、完次の応援メッセージ 電車が通る時のガード下からオペラ座の最前列でオペラを聞く気分へと最高の状態へ気分が変わっていた。
しかし、状況は最悪に等しい…40分間 これは、至福の時に感じる40分間は短いかもしれない。しかし、凶悪な力をもつ魔法を最大限に生かしている相手に40分間は物凄く長く 過酷 40分後に自分が生存しているかどうか。
完次さんから連絡があるまでおよそ10分間、メイドであるケイトは必死に抵抗をしていたが、メイド服はボロボロになり、足首まであったスカートは膝上まで短くなり、長袖だった上着が半袖になっていた。
そして、最初は楽しそうに笑っていたのに・・・ハロウィンが退屈そうな顔になっている。
「あなたさ? 本当にそれで全力? まったく攻撃もしてこないし まぁこれはハロウィンちゃんが強すぎるってこともあるけど なんか期待外れというか超がっかりなんですけど あなた この前戦ったやつに少し似ているから期待していたのに 」
「あら どうしてあなたみたいな人の期待に答えないといけないの」
「まぁいいや ハロウィンちゃん 頭もいいからあなたが少しでも本気を出せる方法を見つけたからね」
「?」
「あなた メイドでしょ? あなたのご主人様 殺せば・・・」
ケイトはハロウィンの話が終える前に、ハロウィンの懐に入り素早いをハロウィンに放った。これをハロウィンは何ともなかったのように受け止めてそして悪魔みたい笑みを作り始めた。
ケイトの攻撃は決して遅くはなかった。完次がもし目撃していたら目に見えなかっただろう。それぐらい早かったのだ。
・・・ 私の接近戦での攻撃速度は、セラさんに次ぐ二番目・・・ハロウィンに私の攻撃を受け止められても驚きはしない。前回の戦いでセラの攻撃を無傷でいたハロウィンから考えれば遅い攻撃かもしれまませんね。・・・
「あら、行儀の出来てないメイドさんね これはご主人様の指導不足ね きつーーーくお仕置きしないといけないねぇ」
・・・ あなたのせいでどれだけ完次さんが苦しんだと思うの・・・あなたのせいで ・・・
「あなたのせいで私はどれだけ苦しめればいいのですか? 私はあなたの事を嫌いです 完次さんが決して認めても私はあなたの嫌いで殺したいほど憎みます。 あぁ もぅ 私情を持ち込まないってのは大変ですね もぅいいですかね 本当は完次さんにプライベートで私の初めてを見てもらおうと思いましたけど辞めにしましょう もぅ完次さんのメイドではなく・・・完次さんを愛するモノとして・・・戦います」
ハロウィンに捕まれていた手が解放された。なぜか。危険を察したのか。それとも面白いものを見れるかもと思い離してくれたのかもしれない・・・だが、今のケイトにとっては どうでもいい だって今から自分がしたいことをする ただそれだけ
【Change Private mode】
ケイトはその場でクルクルと回ると ポニーテールの結び目を解かれ美しく長いピンク色の髪が現れる
メイド服だったものが肌が薄く見えるセクシーなネグリジェを姿になった。
「あら いけないこれは 完次さんのお誘いがいつでも来てもいいように この格好を最初にしてたけど今は違うね」
ケイトはその場でもう一度くるっと回転するとセクシーなネグリジェから全身迷彩服に変わり髪型も長い髪をむすびお団子のヘアーにしていた。
・・・自分がしたいことは 完次さんのために 愛する完次さんのために 死にもの狂いに頑張り愛する事 完治さんがしてほしいこと全てする メイドの時もそうですがその気持ちはプライベートでも変わりません。 私のすべては完次さんの物です でも、約束は守ります トロロと40分後会える事をお待ちしてます ・・・
ハロウィンは十分な距離を置いた。相手の様子状況が変わったので整理をすることにした。ハロウィンは見かけや言動で心赴くままに行動しているように見えるが実は違う。しっかりと状況の変化を見ている。そして、ある程度考えや今後の行動を決めた後自分自身が楽しむことを考えている。
・・・ 相手の攻撃手段が遠距離な場合。相手の攻撃が遠距離だったらいつも通り得意の魔法攻撃で交戦すればいい。さすがの天才ハロウィンちゃん。ぎゃああくに 相手が近距離主体だった場合。接近しようとする相手を、魔法で撃ち落とす。でも、最近油断して攻撃を受けた事があるから反省反省。ダメハロウィンちゃんね。 さっきの攻撃は近接攻撃・・・ならまた近距離攻撃で来る? でも無理と判断するのが得策ね 接近戦しようとする馬鹿はたくさんいてね ハロウィンちゃんの可愛い目はその馬鹿どもの攻撃を一度もく受けた事はないわよ そうなると遠距離攻撃できそうよね 遠距離主体で攻撃してくるのは同じ魔法使いか弓兵くらい・・・弓兵なら弓をもっているはずないということは魔法使い? ・・・
