22話 少年と鎧
女の子の買い物は長い。服以外の物は順調に買うことができたが、洋服店が何件もあるエリアにエイト達が入ってからすでに3時間経っていたが一向に戻ってくる気配がなかった。牛などの家畜、大量の調味料や食料を詰め込んだ馬車は<オリン>のシンボルでもある大きな時計塔の下で待っている状況で、あとはエイト達が帰ってくればいつでも帰れる状況であった。
完次は、まだ時間がかかると予想をして、少しぶらつくことにした。細い路地裏に入ってみると、そこには職人達が店を出していた。表で出店を出している商人は出店料をだしているが、ここの人達はそれを出していないため、ばれないよう隠れた路地裏で商売をしていた。どの商品も表に並んでいる商品の3分の1で金額で売っていたが、表とほとんど変わりない出来だった。ここで並んでいる職人達はいつか表で販売する夢を描いてここで商売をしていた。
完次は一人の職人の前で止まった。
(見事な鎧だな)
この職人の鎧は、作業工程が他の職人よりはるかに多かった。ここに並んでいるどの防具・・・いやこの街で見たどの防具よりも工程が多くかった。完次は、エイトに身を守るものを買ってほしいと言われていろいろな店に行ったが魅力的な物がなく買わずにいた。
(買うならこの鎧がいい)
完次は職人に値段を聞くと、「10銀貨」と答えた。その職人は前髪が長く男か女かわからなかったが、声から察すると若い男であった。完次は、1金貨を職人に渡した。職人は顔をあげて完次を見ていた。この職人は長時間かけてこの鎧を作っていた事完次は理解していた。そして、この職人は前の世界の自分にどことなく似ている気がしたのだ。
(エイトに金貨渡してあるからな これ以上払えないのが悔しいなぁ)
この少年から鎧の打ち方等を詳しく聞かおうとしたが、今は少し時間がない、もしかしたらエイトが集合場所に戻ってるかもしれないから、もう一度<オリン>に来た時に聞くことにした。
「君の名前は?」
完次はこの職人名前を聞きたかった。ここに居てはいけない職人であり、これから有名になる職人名前を聞いておきたかったのだ。
「・・・・・トトル・・・・」
トトルという少年の手は職人の手をしていた。そして、トトルも完次の事を見ていた。
「名竹完次また来るから覚えててほしい」
完次は職人から鎧をもらい集合場所へと向かった。
集合場所に戻ると、そこにはエイト達がいた。ウキがほっぺを膨らませて「遅いーーー」っと言って怒ってた。エイトは完次が防具を買っていたのを見て少し安心した顔を見せていた。
エイトは残った硬貨を完次に返そうとしたが、エイトが持っていた方が安心だからと言って預かってもらうことにした。
<オリン>の入口に向かうと、馬車が4台から5台に増えていた。中にはたくさんの衣類が入っていた。完次は呆れて物も言えんなかった。ウキ達はえへへと笑い。エイトは「ほしい物がたくさんあってつい買ってしました」と何度も謝っていて、エリー達もエイトに続いて謝っていた。完次はこれを許していた。鉱山での生活はほとんどが村の子供達やエイト達の頑張りで完次も生活ができているからだ。完次はみんなの頭をポンと軽く触れ「帰るぞ」と言った。
馬車が増えたことにより、ウキが御者をやることになり不安だった。完次も御者するのは初めてで不安だったがそれ以上に心配だったが、どうにかなりそうだった。
ウキは手綱を使わずに「お馬さん 家までよろしくね」とお願いすると馬は嬉しそうにパカパカで走り出した。ウキの後を追うように、エイト、エリー、フンメールが続いた。完次も付いていこうとしたが、なかなか走り出してくれなかった。
少々手を焼いていると、先頭にいるウキがこっちに向かって「付いてきて」とお願いすると、完次の馬もウキの馬のように嬉しそうに走り出した。
しばらくの間は、ウキは馬とスー会話をしていた。エイトは、時々馬の様子を覗い、体を撫でてあげていた。エリー、フンメールは風景を楽しみながら手綱を握っていた。そして、完次はすでに手綱をひいてはいない、ウキがお願いしてから馬は大人しくウキの後を追いかけていたが、道半ば急に止まった。
街はすっかり見えなくなったが、鉱山の麓までは遠かった止まる理由がわからなかったが、馬車から降り前方を見ると完次にもその原因が分かった。盗賊らしき人達が道を塞いでいたのだ。
完次が、エリーとフンメールを迎えに行こうとした時、空から叫び声が聞こえた。エイトがエリー、フンメールを抱きかかえて空から落ちてくるのだ。エイトは際どいドレスなのに、高くジャンプしたら下着が見えると思っていたが、絶妙に見えなかった。着地をするとすぐにエイトは完次の側に寄った。
「お怪我はありませんか?」
エイトは完次に怪我がないことを確認すると安心した様子でニコッと笑った。
「ウキ達は大丈夫か?」
「あの娘達なら平気です しばらくすればこっちに来ます」
完次は前方の馬車付近が少しざわついているのに気が付いた。