30話 種類と小麦色
完次は、ネマン達とエイトを送った後工場に戻った。工場内の一階には朝食を作ってくれているクラリスと村の女子組とケイトの姿が見え、ウキとスーは食器を並べていた。こっちの世界での朝食は、パンで野菜などを挟んだ食べ物〔以後、イリーブ(サンドイッチみたいな食べ物)〕が主流で、<オリン>に買い出して以降、朝食はほとんどイリーブを食べていた。日本人である完次にとっては、イリーブもおいしいが味噌汁とご飯が食べたかったが、異世界では、米はあるが味噌がなく、米は栽培している最中であと数週間で狩り入れの時期が来るらしいが、味噌はまだまだ先のようだった。いつか、味噌汁とごはんを朝食として食べれるのを望んいた。イリーブを食べていると、ウキが完次の顔を覗き込んできた。
「パパ 今日は何をするの?」
「あぁ とりあえず昨日話した通りロボットの脚部に作りかかろうと思っている 設計図は概ね完成しているから大丈夫なんだけど鉄とか銅などが不安なんだよね もぅガラクタとかで足りるかどうか・・・ 」
「それなら問題ないよ。私達に任せろ。」
胸に手を当てて、自信が満ちあふれているセラの姿をがいた。
「セラさんの言う通りですね そうですね・・・ちょうどいい機会ですし私達について説明をしましょう」
ケイトはエイトの代わりにセラ達のリーダーをしていた。
「まず説明するなら私からだね。完次が作ってくれた私セラは、採掘と伐採などが専門で 麓に来てからほとんどこの鉱山にこもり鉱石を掘っています。そして、この鉱山に製錬所を作りたくさんの鉄などの材料を作りました。」
(セラは、鉄などの材料を作っていたのか・・・んでいつの間に精錬所を作ったんだ?)
完次はいろいろと質問しようと思ったがぐっとこらえた。
「次 私ね」
パーカをかぶり本を読んでいたルーネが本を閉じて立ち上がった。
「私は主に生産をやってる セラ姉が作った材料を元にして様々部品を作ることもできる 部品わからなくても完次が知らなくて本に書いてあるものだったら作れる 完次が作った設計図に書いたもの 他の人の設計図を見ても作れる 私 完次が望んだものなら何でも作れる・・・ように頑張る・・・」
ルーネはそういい、深々とフードかぶり一冊の本を完次に渡した。題名[ルーネの説明書]と書かれた。広辞苑並みの厚みがある本を渡された。ルーネが言うには、口では簡単に説明したからこれを読んでほしい事と注意事項があるからよく読んでほしい。
完次は説明書とか本とかはよく読んでいたが、この本の厚みには正直驚いていた。
「んじゃ次はウキちゃんとスーだね。」
ウキはその場で元気に立ち上がり、スーは物静かに立ち上がった。
「ウキちゃんとスーは組み立てをしてるの。 ルーネお姉ちゃんが作った部品やパーツをウキちゃん達が組み立てするの んでこうやって こうしたり こうするの。 でね あっという間に完成するの」
ウキは口で説明しようとしてたが途中でジェスチャーが入っていた。その動きは踊りのように見えて、かわいかった。
「スーは ウキと同じことしてる」
ウキとスーは常に二人でいて作業していて、どのように作業したかどのように作業しているかわからないが、にんまりと満面の笑みを浮かべながら完次の顔を覗き込んでいるウキの眼は褒めてほしがっていた。
完次はウキの頭をポンポンと数回触るとウキはさらに嬉しそうに喜んでいた。その様子を見て、ちょっとすねているスーの頭をなでるとと喜んでいた。
「キィイイイイイイイイイイイイイイイイイ」
悔しい声を発したように聞こえたが、そちらの方を向くと大人しいマーニャの姿がそこにはあった。
「な・・なによ・・・」
髪をいじりながらそわそわしていた。服はいつも通りお姫様みたいな姿をしていて、口調もそこからなのかお姫様口調でよく話していてた。
「マーニャちゃん パパに説明しないと」
ウキに注意されさらにそわそわしているマーニャはお姫様には見えなかった。
「いい聞きなさい。 私マーニャは塗装担当してるの 完次様が作ったロボットに色を付けたり、コーティングなどが私がやってるの。」
「完次様? なんで俺の事 様付けしてるの 呼び捨てでいいだぞ」
「うわぁ そにょ あにょ・・・うぅ・・・」
頬がみるみる紅潮していき、完次でもわかるくらに顔が真っ赤になった。
「とりあえず 私がこの工場とかの色付けしたりしてるの 色には特別な力があるから 青は心を落ち着かせたり 緑色は目の疲れとか緊張感を和らげる効果とかあるからね いいね それと・・・・さっきのことは忘れないさい わかった?」
マーニャは赤面したまま指を何度も完次に刺して、注意を促していた。「あぁ わかった」と返事をするとマーニャはこちら何度も見ていたがその目が睨んでいるようにみれたので完次は触れないようにした。
「そして次私ですね 私は製造ロボットではないため手伝うことはほとんどありません 申し訳ありません ですが私ケイトはメイドロボット 生活等では完次さんには絶対に不便にさせない自信があります」
