12話 魔法VSロボット セラ編
セラは【魔法使い】数に驚いていた。50人近く魔法使いがこの<アサゲ村>居る事がわかった。セラはマーニャと約束しているので、数を半分ずつにして競おうしたのだが…
「おい マーニャ半々になってないぞ もう少し引き寄せろよ」
「あら セラお姉ちゃんは人気者 いいわね ですからそのまま遠くにってください… では勝負始めますね 御武運をセラ御姉様 」
マーニャは10人近くの魔法使いを連れてセラとは逆方向に姿を消していく。
「マーニャの野郎 私の半分しか連れて行かなかった どんだけ 報酬がほしいだよ」
報酬とは、マーニャとセラの中で間に交わされ賭け事の報酬だ。
マーニャとセラの報酬は情報だ。この世界の最低限度の情報は皆で共有しているが、ただ一つ共有していないモノがある。完次との思い出だ。
だが、この情報はとてもセラ達にとてもとても大事なものであり、強くなるために必要なモノの一つであった。
セラは多くの魔法使いに囲まれながらも魔法使いから放たれる魔法を丁寧に避けながら工場や村から遠ざかるように誘導していった。
魔法使いの攻撃もセラを逃さないよう火系統の魔法をバンバン使ってくる。だが、セラは楽しそうに全ての魔法を避けて笑っている。
・・・ ふふっ こういう時に言うのよね 魔法なんて当たらなければどうということはない それに… ・・・
冒険から帰って来た翌日に完次は冒険を共にした三人のメンテナンスを行っていた。セラ達が無敵ではなくケガをしたり故障したりする事を知った完次は、持ち前の心配性が発動し定期的にメンテナンスをする事をセラ達に伝えていた。
ケイトとルーネをメンテナスした後に、完次はセラに新しい部品に変更する事を提案して来た。セラはこの提案は喜んで受けるとにする。周りからの冷たい目線などがあったがセラは知らんぷりだった。
新しい部品は単純なスプリングのバネであった。たくさんの計算式を元に工場の機材を駆使して作り上げていく新調のバネ。その作業工程を場セラは片時も離れず見ていた。数分間で作業を終えてしまったことが名残惜しいが、誰よりも早く完次からプレゼント(新調のバネ)を受けたセラは気分が舞い上がっていた。
新調したバネのおかげか前よりも早く高く飛べるようになっている。隼のような速さで飛んでくる火の玉よりも素早く移動できる今のセラにとっては火の玉を避ける事は容易である。
そんなセラにも攻撃の感触がいまいちなことが気がかりであった。
誘き寄せている事を知られないように、セラは何度か魔法使いに殴りにかかったが、殴られた魔法使いは何事もなかったのように糸人形が起き上がるようにゆっくりと起き上がる。
ゴブリンを殴り飛ばした一撃より強烈な一撃を与え交通事故のように地面に撃ちつつけられ何度も何度も転がっても起き上がる魔法使い…不気味であった。
それに、一番不気味なのは、殴りつけた時の感触だ。
感触は人間のようだが・・・硬い。硬いのに軽い。大人のような背格好をしているのに、30キロも満たない体重をしている。
こんな不気味な奴…こんなもの二度と殴りたくない。こんなの殴る着けるならゴブリンを殴っていた方がが気楽とセラは思っている。
そして、この感触で一つ分かった事は、間違いなく魔法使い達は人間ではない。ウキは人間と言ったが違う。未だに素顔を見る事ができない魔法使いのフードの下には人型のモンスターであるとセラは予測していた。
満足が行く予測でできた頃になると<アサゲ村>の近くの森を抜けた草原に出ていいた。
村人曰く、ここはスライムやウルフが多く生息している草原のはずなのだが、今は一匹も見られない。
野生動物も自分の身に危険が迫ってくると、身を隠すのと同じでおそらくそれらモンスタ―達も自分より強者が訪れる事を殺気で感じ、セラ達が到着する前に何処かに身を隠しているのだろう。
