~普通の小学生~
僕は、実に普通の小学生だった。
朝起きて、学校に通い、勉強し、友達と遊び、夕食を食べて、お風呂に入って、寝る。
給食は美味しかったし、残すことはなかった。そもそも嫌いな物が、ほとんどなかった。シイタケとセロリは好きではなかったが、それも無理して飲み込んだ。
もちろん、休みの日は楽しみだったし、動物園や遊園地や野球場に連れていってもらえた日には、心の底から喜んだ。ただ、僕の家はあまりお金持ちではなかったので、そんな日は年に何度もなかった。ほとんどは、もっとお金のかからない遊びだった。
たとえば、おじいちゃんとおばあちゃんの家に遊びに行くとか。お父さんのおじいちゃんとおばあちゃんは、近くに住んでいたので、家族でよく遊びに行った。僕の家から自動車に乗って20分か25分くらい。最速で飛ばせば、15分くらいで着く。
お母さんは、安全運転だったので、そんなに飛ばしたりはしない。けれども、お父さんの運転は違っていた。もっとスピードを出す。それでいて、要所要所は押さえている感じ。細い道や、曲がり角の多い場所ではスピードを落とし、ゆっくりと慎重に運転する。逆に、真っ直ぐで広く大きな道ではビュンビュンと飛ばす!
僕は、そんなお父さんの運転を少し恐いなと思っていた。けれども、決して事故を起こすようなことはなかった。不思議なものだ。
おじいちゃんとおばあちゃんの家に遊びに行く…と言ったけれども、実際は農家の手伝いだった。稲刈りだとか、モチつきだとか、そういった大勢の手が必要な時に、親戚一同集合して、みんなで一致団結して作業にあたるのだった。その間に、僕ら子供は端の方で邪魔したり、手伝ったり、遊んだりしているわけだ。
お父さんには、お兄ちゃんと弟がいて、それぞれ子供がいた。僕にとっては“いとこ”にあたる。僕らは、よく一緒に遊んだ。
もちろん、農家の手伝いだけではない。お盆やお正月には必ず集まったし、その時にはお墓の掃除などの細かい雑務をこなした。僕も少しは手伝った。お母さんは、料理の担当。
僕のお母さんは、それなりに料理が上手かった。あまりお金がないものだから、工夫して美味しい物を作ろうとするのだ。お店で出てくるような料理とは違っていたけれども、それでもそれなりの良さがあった。どちらかといえば、学校の給食の味に近い。