37話 再戦と男
完次の眼には翼が生えた悪魔のようにハロウィンが見えていた。完次の足と体はがくがくと震え鎧までもカシャカシャと音を立ていた。。
もし、ここに鏡があったのなら、自分の顔を見て驚くだろう。きっと青白くその場に倒れてもおかしくない顔をしているのだろう。
「か・・・かん・・・カンジ・・・・完次ってば」
完次は腕を引っ張委られているのに気が付いた。ケイトと中年男性の喧嘩を見に来ていた男たちの群衆より小さく埋もれそうになりながらも完次の腕をはずさないように掴んでいるチュームの姿が見えた。
「なんて顔をしているの こっち こっちに来て 【門】使って完次を逃がすようにケイトねぇから 連絡来たの さぁ逃げるよ」
完次は、チュームに腕を引っ張られながら群衆の外側へ、ハロウィンに背を向けて歩き始めていた。
群衆から逃れて人気がない方向に向かうのと同時に、悪魔から逃れていくのに自分がどんどん気持ちが楽になってる自分に気が付いた。
良かった・・・・今回は無事に帰れそう・・・
無事?・・・・ケイトを置いて?
助けるはずのトロロを置き去りにしてか?・・・
ここで自分のみじめな姿に気が付いた。トロロ助けようと必死であの中年男性の間に入ったけど・・・結局ケイトが守ってくれて・・・そして今も戦っている。
そして自分は少女に手を引かれて安心している。本当にみじめな奴だ。
もし、祖父母にみられていたら・・・
”助けに行って 女に守られて逃げた? どうして戻らない?”
・・・怖いんです・・・・あの魔法使いが・・・本当に怖いんです・・・・
”怖いなら逃げてもいいのよ? でも逃げ続けるのは良くない だから一度逃げたなら立ち止まって考えなさい そして、いろいろ思い出しなさい”
・・・常にやさしい祖母・・・一度立ち止まるか・・・・
チュームは先ほどまで軽く自分が先導をして歩いていれば付いてきた人が急に止まったことにより少し後ろに引っ張られていた。
・・・考える。・・・そして思い出す。・・・
・・・そう言えば・・・祖父が言って言ってたな
”いいか もし自信を無くしたり 己を信じられなくなったら この言葉を思い出せ・・・○○○”
”ふふふ・・・あなたは本当にその言葉好きですね”
”うっうるさい いいじゃろ”
”完次この言葉はね ある昔にやっていたロボットアニメのセリフなのよ ”
”!!!”
”おじいさんね 完次がロボットを作りたいって言ったとき物凄く嬉しがってたのよ”
”黙れ 黙れ ・・・完次 『○○○』 これだけは忘れないことだ”
『良い事だけ考えるのは愚か者 悪い事だけ考えるのは馬鹿者 良い事と悪い事を両方考えた時にようやく人並 そこから自分の答えを出す事で個性が産まれる』
だったけな?祖父の見解は確か・・・
悪い事を考えている時は良いことを思い出しいい方向に考え直す 良い事に向かっている時は失敗した事を思い出しその失敗をしないよう良い状態を保つ事 そして自分なら何ができるか
良い事か・・・
ここは・・・前いた世界みたく・・・・誰かが評価する所ではない・・・・
ロボットは存在しない・・・・つまり・・・俺が・・・基準を作ることになる・・・
この世界ではロボットは俺にしかできない・・・プレッシャーかかるな・・・
完次は首をブルブルを横に振り、再び良い事だけを考える事にした。
プロトはもともと異世界のモンスターを主軸に作ったロボット・・・・これが完成をしたら・・・世界初?
いや・・・二つの世界の世界初だから・・・なんていうだろう・・・まぁいいや
そして、ケイトとトロロを置いて行ってしまったことだ。これは、置いてしまったことは後で謝るしかないな。そしてあの悪魔をどうすればをいいのだろうか。
あの時に感じたのは魔法はすごい事と恐怖そして・・・魔法に勝ちたい欲をもらった。その為に作ったのだろう。プロトに乗れば一分?
