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10話 訪問者と危険 

冒険から帰ってきた完次の日々は、持ち帰ってきた純白の鉱石を夜遅くまで研究する日々であった。完次は鉱石の研究は初めてだった為、慎重に作業を進めていくもインターネットも参考になる本もないので作業効率は最悪であった。


これまでわかった事と言えば、工具で簡単に割れ、熱すれば非常に長い間赤く燃え上がる程度だった。完次の希望の物〔アニメ出てくる超合金〕ではなかった。しかし、未だにこの鉱石から不思議と力を感じるのである。


そして、変わった事もう一つある。日常生活の変化である。


完次達の異世界の朝は、エイトとケイトが料理等をしてくれている。一人で起きるのではなく、誰かに優しく起こされるか、ウキが腹の上で飛び跳ねて起こされるか、顔を叩かれて起きる日々に変わった。


他人から見れば羨ましいと思う人がいるだろうが、朝が苦手な完次にとってはそっとしていてほしいのだ。祖父達と暮らしていた時は迷惑かけないように努力して一人で起きれていたが、工場を務めてからは自分が起きた時間から開店するようにしていた。


しかし、今まで以上に最悪な朝を迎えることになる。


不愉快な音と怒鳴り声が完次の耳に届いていた。眠い目を少し開いてみると、キッチンにはいつも料理しているエイトやケイトの姿はなく、横に目をやると皆が眠っている。エイト達が起きていないとなると明朝となる。寝起きが悪い完次は明朝に訪ねる馬鹿者を一喝しよと起き上がる。


完次は、両サイドに抱き着いて寝ているウキとスーを起こさないよう起きた。


一番最初自分の隣で起きた時は驚いて皆を起こして注意をしたが、寝ようとする度に皆が付いて来て一緒に寝ることになる。しかも、いつの間にか人数分の布団と敷布団がある。自分の好きな場所で寝れるはずなのに、エイト達は挙って完次の付近で寝ようとする。ウキとスーに限っては完次に抱き着いて寝てくるのだ。ウキとスーはまだいいにしろ、ケイト、セラ、エイトの年長組達も近く寝る。若い女性と寝る事がなかった完次にとっては最初は興奮して寝れなかった。


完次も男だ。興味がある。興奮して寝れないのに寝たふりをしてばれないように目を開くとそこには寝返りで見えるケイトの谷間。これはいかんと目を閉じると、完次の頭の位置で寝ているセラの甘い寝息が聞こえる。これもいかんと思い耳を手で塞ぐ。そして止めの一撃として、完次の鼻に今まで嗅いだ物の中で一番いい香りがする。この主はもちろんエイトを含めた完次の周辺で寝ているエイト達だ。


完次もエイト達が来てから極力風呂に入るようにしている。同じものを使って洗っているはずなのにどうしてこうもいい匂いがするのだろうか。疑問だ。そして、危険だ。


完次は結局その日寝れず朝まで起きていた事をエイト達は知らないでいる。


しかし、慣れというものは恐ろしい。毎日続くとその環境に違和感なく過ごせてしまう。


完次は、物音を立てないように静かにシャッターのほうに向かっていたのだ。


無礼する者に高圧的な態度を取ろう思っている。長身の完次は黙っていれば大抵の人は恐ろしくて帰ってしまう。新聞の勧誘、セールスマンなどこれで何度も追い返した。自信がある。


シャッターを少し開けた隙間から外に出ると共に、普段は猫背なのに背筋を伸ばし胸を張り威圧する姿勢を取った。そこには、鉄の鎧を着ていかにも王国の騎士みたいな姿をした男達が二人いた。


「おい おまえいつからここに住んでいる?」

 

身長は190センチを超えている完次が勝っている。しかし、騎士達は身長およそ180センチ。鎧を着ていてもわかる分厚い胸板と丸太のような腕をしていることがわかると一喝をすることも高圧的な姿勢も辞め、低姿勢な態度で応対することにした。


素人の完次でもわかる。人を素手でも殺せるような筋肉と腰に備え付けられている剣そして大きな背中よりも大きい盾。完次もそれなり筋肉はあるだが、それは人を守るモノや悪人を殺すためにものではない。ただ力仕事が多くそれなりに着いた筋肉で、目の前の体格とは比較にならないものである。



「はい 此処に住んで1種間が経ちます」


完次は慣れない営業スマイルと騎士様に不快を与えないような言葉選びを駆使しできるだけ此処を穏便且つ早急に立ち去ってもらうことを願っていた。騎士達はメモを取りながら多くの質問をした。年齢や職業など聞かれた。そして、どこから来たのかという質問に日本と答えた時には二人は互いに顔を合わせ不思議そうにしていた。それもそうだ日本はこの世界に存在しない。


