23話 盗賊VSウキ&スー
本当に女、子供と男一人しかいないのな」
「金貨3000枚も持っているのに不用心だな」
盗賊達はニヤニヤと笑っていた。
「ウキちゃん達 強いけど大丈夫?」
ウキはそう言いながら可愛らしいシャドーボクシングを取っていた。その様子を見て盗賊達がゲラゲラと笑っていたが、一人の盗賊が先ほどまでウキという少女の隣にいたスーという少女がいないことに気が付いたのだ。
盗賊は隣にいる仲間に少女がいなくなっていることを報告しようと視線を横に向けてみると、先ほどまで笑っていた仲間全員の頭がなく死んでいた。叫び声も何の音もなく仲間は死んでいた。そして、視線を戻すと、ウキの横にスーがいたのだ。
ウキが盗賊に「ね?強いでしょ」と微「笑んでいたが、その横でスーが呆れたような顔をしながら「でもウキはほんどな何もしてないよね」と、突っ込みを入れていた。そこからウキ達は子供の口喧嘩を始めていた。
盗賊は一瞬の隙を突き、懐から小さな笛を出して吹くと、たくさんの獣が出てきたのだ。盗賊出したの笛の名前は<メルハーンの笛>。下級のモンスターを数十体を呼び出すことができ、同時に命令を出すことができる代物。
盗賊は仲間を殺されて動揺をしていたが、<メルハーンの笛>で獣を呼び出せたことで、少し落ち着きを取り戻してきた。そして、盗賊は作戦を練り始めた。勝つのではなく逃げるための作戦を。
<メルハーンの笛>は、中級の冒険者達でさえ苦戦する代物子供なんかに負けるはずなく、もし状況が悪くなったら獣を囮にして逃げるという作戦を立てた。
(よし この作戦でいこう・・・・)
「ふぁっ!?」
盗賊はさっきまで考えていた作戦が台無しになる光景が目の前にあった。
「見て見て かわいい」
ウキは出された獣達をツンツンと触ったりじゃれあったりしていて、ウキは無防備であったが、獣達も無防備だった。そこに盗賊がナイフや弓で攻撃を仕掛ければ殺せたかもしれなかったが、スーがこちらを睨んでいて身動きが取れなかった。
獣達に「その少女達を殺せ」と命令を出したが、獣達はウキ達を殺そうとしなかった。そして、ウキが「お手」と言うとお手をし、「転がれ」と言うと獣達は転がったりして、ウキのお願いには獣たちは反応していた。
「ウキちゃんね 獣さんと友達になれた だからもっともっとお友達増やしたい」
ウキはその場でピョンピョンと跳ねながら満面の笑みを作っていたが、盗賊は頭から煙が出そうなくらいに考えてた。
(とりあえず会話をしよう そして、相手が隙を作ったら全速力で逃げよう)
「おじさん ウキちゃんと友達になりたいなっぁー」
盗賊は作り笑いをしながらウキに話しかけてみた
「嫌」
即決だった。ウキは盗賊の方に目を向けジーーーっと見ていた。大きな瞳はまるで宝石のようにキラキラと輝いていた。
(隙なんて無かったし逃げる手段もないどうすればいいんだ)
「さっきから逃げようとしてるけど 無駄だと思うよ」
スーが話しかけなければ横にいたことに気が付かなかった。
(声をかけてこなかったら気が付かなかった・・・・ってことは俺を殺せたってことだよな)
盗賊に寒気と恐怖が襲い掛かってきたのだ。そして、寒くないのに体がブルブルと震え「どうして?」何度も小声でぶつぶつ言うようになってきた。
「おじさんは、ウキちゃん達に嫌な事をしようとしたからダメなの」
「嫌いな・・・こと?」
「パパを殺そうとしたんでしょ?」
盗賊は少女の眼が恐ろしいほど暗く深い闇のような真黒な瞳になった。キラキラとしていた瞳が消えた瞳の時は優しさがあふれるような少女が、今は恐ろしくて後退りをしてしまった。
「パパを殺そうとするなんて・・・・・ウキちゃんが大好きなパパを・・・」
「スーも許さないから 絶対に・・・ぶっ殺してやる」
ウキは完次が殺されたと思うと涙が出てきてそれをぬぐっていた。スーは怒りを超えていた。ウキの眼がキラキラとしているなら、今のスーは真黒な瞳をしていた。その瞳に吸い込まれた抜け出せないような深い闇の眼をしていた。その瞳を見ているだけで膝ががくがくと震え盗賊はその場に座り込んでしまった。
(なんだんだ・・・こいつら・・・ただの少女じゃね・・・)
ウキはスーの頭を叩き、「スー それ メッだよ」と親指をスーに立てていた。スーは頭摩っているとウキと同じ綺麗な瞳に戻っていった。スーの瞳が戻ると先ほどまで威圧感がなくなった。
「スーは頑張りすぎ パパの見えないところで頑張るなんて本当お利口さんなんだから」
ウキはスーが摩っていたところを撫でてあげていた。
「だって ウキがパパに甘えてばっかりだからパパ疲れちゃうって思って・・」
ウキは頭抱え込んでいた。思い当たる節があるようで反省をしていた。
「それは・・・ごめんね でも今回二人で頑張ったからパパに甘られるよ」
ウキはスーに笑顔で答えると、そのウキの笑顔の影響なのかスーも元気な笑顔みせていた。
「んじゃ後でパパに二人で甘えに行こうね そのままに早く終わらせないとね」
「そうだね スー」
二人は会話を終えると盗賊の方に目をやった。
二人に睨まれた盗賊は一目散に逃げた。どんなに息苦しくても足を止めまいとただただ逃げた。
「ウキ・・・お姉ちゃん・・・」
「わかってるおじさんにお説教しないとね」
二人は笑っていた顔から少しきりっとした顔に戻った。そしてウキが獣達にお願いをした。
「あのおじさんをつかまえて」っと、獣達はコクっと頷き盗賊の元へと走り出した。
盗賊より早く走り・・・あっという間に盗賊に追いつくと足や腕に噛みついた。
「やめろ」「離せ」と声がだしながら振り解こうとするが、その後何匹かに飛びつかれると倒れてしまった。そして、盗賊の耳元にはバリバリと何かを砕くを音と何かを引きちぎる音が聞こえ激痛が走った。
「痛い 痛 い イタイ た す け て ぇ」と叫びながら盗賊は体に走る激痛から逃れようと暴れていた。だが、獣がどんどん襲い掛かってきて体は徐々に重くなり押し手動けなくなった時、目の前に少女がが現れた。先ほどまで、恐ろしくて怖かった少女がいた。
少女は笑っていた。盗賊にはその笑顔が不気味と思っていたが、天使の微笑みに見えたのだ。
この激痛から解放してくれる優しい天使に・・・
そして、盗賊は笑みを浮かべているスーにとどめを刺されて獣に食べられて死んでいった。