・・・いや10秒くらいだな・・・一分はいい方向に考えすぎている。
10秒あればケイトとトロロを逃がす事ができる?・・・いや信じている・・・ケイト、ルーネそしてチュームがいる。やってくれるさ。
チュームは驚いていた。
先ほどまでびくびくと震えその場に倒れそな顔をしていた人の顔ではなく少し男らしい顔つきになっている。
「なぁ チューム・・・魔法って凄いよな」
・・・確かに力として強大かもしれない・・・魔法の知識がないチュームが見て思うくらい圧倒的なのだ・・・あの魔法というモノが・・・今の完次と私たちの力を合わせて勝てるかどうかわからない。もしかしたら負けているかもしれない。
だが、いつも少し自信がなそうな顔している完次が・・・男になっているように見え、自分を作ってくれた人・・・そして憧れている人が男になる瞬間を見れてチュームは非常に嬉しく思うのと完次が自信をつけるチャンスと思っていた。
「私は完次の方が凄いと思っている」
チュームは静かに完次の手を握る・・・
「この手は・・・魔法の手・・・・あんな奴なんかにはできない魔法を持っているよ」
この言葉に嘘はない チュームはハロウィンの強大な魔法を見ても驚かなかった・・・それよりも完次の手からできる物の方がチュームは凄いと思うのだ。完次に憧れて隠れて完次が作ったロボットを似せて作ったりしていた。しかし、できたのは完次の作品とはどことなく違う物。素人の眼から見ればほとんど差がないように目に見えるがチュームにとっては大きな差に見えていた。
チュームはもう一度完次の作品を見てみると完次の作品は全てが丁寧に作られおそらくこの時にできる全てを出し切っていたモノだった。部品の数々はおそらく廃品だったものを一度磨き上げ、そこらから欠けているモノを完次が丁寧に修復をしている。作り方はこれといった特徴はないが、基本に忠実に教科書に載るような作り方をしている。一つ一つ丁寧に作られているのを見ていると完次の愛情がこもっているように思えた。そして、それが自分自身の体にも入っていると思うと物凄く嬉しく思っている。
「そうか・・・魔法の手か・・・ありがとう。嬉しいよ。言ってくれてありがとうな」
チュームは嬉しかった。完次がありがとうと言って見せてくれた笑顔は今まで見た中で一番笑顔みせてくれたのだ。
♪
携帯の着信音みたいなのがチュームの耳に入る。いつもは別に嫌でもない着信が、今回は不愉快に感じた。
誰が至福の時間をつぶしたのか確認を取ると・・・・着信の相手はルーネだった。
--- チューム 完次 連れて 逃げて ---
これが完次がほしがっている現状チューム達だけできる通信手段【ココ】だ。チューム達は実のところ直接会わなくても会話ができる。3キロ以内ならこの【ココ】で連絡がとれる。そして、相手が通話に出ない若しくは出れない状況になっていても文章として相手にメールとして送ることも可能だ。
完次がこの【ココ】を入手したいと提案した時、困った理由は今までのメールやり取りだ。主に完次の日常報告なんだが、ひどい有様になっている。作業中の完次、寝ている時の完次。悩んでいる完次。設計図を書いている完次。などといった完次の写真が添付されていることがあり、それに対して、エイト達の歓喜のコメントが載せられている。それらを見られることになると恥ずかしかったのだ。現在グループチャットを見せないような手段を考え中なのだ。
--- 完次はここに居るから安心して でもどうして? あの女がいる事は知っているよ ---
--- その人 めんどい とりあえず 添付した写真 見て ---
チュームは添付された写真を見てみるとそこには<オリン>にある道の写真が載せられていた。チュームはその写真を見ても普通の道にしか見えないなかった。
--- 普通の道の写真の見えるけど ---
--- 次 動画 少し早送り 見て ---
ルーネから送られてきた動画を2倍速で見始める。その動画は同じ場所から撮影されているものだった。特に変化がないと思っていたが・・・・何かが動いているように見えていた
チュームはその動いているように見えた部分を倍率をあげると道に書かれている白線がゆっくりと進んでいることが確認できた。
--- 何かが 動いてる? ---
--- そう 疑問 でも 原因 わかった これ魔法陣の線 ---
どうやら、ルーネはこの動いている線が気になって調べてみたら 魔法陣がゆっくりと描かれていることに気が付いたのだ。
--- それで どんな魔法かわかったの? ---
--- 不明 でも 強大な魔法 どの本 乗っていない 新魔法 ---
ルーネが知らないとなるとうちらの中で知っている人がいないに等しい。ルーネは、一度読んだ本など絶対に忘れず一字一句記憶しておくことが可能。もちろん完次の作品の設計図も前いた世界で作られた物は全てルーネは記憶しいる。
--- だから 逃げたほうがいいのね ---
--- うん 完次 安全第一 ---
チュームは少々悩んだ。目の前で男になった完次に対してこのことを伝えるべきかどうか。確かに安全第一で完次と共に帰ることが一番の策だ。しかし、これから挑戦しようしている人に伝えるべきか・・・
・・・こういうのはケイトねぇに任せようっと・・・
--- ルーネ ケイトねぇに連絡してみるから待ってて ---