「最後の質問だが何人住んでいる」

「私を含めて九人です」


完次は迷うことなくすぐに答えた。前の完次なら一人と八機と言っていただろう。だが、この数日で完次はエイト達を人として見るようになっていた。

 

「そうだなこの建物の大きさ、住居者の人数、滞在日数分を含めて金貨10枚だ。我々騎士の身 忙しい身である為。早急に準備してほしい」

 

おそらく忙しくはないここに再びとずれるのがめんどくさいだけだろう。完次でもわかる<アサゲ村>は田舎の中田舎。ド田舎だ。騎士というのだからおそらく王国から来たのだろう。この辺り見渡しても王国らしきものはない。それに馬車を連れてきて、馬の息が荒い。相当遠くから急いでこの場所に来たのだろう。


だがこれはまずい。異世界に来て一週間近く経つというのに金銭というモノを見たことがない。<アサゲ村>で生活していた時は、ほとんどが物々交換で生活が可能であった。主にウキ達がうまくやっていた。完次は何もやっていない。


鉱石の研究で工場籠っていても怪しまれず、村人好意的に接してくれたのはウキ達のおかげである。ウキの持ち前に明るさと姉思いのスーは村人のご老人の人気者。セラは農業の手伝い。エイトは困っている村人を手伝ったり村人に話を聞いたり話しかけたりして近所付き合いをしていた。ケイトは何か頂き物をもらった場合はお礼の言葉を伝えに行く。


そう完次何もしなくても、エイト達によって平凡な生活を送れそうであったのだ。

 

「すいません 持ち合わせていません」


平凡な日常から借金生活が始めるのかと思うと少し嫌にもなる。こちらの世界でもお金の問題が生じるとなると聊か気分が悪くなる。


この返答に対して騎士達はマニュアル通りの反応の示す。そうお金がなければ売れる物を探せばいいのだろう。その為の馬車であろう。おそらくあの積荷にはいくつか家具や貴重品が眠っている。そして、そこに完次の工場品も入るだろう。


しかし、完次の頭の中で売れそうなものは一つもない。どれも中古で一番古い機材。不良品の部品や品物。どれもボロボロでいつ壊れてもおかしくない物ばかり。後あるとしたら、<アサゲ村>の村人から頂き物。しかし、どれも食品だ、貴重な物なんてもらった記憶すらない。


借金生活決定の瞬間である。出稼ぎ?それと強制労働?城壁とか作る作業とかを想像するだけ憂鬱になりため息が漏れそうだった。

 

「すまないが 待つことはできない 金貨10枚 だからこの建物丸ごと売ることになるが良いのか?」


その言葉を聞いた時、くらくらとした。良いのか?ではない。こんなの即答駄目だ。金貨という貨幣価値がわからないが、この工場を全て日本で売ったら少なくとも500万以上はする。


しかも、この工場は祖父達が残してくれた大事なお金で買った物だ。絶対に売ることは出来ない。ならば、中にある機材を全てを売り残った金額を出稼ぎや強制労働で払う選択肢を選ぶ。


だが、金貨が無い者の言葉を信じる程この騎士たち甘くない。おそらくそんなこと信じられるか!!!出っていけ。と言われるだろう。


ならば


完次が取る行動は、土下座し泣き寝入りして頼み込むしかない。無理だと思ってこれしかないのだ、工場を残す方法は土下座しか浮かばなかった。


完次はゆっくりと足を曲げ土下座しようとした時、後ろのシャッターが開く音が聞こえる。

 

「この工場は完次さんの大切な建物です 売る事は絶対しません」

 

振り向くとエイト達が寝間着のまま騎士達を鋭く睨んでいる。ウキはまだ眠いのか目をこすっていたが、他の娘は非常に威圧的な態度を取っている。セラは腕組をして戦闘を待ち望んでいる様に見える。


だが、そんな彼女達の態度に臆することなく気品があった騎士達はニヤニヤと笑っている。きっとこのにやけ面は頭の中でエイト達で楽しんでいるのだろう。この後の言葉は完次でもわかる。


「この建物はいらんこの娘達をいただくことにした。王もお喜びになられる」

「そうだな こんな美女達を持ち帰りができたのなら王も褒美をくださるだろう」


ほらな。こういう時の男というもの簡単な生き物だと思う。美女は認めよう。


だが、こいつらはロボットだ。


綺麗な顔 妖艶 小麦肌 


だが、こいつらはロボットだ。


完次は、エイト達を人間として接するようになった時、最初から気を付けた事それは【欲情】だ。主にケイト、セラ、エイトなのだが、この三人は危険だ。魅力的行動を取る。エイトは母性の塊、ケイトは妖艶の一言、セラは気さくで話しやすく非常に魅力的な体つきをしている。この三人しばしば完次欲情することがあり、その度に【こいつらはロボットである】と心に言い聞かせていた。