工場を常にきれな状態で保っているのはケイトのおかげであった。完次は、ケイトといる時は何不自由なく過ごしていることを思い出した。ほしい部品などがあったらケイトなら確実持っていた・・・だから本当に完次が望むものすべてをケイトが持っていそうだった。だが、工場内であればケイトは完次の側にいて、トイレや水浴びするために外に出ようがどこでも付いてくるのが少々嫌ではあったが慣れてきてしまった。唯一、ケイトが水浴びと食事の準備をしている時は完次が一人の時間であり、貴重な時間でもあった。
「私は、ほとんど説明しなくてもいいと思うけど、【チュームの試験的七十一式電伝比凜開け門】で縦横20mまでなら指定した場所に何でも運べるから よろしくね。」
チュームはマイペースって言っていいのかわからないが、自分が話すだけで話してこの場を去って行った。
エイト以外事はだいたい理解した。そして、エイトのことも大体の目星を完次の中ではあった・・・と言うか願望であった。
「で、完次はうちらの事を理解したことでどう思った?完次の夢はさらに近づけそう?」
「ああ できる 今から始めよう いや今すぐ始めたい セラ早速だが鉄と銅とボーキサイト(アルミニウム)を取ってきてほしい・・・大量にだ。うーん、そうだな それぞれ一応200トンくらいほしいかな この鉱山にあるかな」
「あるある 余裕よ んじゃ早速 掘ってくるわ とりあえず昨日までに掘ってある物そっちに回すから作業しちゃっていいよ んじゃ行ってくるわ」
セラは<オリン>でエイトが買った服を着ていた。下は黒のズボンで上は半袖を着ていて、男が着るような服を着ていた。
「ん?その服で行くのか?」
「あっそうでだった。」
セラは上着を、その場で脱いだ。とっさのことだったので見てしまった。腹筋は割れてはいないが、小麦色の肌によりかなり引き締まって見えていて、胸はサラシを巻いていたが隠しきれない大きさの胸をしていた。女ってみんなあんあ体をしているものか?それともセラが特別なのか?エイトもそうだったな・・・美しいしなやかな体。そして、今のセラの体は・・・そう。
「魅力的だ・・・」
思わず声に出してしまった。そして、セラが気づき完次はとっさに背中を向けた。
「着替え終わったぜ」
振り返ると、黒のニッカに黒に黄色の蛍光色が入っている長袖の作業着を着ていた。もちろん上着のボタンはしっかりと留めてある。安全ためだ。しょうがない。
「んじゃ行ってくるわ」
セラは安全第一と書かれたヘルメットをかぶって、鉱山に向かっていった。その後姿は、先ほどまで魅力敵に見えた女性ではなく、今から家族のために働きに行くお父さんのような大きな背中に見えていた。
(うん やはりセラはかっこいいな)
「完次さん それで私たちは何をすればよろしいですか?」
「おぅそうだった。その巨大ロボを作る前に少しお手伝いロボ作る。」
「 はい。わかりました。それではそのお手伝いロボを作りましょう」
完次はちょっと気がかりになっている。ケイトが若干だが落ち込んでいるように見えたのだ。顔色、話し方は変わってはいない。完次以外なら気にならないだろう。だが、完次は気になった。
「なにか・・・考えてる?いや・・・何か思っているのか?」
完次はケイトより身長が高いため少しかがむような体勢でをケイトの顔の変化を見逃さないようにのぞき込んだ。
(なんだろう勘違いか・・・いや違う・・・自分を疑うな・・・おかしいと思ったらその原因を突き止めろ。変化を感じたのは 確かお手伝いロボを作るって言ってから変化したんだよな・・・・うーん こういう時は相手の立場になって考えろ あっ・・・もしかして。)
完次はケイトの肩を強く握った。
「ケイト 仕事を取れると思ったのか?」
ケイトを驚いた顔を見せて真顔になって答えた。
「・・・はい その通りです。」
「それはないから安心しろ」
「それはどういう意味でしょうか?」
「今から作るのは確かに俺やみんなをお手伝いするロボだが、ケイトを超えることはないよ というか無理だね」
「それはどういう・・・」
「うん?エイトにも言ったけど ケイト達は俺の最高のロボット達だからね・・ただのお手伝いロボじゃ無理だね この世界を熟知していろんな知識と技術が今よりもっとできるようになったら作れるかもしれないね・・・いや作ってみたいな 巨大ロボも夢のだけど ケイト達を超えるロボも作りたい気持ちもあるな」
いつもはお姉さんみたいケイトだが、クスクス笑っている姿は少女のように笑っていた。
「それは無理ですよ完次さん 私も頑張りますから 」
「はいはいウキちゃんも頑張るー」
「スーも頑張ります」
ウキはその場でピョンピョンと飛び跳ねてながら手を挙げていた。スーはその横で小さく手を挙げていた。
「頑張ります」
ルーネは顔の前に両手で力こぶをつくりポーズをとったが、完次がルーネを見るとそのポーズを取りやめ、フードを深くかぶり小さく縮まった。
「まぁ それでお手伝いロボを作ろうと思うだが。ケイト達に見てもらいたいことものがある。」
完次は、ケイト達にそう伝え自室からある物を取りに行った。部屋に入りその物を数度確認をし、自信を持ち少し笑った。夢に近づくのがわかり、帰りは小走りになり、そして走っていた。