プロローグ
日本時間10時 とある都心の町工場のシャッターが開く。
ガラガラ
店の入口に近くにある自動販売機と同じ身長の大男が出てきた。
身長が190センチを超えているこの大男はくせ毛でどことなくやる気のない目をしている。
この男がこの物語の主人公。名竹 完次《なたけ かんじ 》 28歳。ロボットアニメが大好きなお兄さん・・・である。
完次は小さい頃に見ていたロボットアニメに心を奪われた。
高速で動く乗り物が変形するロボットアニメ。合体するロボットアニメ。その中でも巨大なロボットが重量感ある動きをするのが好きだった。
そして、いつしかロボットを作りたいという夢を持つようになっていた。その夢を、叶えようと小学生頃にはロボットキッドを誕生日プレゼンを頼み、中学生になることには工学科に進み高校では高専を選び真剣にロボットについて学んでいた。
だが、半年間順調だと思っていたが、高専生活に問題が起きた。
高専の入学時にアニメのトークなどで友人はいたが
初めてのグループ創作の際に完次が足を引っ張ってしまう。
最初は友人達も許していたが立て続けにグループ創作の失敗が続くと友人達は完次を避けるようになっていった。
そして、高専を卒業するころには完次の周りには友達がいなくなっていた。
6割の者が大学に進み、残り4割は就職や親の後を継ぐものであった。
完次はその中でも異色で自分で工場を開業をしたのだ。
それはとても過酷な道であることをは誰もが想像ができた。
時にはご飯を食べれない日もあった。
水道は数度止められたことはあったが、営業やロボット製作に必要な電気とガスは止めれないように努力をしていた。
それらの困難を9年間かけて乗り越え、ようやく安定とした収入を得る事ができるようになっていた
しかしその9年間は完次は完次にとって有意義な時間であった。
たくさんの参考資料とロボットの週刊誌などロボットに関係あるのかわからないものも買いそろえ仕事の合間や仕事終わりにロボット作っていた。。
当然最初はうまくいかず、失敗する毎日。
身長もデカい完次は、手を大きく・・・物づくりやロボット作りすると指先の怪我が多く手には多くの傷跡が残っていた。
そして10年目を迎えたある日、完次は八体目のロボットを完成させる。
身長170センチほどの人型二足歩行のロボットを完成。今までの作ったどのロボットよりも大きい。しかし、完次は満足はできなかった。
自分より数段も大きいロボットを目指している完次にとって、今までよりもスッペクが良く、高性能ロボットであろうと自分より低いこのロボットに満足をするはずがなかった。
完次はこのロボットを完成をした時に、限界を感じていた。
原因は辺りを見渡すと明らかだった。職人が作る部品、最新機材、従業員、お金、広大なスペース、などなど多くの巨大ロボットを作るのに必要不可欠なものが完次の工場にはない。
廃品、何世代前の機材、従業員ゼロ、一日生活にやっとの収入、巨大ロボットを作成するにはあまりにも狭いスペース
よくこんな設備で今までやってこれたなと思う
そして、努力して手に入れたロボット設計技術者としての誰もが持つ基本的な知識と能力。
どんなに努力したって 誰よりも好きでも 無理な事なのか
人の夢と書いて儚い
誰がこうもうまく言えと言った。
フー
完次は一つ息を吐く
そして顔を何度も叩いて、頭を振った。
ダメだな こんな考え方しては できるものできなくなってしまう
完次はふっと今まで完成したロボットに目をやる。
小さい物は1mくらいだろうか・・
それが徐々に大きくなっていた。
ここまで出来たんだ。ならまだ成長できるな そしてもっと工夫もしよう
誰もいない工場で完次はまた明日から再び巨大ロボットを作る決意を決め、眠りに着こうとしとした。
完次は完成したロボットを、七体並んでいるロボットの場所に運び綺麗に置き、完成した時にやる行事をする。
「エイト お前の名前はエイトだ 」
完次は完成をしたロボットに名前を付けていた。当然、七体のロボットにも名前がある。
『ウキ』『スー』『マーニャ』『ルーネ』『チューム』『ケイト』『セラ』
そして、今日完成した『エイト』。
どれも完次にとってどれも自慢の作品である。
『エイト』を並べた完次は、工場の電源を落とし暗い工場内を懐中電灯で照らし 工場の隅に作った簡易ベッドに横になり眠りつくことにした。
もしも 多く仲間に囲まれていたら
もしも 最新機材があったのなら
もしも・・・・広大な土地があったのなら もしも・・・・職人との深いパイプラインがあったのなら
たくさんの『もしも』があれば 俺は・・・・
その先の答えを考える前に一人暗い工場内で眠りについた。
【・・・・・・・・・・・】
女性の声が聞こえる。深い眠りについたのに声が聞こえる。
・・・・・気のせいか・・・・・?
「起きたらちゃんと挨拶しましょうね」
「もぅ起こそうよ」
「遊びたいよー それからたくさんおしゃべりをしたい」
「昨日も遅くまで頑張ってたからも寝てもらおうよ」
確かに完次だけの工場に女性の声が聞こえる
幻聴か?ただ寝ぼけているのか?