・・・ここなら 問題ないか ・・・
これから戦闘するセラにとっては格好の場所となっている。誰にも迷惑をかけずに戦え速やかに村に帰れる場所となっていた。
セラは足を止める。
魔法使いも距離を置いて足を止める。セラはある光景が視界が入ると、深く呼吸をする。
・・・ 時間はかけられない 悪いね マーニャ この勝負もらった ・・・
森の奥から煙が出ているのが見えている。セラは完次が無事なのか不安であったが、心の中ではメラメラと燃えている。
そして、セラの体も前回のゴブリンと同様赤く燃える。小麦色の肌は赤く燃える。
腕、足といった体のパーツが開き
そして 中から何かが出てくる。
【Change Excavation mode】
セラの両腕からは円状の物が二つ出現する。
左腕から出てきた円形状のモノはそのまま左腕に装着する。装着するとセラの体を覆い隠すほど大きくなり表面から小さな刃状の物がボツボツと現れてくる。
右腕からは円錐状の物が噴射される。それをセラが握ろうとすると円錐状の物は太く長く伸び広がっていきランス状のドリルへと変形した。
「とりあえず あの主の言う通りだった 強い敵が出てきても私たちは十分に戦えるっと… 」
ロボットアニメでの変形中の攻撃をはご法度だ。
しかし、こちらの世界ではお構いなく雨のように火の玉が飛んでくる。
セラは魔法の雨に対して避けようとせず、中腰の状態で待ち構え、左腕に付いている円形状の物を盾にして魔法の雨を防ごうとする。
容赦なく魔法使いから放たれ魔法をセラは盾で魔法を防ぐ。火の玉に触れたら炎が盾に移るのだが、セラが装着している盾は燃え移ることなく、触れたスッと瞬間消えてしまう。
いや違う…消えたんではなく高速で回転している盾に付着されている刃で火の玉を削っていたのだ。
盾に当たった炎の玉は全て削り雨のように降っていた魔法はセラには一つも傷をつける事はななかったが、それでも雨は降り止む事はなかった。
・・・盾 まずまずだな ・・・
セラは一度後ろに大きく後退する。一度の後退で数十メートル可能のセラは、右手に持っているランスを相手に向け西洋の長槍兵のようにずっしりとした攻撃的な構え方に変更する。
攻撃に移行すると背中から車などに装着されているマフラーが出現する。
「よし 此処まで異常なし 攻撃に始めますか」
一つ息を吐き覚悟を決めたセラの眼は魔法使い達が居る地点を眺めながらも、関節部分を回して余計な力を入れないように落ち着かせていた。
・・・今度こそはあんな顔をさせない ・・・
何にも負けないの【勇者】ように強くあってほしい願いながら完次が作り上げたロボット…それが【セラ】である。
様々なロボットアニメある中で【勇者シリーズ】というモノがあったのだが、悲しい事にその勇者シリーズは放送を終えてしまった。
幼い少年と共に戦う勇者ロボという物語なのだが、完次はこのシリーズがきっかけでロボットに憧れもつようになり唯一録画したビデオテープを持ち、テープが擦り切れるほど何度も見たシリーズの一つである。
ランス状のドリルや削る盾などは勇者ロボが使っていたモノを参考にして完次が取り付けたものだった。
それらを駆使しセラは勇者シリーズに登場するロボットのように【勇敢】で【強く】なろうとしたが失敗をした。
では次回失敗しないように何をするべきか考えようとしたが、考えても考えてもセラは結論を導き出せなかった。
セラはどっしりと腰を下ろして考えるよりも、自身が今できる事を体で知る方が性に合っている気がした。
無茶をするなと完次に再三注意をされていたが、どのくらい高く飛べるのか、どのくらい早く走れるのか、どのくらい威力があるパンチを撃てるのか夜な夜な完次に隠れて実験をしていた。
