~普通のお母さん~
僕のお母さんは、普通のお母さんだ。
僕の家は、そんなにお金持ちではない。どちらかといえば、貧乏な方。だから、僕のお母さんも工夫して、なるべくお金のかからなように食事を作る。それで、結構、料理が上手い。ま、でも、そのくらいは普通の範疇だろう。
おっちょこちょいで、失敗もよくする。鍋に火をかけたまま他の用事をこなしていて鍋を焦がしたり、なんてのはしょちゅうだ。揚げ物を作ろうとした時に電話がかかってきて、油を火にかけたまま電話に夢中になって、炎が天井まで達したこともある。その時は、立ち上がる炎の上に蓋をかぶせて、どうにか事なきを得た。
運動会ともなれば、前の日からウキウキとして、僕よりも楽しみにしているくらい。でも、朝になってからお弁当の材料が足りないことに気づき、慌てて買い物に行って、運動会には遅れてやって来たりする。
応援するとなれば、周りの目など全く気にせずに、誰よりも大きな声で叫んだりもする。
近所のお母さんと仲が良く、お喋りに夢中になると、全然家に帰ってこなくなる。家の用事なんて、放ったらかし。夕ご飯の時間になっても、全然戻ってこない。僕らは、お腹を空かせたまま、いつまでも待ちぼうけ。
そんな時には、普段温厚なお父さんも激怒する。
オヤツなんかも、よく手作りで作ってくれた。
ただし、映画やドラマに出てくるような上品なオヤツではない。シュークリームとか、チョコレートケーキとか、クッキーとか、そういうのとは違う。もっと貧乏くさいヤツだ。小麦粉と卵と砂糖を混ぜて焼いたものとか、レーズン入り蒸しパンとか、ホットケーキとか、干し柿とか、そんなようなもの。
そんな所まで含めて、全部、普通のお母さんなのだ。