クスリっと笑う。自分自身に自信がないと言えば嘘になる。自分に歯向かう者達と多く戦い、そして勝ち続けている。しかも、ササンドラ王国の軍隊一つで魔法使い集まりである魔道軍の総隊長をしている。ササンドラで最高の魔法使い。
・・・ まぁどうでもいいササンドラで随一の魔法使いに遠距離攻撃なんて馬鹿げている… だが、念には念を置く 先ほどの攻撃・・・決して避けたり防げないものではなかったが、天才ハロウィンちゃん以外ならやられているものが多い。あれからかなり速度を上げて攻撃を仕掛け来た場合を想定して 相手を一撃で葬る十分な火力が出せハロウィンちゃんの中で一番早い魔法攻撃が撃てるように距離を置き 待ち構えるだけ ・・・
〔ここまで考察したらあとは楽しむことをだけね。ハロウィンちゃんの勝利。これは確定ね。]
口がニンマリと溶けるように笑い。それは誰かから見ても不気味な悪魔的な顔を見せていた。
「ねぇ なにそれ? なにそれ? 教えて 魔法? ねぇねぇ なにそれ 教えてよ ねぇたら 早く教えないと死んじゃうよ 」
嬉しくて少し口調が早くなっている。自分でわかっている。でも嬉しいのだ。久しぶりにほねがあるやつとたたかえるのだから
「ねぇねぇ それで見た目だけ変化しました。 なんて言わないよね期待していいよね?」
「そうですよ。見た目だけなんですがそれが何か問題でも?」
「はぁ?」
ハロウィンの笑みが消えた。先ほどの興奮が嘘のように腹の底から湧き上がってくる苛立ち。
大切なものを奪われそして目の前で壊され、そして笑われた青年みたく『怒り』を隠しきれないような顔をしてしまう。
「 あなたもあいつらと同等ですね 見た目だけで物を判断する。 少し変化しただけ強くなったとか 外見がイケメンや美人なだけで性格まで自分の理想にするとか本当凡人 せっかく心という素晴らしいモノがあるのに 人はなぜ外見で判断するのか? 本当理解できません」
メイド服の女はため息交じりに呆れた顔をしている。実に不愉快。このハロウィンちゃんを舐めているの?
「なに?ハロウィンちゃんにお説教なの?まだこれといった一撃も与えてないのに 何上から目線してんのよ 」
そう一度も攻撃を受けていない。ハロウィンはここ数か月まともに攻撃を受けた事がなかったのだ。常に後方にいたからではない。時には前線で戦い、時には強者がいると聞きつけてその者と戦ったりもしたが その者達はハロウィンに一度も触れるなく命を落としていった。
しかし、そんなハロウィンでも必死覚悟で戦わないといけない相手を知っている。ササンドラ王国の騎士であるタリック。上位貴族であるメジール家の長男カイル。そして司法の番人であるアイール。この三人とはハロウィンはできるだけ戦いたくはなかった。そして、絶対に勝てないと思っているのがササンドラ王国の現国王ルジール陛下。国王には絶対に勝てない事を目の当たりにした。タリック、カイル、アイールと手を組んで陛下に手合わせしてもらったが、一度も陛下に膝をつかせることができないかった。だから、ハロウィンにとってもこの四人は別格で唯一自分より強者であることを認めている。
そんなハロウィンの頬に何かがはじける音共にスッと何かが通った気がした。それから頬から血がにじみ出てくる。
油断?していない相手から一瞬も視線をそらしりしていない。
魔法? 傷跡から想定すると風系統の魔法ね でも相手詠唱はしてない・・・無詠唱の風系統魔法でこの距離で撃てる魔法なんて私使えない・・・いや違う。私が使えないのではなく 私が知らない魔法? それとも魔法使いにも見えない魔法?
「何これ?」
「何って あなたに攻撃をしだだけよ もちろん殺そうとしてね」
「違う どんな魔法を使ったのかと聞いているの」
ハロウィンは陰で誰にも気付かれないよう魔法について勉強をしていた。これは嫌々ではなく、あらゆる魔法を知り使いたいからだ。ササンドラ王国に存在するであろうすべての魔法関連の書物を目を通した。
だが目の前にいる相手は、自分の知らない魔法で自分に傷をつけられたのだ。つまり、これはササンドラ王国で誰も知らない魔法となる。
「さぁ これを魔法と言われて少々驚きました これは魔法というか拳銃なのですがまさかご存知ないのですか?」
「ケンジュウ?」
「拳銃ですよ うーん武器って言っても 納得してくれなさそうですから あなたにとってわかりやすく言うと風の魔法かしら」
ハロウィンはケンジュウという言葉を頭の中で一生懸命探したが出てこなかった。しかし、相手がケンジュウの説明をしていた時、両手に持っているモノを見ていた。あれがおそらくケンジュウね。あれを奪うか壊せば・・・私にも理解できる。
やっぱこのメイド楽しい。心からそう思う。いつぶりだろうこんなに楽しく。相手と戦えるのはいつぶりなんだろう。
ハロウィンは、次の魔法の準備をすることにする。
〔私が魔法戦で負けるはずがないのよ。]