そして、実験をしてわかった事がセラにはあった。ゴブリンと戦っていた時よりほんの小さな力で前回より少し早く走れるようになり力強い拳を作り出せていることに気が付いた。
これはセラが何かしたのではなく、完次が新調してくれたバネによってセラは前よりも早く高くなるほど性能が上がっていた。
そのバネは、たかが一から作りあげたバネであって大型ホームセンターで売っているバネと対して変わりがないスプリングのバネなのだがセラにとっては劇的な変化を生み出していた。
【点火】
その言葉と同時にセラのマフラーから黒煙を大量に噴出し重々しいエンジン音がセラの体が鳴り響く。
【カウントダウン 参…】
さら先程よりも深く腰降ろす。
【弐…】
左足を後ろに大きく伸ばす。
【壱…】
目標地点を再度確認して覚悟を決める。
【 零 】
セラは走り出す。土煙をあげるほど速さとなり、一般人には到底見えない速さ域に達してながらも目標地点に向けて走っていた。
・・・ はぇえええええええええええええ ・・・
セラ自身もこのスピードに驚愕いていた。
予想していたよりも自分が速く移動し目標地点を過ぎ去ろうとしている事に気が付く、急いでランスを地面に刺して止めようとする。
ランスが地面に突き刺さると地面をえぐりながらも進んでいく。ランスはギシギシと不穏な音を発てるも折れずにいる。セラも手を離さないように必死に食らいついている。
ゆっくりと速度が落ちいき、ようやく止まった頃には目標地点にはるかに過ぎていた。
・・・ やべえ なんだよこれ たった一つのパーツでここまで変わるとか やっぱり完次はすげぇ奴だよ・・・
戦闘中にもかかわらずに腕を組みフムフムと言いながら頷きながらにやけてしまうセラ。
そんな凄い人に自分は作られた事を改めて嬉しく思い、動けるようになったことに感謝していたのだ。
異世界に来て動けるようになった体、この体を手にするまでは苦い想いをしている。
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「名前はそうだな…セラにしよう」
気が付くと自分より身長が高く、服も手もボロボロな男性が立っていた。
なぜこの男性が名付けるのか。なぜこの男性は笑っているのか最初は理解できなかった。
自ら手や足を動かす事は出来なく、工場内にある作業場の一点しかを眺める事できなかった。
特に興味はなかったが、特にすることも無いのでこの男性の生活を眺めることにする。
朝はアツアツの珈琲を飲みながら煙草を一本吸ってから顔を洗い髪型を整える。自分としては整えない方が好みなのだが、仕事の為にいつも整える。
仕事は大抵昼頃に開店しそして外が暗くなる頃には閉店をする。閉店した後に次のロボットの為の製作時間となっていて、日が昇る直前までは製作時間となっていてるが、時折寝ずに仕事をしていたこともあった。
こんな退屈な日々を追う毎に、なぜか閉店する時刻を待つようになっていた。
この男性は本当に楽しそうに設計図を描く。時々ペンを置き頭を掻きながら何か悩む、そういう時は立ち上がり煙草に火を着け一服をする。何本かタバコを吸うとハッとした表情を浮かべて再び設計図と向き合う。
この頃になると男性は同じことをする事が多く、次の行動を予測することが容易になっていた。
さらに月日が経つと、真剣な眼差しを作りながら片手に工具を持ち製作を開始する。失敗をして手に火傷などの怪我をする事が多かったが、決して諦めず楽しそうに作業をしているのを眺めるのが好きになっていた。
完成していく部品を眺めて笑っている男性を見ていると、こちらも嬉しくなりこれから完成されるロボットは幸せモノだなと思っていた。
この瞬間、体の中にある数千のパーツからポカポカと温かみを感じさせ冷たいはずの鉄板のボディーが体温を持ったように温かく感じる。