完次は意識が朦朧している中 声がしたほうに耳を傾ける
元気な声 落ち着いた声 上品な声 様々な女性の声が完次の耳に届いている
複数人いるのか? いったい誰なのか? 完次は気になり 重たい体を起こそうろするが・・・ いきなり腹部に重みを感じた。
その重みに驚き目を開けてみると
天井付近ににあるガラス窓から日差しが入り、暗かった工場内は少し照らされている
完次のお腹の上には金髪少女が自分の上にまたがり座っていた。
そして完次の顔をのぞき込んで満面の笑み、そして元気よく
「おはよう パパ やっとお話しできる」
と、完次のお腹の上でまたがりながらピョンピョンと跳ねている金髪の少女がいる。
パパ?
誰だ?
「ウキちゃん ダメでしょ 完次さんのお腹の上でそんなことしちゃ」
ウキと呼ばれた少女に綺麗な大人の女性が話しかけていた
肌は白く 黒髪のロングヘア― 20代半ばに見えるその女性は ウキの母親なのか?
「ウキ ずるい」
腹上にいるウキと呼ばれている少女と同じくらいの歳の娘で、ウキと瓜二つの面立ちである おそらく双子であろう娘がほっぺを膨らませて完次の腹の上から降ろそうとしていた。
「あー あー 起こしちゃったか」
10代後半か二十代前半の彼女は小麦色の肌をしてオレンジ色のショートカットが頭をかきながら苦笑いをしていた
完次はこの少女達を知らない。
お腹の上に乗っていた少女を持ち上げゆっくりと床におろす
少女はにんまりとした笑顔のままずっと完次の顔をじーーーっと見ている。
完次はその少女に見られながらも辺りを見渡すと他にも訪問者がいることを理解した。
工場の端っこで本を読んでいる少女
工場内を探索している人もいれば
工場内の機械を眺めている人もいた
工場内を綺麗に掃除をし始めている人がいたのだ。
娘達は絶世の美女か将来絶世の美女になるであろう少女達で、完次の工場に訪れるのが場違いなほど皆綺麗である。
完次は起きたばかりでまだ寝ぼけている頭をたたき起こし状況を把握しようとする。
まずは・・・・・
「どなたですか?それに、私の工場で工場で何をしてるですか?」
朝が苦手な完次にとってできるだけ丁寧に言ったつもりだった。
もしかしたら、お客様かもしれない。
仮にお客様だったとして考えてみても 起こしたり掃除をしたりは普通やらない
起こしたり 掃除をするのをするのは家族がすることだ だが、完次には家族がいない。 ならばこの娘達は誰なんだ?
強盗目的の集団か?それにしてもゆっくりしすぎている・・・いったい誰なんだ?
未だに状況を確認をできていない完次に対して、少女たちは目を合わせて嬉しそうに笑っている。
「はいはいー 『ウキ』だよ」
ピョンピョンまた跳ねていた。
さっきまで腹の上でもピョンピョン跳ねていて元気の塊みたいなウキは、ショートパンツにTシャツ一枚という元気っ子が着ていそう服装。
「初めまして完次さん 私は『エイト』です 」
女性にしては身長が高くスラッとした女性がお辞儀をした。
『ウキ』を少し叱っていた黒髪ロングの娘。白いワンピースをしていてすぐにでも汚れてしまいそうだった。
「『スー』・・・です 」
ぺこりと頭下げた。『ウキ』と見た目がそっくりなので、双子だと思うが、この少女には泣きぼくろがない。オーバーオールの格好していたて少しおとなしい娘だ。
「んで私が『セラ』だよ よろしくな」
オレンジ色のショートカットでニッカポッカ(ブカブカ作業着)と上着をきていて男らしかったがサラシを巻いていたので女の子だ。元気が体中からあふれるような娘。
「『ルーネ』」
10代前半くらいである。銀色の髪をしていた。肌はできるだけ出さないような服装でフード付きパーカーを着ていた。自分の名前を紹介した後すぐにフードをかぶり本の続きを読んでいた。
「私は『ケイト』でございます よろしくお願いします」
『セラ』と同じで10代後半くらいか20代前半でピンク色のポニーテイルをしている。服装も他の子達違ってメイド服を着ていて、掃除をしていた娘。
「『マーニャ』ででで・・・です よおっよおっよよよろしくお願いします」
水色の長髪をしたおそらく10代くらいだと思う。ドレスのスカート部分を少し持ち上げ挨拶をした。姿勢は良かったが、なんとなくぎこちない動きであった。
「ほいほーい 『チャーム』ね」
青色の髪をしているが、半分ショートカットもう半分はロングといった不思議な髪型をしていて、つなぎ姿であるがこちらも左だけボタンをとめていて左右不対象の不思議な娘。機械を見てはニヤニヤしている。
全員聞いたことがある名前だった。
自分が名付けたロボットたちの名前だ。だけど、なんで話せるんだ、それに走り回ったり、本読んだり、おまけに掃除までしている。
こんなことできるようなプログラムをしていないし、できる技術もない。
それに、見た目が完全に人間になってるじゃないか。
完次は少し頭が痛くなる気がした
外の空気を吸いたくなり
内鍵を外し
シャッターを開けた
少し冷たい空気とまぶしい日差し そして見慣れない村だった