チュームは考えるの辞めて、ケイトに丸投げにすることにした。チュームは、ケイトに連絡をし、呼び出し音がチュームだけに聞こえた。
--- 何ですか? 今物凄い忙しいだけど ---
電話に出たケイトの声はかなり不機嫌だ。かなり忙しいのか最悪な時に連絡を入れてしまったと思った・・・
--- あっ ケイトねぇ もしかして中年男性に負けそうなの? ---
--- それはないです 瞬殺できるけど 完次さんの逃げる時間を稼ぐために 力抜いて戦っていたのに 最悪の展開 あのゴミの血は付くわ もぅ本当最悪 新しいメイド服に着替えて完次さんの匂いを付けたいところよ ---
ケイトは、完次以外の男性に興味はまったくない。だから、ケイトは男性と戦う時は手袋するか、ゴム手袋する。手袋する時は興味がない男性と触れる時。ゴム手袋の場合は、それ以下ケイトが絶対に触れたくない時に使う・・・・つまり中年男性は絶対に触れたくなかったのだ。
--- 最悪の展開って・・・聞いてもいい? こっちもかなり最悪の展開も聞いてほしいだけど・・・ ---
--- ハロウィンと今戦っている ---
--- えっ ---
完次の安全を確保できたからケイトに中年男性をチャチャっと倒してもらった後、トロロを救助してもらう。そして、チューム達がいる場所を集合にして、ケイトとルーネ着てもらう。ケイトが、もしこちらに向かっている間に、追手が来た場合を想定をしてこの場から速離脱できる準備をする。これがベストだと思っていた。しかし、状況が最悪から極悪に変わった。
まずい・・・これじゃあケイトねぇ達と合流ができない そして、トロロの捕獲もできない。・・・これはどうすれば・・・
「チューム なにか問題でも起きたのか?」
チュームは再び驚いた。なぜそれに気が付いたのか。私達はロボット。思っていることが顔に出ることはない。
笑う時は自分から笑うように顔を動かし、驚いたりした時は驚いたように顔を動かす。これはチューム達全員も同じはずだ。だが、チュームはその機能をほとんど使うことがない。今回も同じく表情を動かしてはいなかった。
「どうしてわかったの?」
「簡単だよ 顔が困っていたからね。 チュームもすぐ顔にタイプだな ケイト達皆顔が出るタイプだと思うのだが・・・違うのかい? 」
やっぱり完次には驚かされってばかりねと思うと同時にチュームは再び考えていた。完次に言うかどうかを・・・
だが、今まで考えていたのが馬鹿らしく思えるぐらい決断は早かった。チュームは完次に伝えることにする。
完次の意見ならチュームも他のメンバーも納得するはず。そして、完次に再び命の危険が及ぼうとしたら・・・うちらが犠牲になればいい・・・これは前にエイト達で話し合って出した結論であった。
「実は・・」
チュームは完次にすべて伝えた。ルーネから情報の魔法陣のこと。ケイトがハロウィンと現在戦闘中であること。
「なるほど・・・答えは簡単だ。ケイト達全員連れて帰る。それだけだ。<オリン>にいる人達に申し訳ないがこの街の人全員を助け出すことは無理だ。こちらも巻き込まれた身だ。怒るのならあのハロウィンに怒ってくれ。それに、このことを<オリン>の人達に報告したら騒ぎ大きくしたらてケイトの身が危ない。ハロウィンは、何をするかわからない所も怖いからな。だから、ハロウィンに極力ばれないように行動する。そして、今回の目標はケイトとトロロの救助。そしてケイト、チューム、ルーネ、トロロ全員揃って無事に帰ることだ。」
「了解です。」
この人が望むこと全て叶える。ケイトやエイト達に指示を出されることはあったが、やはり完次が指示をくれるとやる気が全然違う。力というか、なんだろう。こう漲ってくるモノがある。
「これから指示をだすから【ココ】で伝えてほしい。まずルーネからだ。ルーネはとりあえず買ってきたものをすべてチュームに預けてから、トロロの救助活動。救助成功した後、再びチュームの所に戻りトロロを預けケイトの支援。これを全て頼む。一番動くかもしれないが頑張ってくれ」
チュームはこれをボイスメモにしてルーネに【ココ】で送り付けた。
--- 了解 ---
ルーネから了承の確認が取れたことを完次に伝えた。
「次に、ケイト。ケイトは、ハロウィンと戦闘をそのまま継続。申し訳ないが、そのまま頑張ってくれ。私は40分ほどで、戻ってこれると思う。そして、お前を救うからな待っていてくれ。」
こちらルーネと同様にボイスメモでケイトに送り付けた。
--- 御心のままに そして感謝の言葉 ---
こちらもケイトから了承が取れたことを完次に伝えた。
「そして、チューム。チュームは、まず私を工場の地下四階に送ってくれ。それから、ルーネの荷物を受け取り工場の図書室に置く。 その後再び 私の元に来て工場から<オリン>付近に【門】を作ってほしい できるだけ<オリン>に離れずそして人目に付かないところに作ってほしい そこから悪いが<オリン>に戻り、トロロの安全確保を頼む。 もし、トロロの安全確保が先にできそうだったら先に工場に送っても構わない。そこはチュームの判断に任せる。 負荷が大きいかもしれないが頑張ってほしい 頼めるか」
当然答えは決まっている。チュームは完次の指示ならそれを完璧にこなすまで・・・
「任せてね」
大きくピースサインを作り完次に向けた。そして、腕をから支柱を取り出し完次のために工場地下四階行きの【門】を作る。
「よし 行ってくるわ。」
完次は【門】に入っていく。