この時にようやく理解できた。自分も愛情が込められて製作された事に気付いたのだ。
そして、時折男性が触れてくるとその手はボロボロで汚れているがとても暖かく、一瞬でもいいから触れたくなっていた。
だが、こんな楽しい日々に一度理不尽な理由で男性客が暴れた事があった。
男性客が殴る蹴るの暴行をしていた時には、なぜ動けないのか、なぜこの男性を守れないのかと悔やんでいた。そして、男性客の怒りの矛先は工場内にある物に当たりだす。
男性客がこちらに来た時には私達にも当たる物だと覚悟を決めた。男性から自分に当たって気分が晴れるのならそれでも良いと思った。
しかし、その願望はかなうことはなかった。なぜなら、とっても大きな男性の背中が視界にあるのだから。
その背中を見た時にはかっこよく見えていた。最初は興味すら持たなかった男性が今は正義のヒーローに見え憧れる存在になる。
自分のヒーローが、『エイト』という名のロボットを完成した時に今まで見たことがないほど落ち込んだ顔を一瞬した事を見てしまう。
声をかけたい、感謝している事を伝えたい、なのになぜそんなことすらできないのか。目の前で自分のヒーローが崩れそうなのになぜ守ってやれず、声もかけることができなのか。
動けない自分の体をここまで恨んだことはなかった。
その時だ。
誰かに声をかけられた。
そして、その声の主といろいろと話した後、私達は動けるようになりヒーローを守れる体と強さを手に入れ…ヒーローの夢もかなえられる世界に連れてきてくれた。
感謝しているあの時の声の主。そして約束を守る。
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・・・ 完次にはこの先もいろいろ作ってもらいたい 夢を追いかけてほしい それを邪魔するモノがいるのなら 私は容赦しない ・・・
セラは相手の魔法使いの位置を再確認をし円形状の盾を腕にしまい、野生の肉食動物が獲物に飛びかかるように非常に低い姿勢を取りつつ、ランスも先端だけを地面に当ていた。そして、そのままの体勢で先程と同じスピードで移動をする。
魔法使い達はセラの異常な構えに危険を察したのか再び大量の魔法を放つがその場にはもうセラはいない。魔法使いからみて表面に居たセラは今度左後方へと移動していた。
セラの近くにいる魔法使いはセラとの距離を取るために距離をとり、離れている魔法使いは再び魔法を放つ陣形を取ろうするがセラはまた別の場所と移動している。
この動きを何度か繰り返していく、先ほどまで大きくばらばらに散っていた魔法使い達の陣形がセラが動くたびに少しずつ小さく一か所に集まりだしていた。
やがて、セラが一番最初に立っていた位置に戻り動きを止めると魔法使いの周りにはセラが通った跡が残っていた。
「うーん この後どうしようかな… あっそうだ 」
セラはランス状のドリルと盾をを腕にしまうが、別の物を右腕から取り出す。セラと同じ大きさの大きな杭を右腕に取り付けた。
「これこれ… 完次が好きなヤツ 名前なんだっけ…杭打機だったけかな 削岩機どっちだろう まっいいか」
地面に残っている通った跡に杭の先端が当たるように標準を合わせ、大きな爆発音と共に杭を打ち降ろす。
【ラ・プレミエール・エトワール(一番星)】
杭が地面に打ち込まれると罅が入り、魔法使い達が居る場所にも無数の罅が入り、そして地面が割れ始める。地面が割れ魔法使い達は割れた地面の中へと姿を消えてゆく。割れた地面の形が星形となったいた。
セラは額に着いた蒸気を拭く姿は一仕事終えた職人のようである。<アサゲ村>に目線をやると遠く離れたセラの場所からでもわかるほど赤く燃え上がり、そして耳には遠くでマーニャの声と魔法使いと戦闘してる音が聞こえていた。
「私の勝ちだね マーニャ」
セラはすでに戦場だった草原から姿を消し<アサゲ村>へと向う。