27話 人とロボット
「そしたら・・・・完次さん 肩紐をお願いしてもいいですか?」
「えっ・・・・???? エイト・・・自分でできないか?」
「できません・・・結ぼうとするとたぶん・・・胸が見えてしまいます・・・」
完次はエイトのドレス姿を思い出していた・・・エイトの美しい体・・・男ならにやけてしまう・・・
完次は本当ににやけてしまう前に顔を二、三度顔を叩いた。
「わかった・・・・こっちに来てくれるか?」
エイトがこちらに歩いてくる音が耳に聞こえると完次はドキドキしていた。そして、足音が完次の目の前で止まると、目の前に今まで見た中で美しい背中があった。美肌であるエイトの肌をさっきまで触っていたなんて考えると完次も顔が少し赤くなっていた。
そして、完次はエイトの首筋から二本の黒いドレスの紐と綺麗なうなじが見えていた。完次の手は震えながらも二本の紐を取り、首の後ろで蝶々結びをしようとしていた。
「完次さん 一つ質問してもいいですか?」
震えてる手で何度も失敗してる蝶々結びがばれたと思い、さらに動揺して少し裏声で返事してしまった。エイトはクスリと笑っていた。
「・・・・完次さん なぜ私の事を心配してくれたのでしょうか? 私は・・・ロボットです 痛みなどがありません 怪我をしても平気です・・・・ なぜでしょううか? やはり私が出来損ないだからですか?」
「やはりってどう意味だ?」
完次は先ほどまで動揺していた手がピタリと止まり、何度も失敗していた蝶々結びも成功していた。普段の声も低い完次だがさらに低い声でどこか怒ってるようにも感じ取れる声であった。
「いや・・・その・・・」
エイトはその変化に気が付き動揺してしまった。
「誰かに言われたのか?」
エイトは首を大きく横に振っていた。
「あの・・・完次さ・・・」
「何でそんなことを聞くんだ?」
エイトは完次に少し落ち着いてもらおうと完次の方へ振り向いたのだ。完次の眼は真っすぐとエイトを見ていた。。完次の眼は犯罪者を取り調べしている刑事のような眼をしていて、エイトはただ完次の質問に答えるしかないような状況になっていた。
「それは・・・」
「それはなんだ?」
エイトは悩んでいた。ここで、「私が出来上がった時に悲しい目をしていたので」と質問していいのかと悩んでいた。怖い・・・質問してそれはお前が出来損ないだからと言われると思うと怖い・・・エイトは眼が熱くなり視界がぼやけてきたのだ・・・エイトはあと少しで大粒の涙がこぼれそうな状態になっていた
完次は一つ息を吐いて話し続けた。
「もし誰かに言われたなら話してくれ 俺の・・・・大事な人に何を言ってるだって言いたいから」
(大事な人?)
大事なロボットやモノって言われえるだけでも嬉しいのに人と呼んでくれた事に驚いていた。
「エイトは大事な人だよ まぁロボットだとわかっているだが 毎日エイト達を過ごしているうちに人にしか見えなくなってね」
完次はニコニコと笑いながらそして少し恥ずかしそうだった。
エイトはケイト達が話していた事を思い出していた。完次は私達を本当に大切に扱ってくれていた事、時には話しかけてくれた事もあったということを話していた事・・・
「こっちの世界にきてから エイト達が話したり、食事したり、風のように早く動いたり、化け物や悪い奴等を倒す事もできようになっている 俺が作り上げた時なんかより大分成長していてな それが嬉しくて ロボットっていうより一人の人として成長しているのかなって今は思ってる 前の世界でもおかしい人って思われてたのに こっちの世界でもおかしい人って思われるかもね」
エイトは、完次が笑いながら話しかけているのを静かに瞳をウルウルとしながらも聞いていた。
「だから そんな大事な人を出来損ないって言ったやつが許せない」
エイトはここまでの話を聞いて完次が大切に思ってくれたことは嬉しかった。
「そんな事を言ってくる人はいませんよ」
エイトは涙目ながらもクスクスと少し笑っていた。だけど、まだ自信が持ってなかった。
「ん? ならどうして出来損ないとか言いだしたんだ?」
エイトはここしかないと思い勇気を振り絞って聞いてみた。
「完次さん 私を作り上げた時どうして悲しい顔をしていたのですか? それは私が原因ですか?」
エイトは答えを聞くのが怖かったが、完次は即答したのだ。
「エイトは完成したんだよ?俺は満足いかなかったら完成って言わないよ。それにエイトは俺が向うの世界で作った最後の完成作品だよ 」
「それはつまりどういうことですか?」
「簡単に言うと、エイトは向うの世界で俺が作った 最後のロボットで最高のロボットだと言うことだよ」
その言葉を聞いたエイトは心がパーーっと晴れたのだ。出来損ないと思っていたが、完次から直接最高と言われて嬉しい・・・その場でエイトは泣き崩れそうになっていた。
「まぁ エイト達はそれぞれ違う分野だから甲乙つけがたいけどね まぁ本当はエイトもなんだけどね 他の娘達も俺にとって最高のロボットだよ ってエイト聞いているか?」
完次はケイト達も褒めていたが、エイトはそれを聞いてはいなかった。完次が言い放った言葉で普段浮かれないエイトでも気分は最高潮になっていた。
「はっ すいません」
エイトの瞳はウルウルとしていた。
(良かった 本当によかった 出来損ないと思っていたのに まさか完次さんにとって私が最高作品だなんて嬉しい )
エイトは今まで勘違いしていたことに気が付いたのだ。
「それと これから帰ったらすぐにあの化け物を材料にしてロボットを作る エイト協力してくれるか」
「はい 喜んで」
エイトは即答し、頭を少し下げたのだ。
「あれ?ケイト達がなんでここにいるだ?」
完次は化け物が倒れていた所からケイト達がこちらに向かってくるのが見えていたのだ。
「ケイトさん達はあの化け物を運ぶのに人数が必要なので私が呼びました」
「そうだな そこまで気が回っていなかったよ でも、どうやって運ぶんだい? ここから麓まで距離がありるけど?」
「チュームさんの【チュームの試験的七十一式電伝比凜開け門】私達は長いので【門】としてるですが、完次はこの【門】はご存知ではないですか?」
【門】に関しては完次は知らされてはいなかった。チュームからは「私たちは戦闘用ではない」と聞かされたくらいだった。しかし、変な名前だな
「すまんが知らない エイト達が戦闘用ではない事と改良すれば戦闘用になる事は教えてもらったけど それ以外は特に何も教えてもらってない」
エイトは少し険しい顔をしていたが、すぐに笑顔を作った。
「わかりました 完次さん今度私達にお時間をください 私達がこっちの世界に来てたからで理解してる事を完次さんに話します」
完次も興味があった。エイト達はこっちの世界に来てからいろいろできるようになったが、何ができるのか知りたかったのだ。
「あっ」
エイトが何かに気付いたようだったが、「どうした?」と聞くと「何でもありません」と答えていた。
完次はケイト達のほうに歩き出そうとした時
完次の背中に柔らかいものが当たる感触
そして、完次はエイトに背中から抱きしめられていた。
完次は顔真っ赤にして動揺していた。