さらに、自慢になってしまうが年長組は魅力的な女性だが、少女組であるチューム、ルーネ、マーニャは同じ年頃からは人気者であろう。クールなルーネ、姫様のように愛らしいマーニャ、不思議ちゃんで興味をそそるチューム。同学年だったら間違いなく人気投票で悩む三人組だ。ウキとスーは…可愛らしい子供としか見えないが、皆それぞれ魅力がある。


親馬鹿ならぬ製作者馬鹿な完次は彼女誰にも渡したくはないのだ。これは、美人美少女になる前からそうだった。ロボットである時からそう思っている。祖父母からもらったお金が買った工場と同じく完次は絶対に失いたくない物の一つである。



だからこそ、自然と騎士達の目の前に行く先に立ちエイト達のところには行かせないようにする。


「彼女達は絶対にやらん」


先程まで恐れていた騎士達の前に堂々と立ててるのは強い気持ちがあるからだ。揺るぎない強い気持ちで立っている完次の姿は背筋が自然に伸び堂々していた。


「そこをどけ」


一人が騎士は先程と態度が違う完次に苛立ち、胸ぐらを掴もうとする騎士の手をセラが止めのだ。セラは先ほどの表情より少し和らぎ何処か幸せそうな顔している。しかし、セラから感じる力強いオーラが増した気がする。


「離せ」

「貴様の命令なんか聞かん 私に命令していいのはそこにいる 完次だけだ」


セラの手を振りほどこうとする騎士だがセラは全く動じず騎士の腕当をメキメキと罅入れていき、そして破壊した。


セラの戦闘行為と見なした騎士は、腰にあるロングソードを手に取りセラに切りかかろうとする。それをエイトがデザートイーグルで壊したのだ。

 

この対応の速さに騎士は驚き、若干だが腰が引けていたのだ。


「おい 相棒 援護をし・・・・ろよ」


仲間に手助けしてもらおうと声をかけようとしたが、もう一人の騎士もマーニャ頭を踏みエイトが体をが押さえていた。


強い。エイト達は本当に強い。モンスターを倒しそして王国の騎士も難なく押さえつけ圧倒的有利を瞬時造っていた。戦闘するたびに完次はこれが自分が作ったロボットなのか不安になる程高性能で力強かいのだ。もしかしてもしかすると…異世界最強の人物がこの八人だったするかもと完次は思うようになっていた。


両方を取り押さえ付けて完次に襲い掛かる脅威を振り払った・・・・・と思った。その時だった。


美しい笛の音色が<アサゲ村>中に聞こえた。


その音を聞いた騎士達は、先ほどまで敗北感で顔が無様な顔をしていたが、二人揃って不気味な笑みを浮かべていた


完次はその笑みを見て何か嫌な事が起きると感じる。スッとルーネが完次の手を握る。


「警戒 離れないで」


騎士達にケイトが取り出した手錠をし、さらに動けないよう足首にもロープで縛った後、ケイトとエイトも完次を囲う形で護りの態勢に入る。


「完次さん 安心してください 私が守ります」

エイトは完次に伝えこの緊迫した空気でも安心するような笑顔をしている。


「エイト御姉様 何でしょうか この感じ…」

「わからない…ウキちゃん 何かわかりますか?」


先程まで眠そうな顔をしていたウキも辺りの異変に気が付いたのか辺り見渡している。


「た~~~~くさんの人が来るよ スーもわかるよね」

「うん お姉ちゃん でもこれ人なの? 」


この会話を聞いていて完次も不安になる。人ならぬものが来ると聞くと額からは汗をかき始めていた。

そんな完次に、裾を引っ張ている人物がいる。姫様の姿をしたマーニャが青と緑が印象深いハンカチをこちらに差し出している。


「いい 完次 これで汗を拭きなさい エイトお姉ちゃんが言っていたけど このマーニャちゃんが貴方を守る 絶対よ 絶対だからね 絶対だから安心しなさい」


マーニャはそう言いながら、完次の作業着を掴んでいる。完次はマーニャに感謝の言葉を述べた後、ハンカチで汗を拭った。不思議と先程の動揺は消え落ち着きが戻ってきたのだ。


「さて 来たみたいだね」


チュームは、非常に楽しみな顔をしながらある一面をじっと見ている。



完次はチュームが眺めている場所に視線を移すと大きな帽子をかぶりローブを着て片手に杖を持っている人が現れた。一人また一人とどんどん地面から浮き出てくるように増えていき見渡せばいたるところにその姿をした人物が一言も発せず立っている。

 

「完次さん あの者達 強いです 気を付けてください」


ケイトが銃を二丁に変えてローブを被った人物を睨んでいる。

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