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~普通のペット~

 僕の家にはペットがいない。住んでいるのが、普通のマンションなので、犬だとか猫だとかワニだとかカバだとかといったペットを飼うことができないのだ。

 せいぜい、ハムスターとかカブトムシとか、ああいった小動物や昆虫などに限られる。それも、今はいない。


 そういえば、僕が子供の頃にもペットを飼っていたという記憶はない。スズムシやカブトムシを飼っていたことはあったが、動物を飼っていたことは、確か1度もなかったのではないだろうか?

 母親が、そういうのを嫌っていたのだ。その理由は、こういうもの。

「だって、死んじゃったら、かわいそうでしょ。飼っている時はかわいいけれども、死ぬ時に凄く悲しくなっちゃうんだもの。だから、もう飼わないことにしたの」

 母親が子供の頃には、犬やニワトリなどを飼っていたらしい。そういえば、僕が子供の頃にもニワトリは飼っていた。数は少なかったが、ニワトリがいた。真っ赤なトサカをしたオスのニワトリが1羽と、メスが何羽か。祖父と祖母の家に行くと、狭いケージの中で飼われているニワトリを、よく観察していたものだ。

 夏休みの宿題で、ニワトリの観察日記などというものを書いて提出したこともある。


 ペットといえば、子供の頃の思い出に、こんなものがある。

 近所のスーパーの駐車場に、ペット屋さんが店を開いていると聞いて、弟と2人で見に行ったのだ。

 僕らは、何か安いペットがいれば、それを飼う気でいた。できれば、カメがいいなと思っていた。そうでなくとも、何か気の利いた生き物がいい。でも、できればカメが欲しい。僕は、そう思っていた。

 例のごとく、僕の家は貧乏だったので、200円しか持っていなかった。僕が100円で、弟も100円。合わせて200円。

「おかあさん、スーパーの駐車場に出ているペット屋さんで、カメを買うからお金をちょうだい」と言ったら、渋々ながら母親は僕らにお金をくれた。ペットを飼うのは嫌っていた母親だったが、カメくらいならばいいだろうと、許してくれたのだった。それで、100円ずつ。合わせて200円を渡してくれた。


 僕と弟は興奮しながら、早足で、目的地へと向った。

「早くしないと、売り切れてしまうかも知れないぞ!」

 そんな風に声をかけて、僕は弟をせかした。


 そうして、目的のスーパーの駐車場に到着すると、案の定、カメは売られていた。

 けれども、貼られている値段を見て、僕らは愕然とした。そこには、“500円”と書いてあったのだ。これでは、到底、届かない。200円では、半分も買えやしない。もちろん、生きているカメだから、ぶつ切りにして売ってもらうわけにもいかない。

「200円で買えるモノはなんだろうか?」

 そう呟きながら探してみると、それはザリガニだった。アメリカザリガニ。それだけ。それ以外は、何も買えやしない。アメリカザリガニならば、近所のドブ川にも住んでいる。スルメなんかをエサにして釣り上げるのだ。

 弟も、こう言っていた。

「ザリガニだったら、要らな~い」

 仕方がないので、僕らはペットを飼うのを諦めた。帰りに50円のアイスを1本ずつ買って、それを舐めながら帰った。


 僕は、母親を呪った。100円ずつしかくれなかった母親を。2人で200円だなんて、ケチ臭い!せめて、500円くれればよかったのに!そうすれば、カメが買えていた。ああ~あ、カメが飼いたかったな…

 そうして、貧乏を呪った。カメ1匹買ってもらえないような貧乏な境遇を。

 僕は、大人になったら、カメを飼おうと思った。カメを飼えるくらいには、お金持ちになろうと誓った。けれども、結局、大人になってからもカメを飼ったりはしていない。そんなモノに興味はなくなってしまっていた。僕のカメに対する興味と情熱は、いつの間にか失われてしまっていたのだった。

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