~普通の万引き~
今回は、犯罪の話である。
そう!万引き!普通の万引き。
万引きは犯罪であるからにして、既に普通ではないという考え方もあるだろう。それは、正解!けれども普通ではない万引きの中にも、“普通の万引き”と“普通ではない万引き”があると思う。
“普通の万引き”というのは、ある少年や少女が、子供時代に社会のコトをよく知らずにやってしまう万引きのコトである。なので、回数は1度。もしくは、犯罪が発覚するまでの数度ということになる。
それに対して、“普通でない万引き”の方。これは、もう完全にわかっていてやってしまう犯罪。なので、何度でも繰り返す。犯罪が発覚した後も、繰り返し盗難に走る。「捕まったのは運が悪かった」あるいは「バレたのは、能力が低いから。次からは、バレないようにやればいい」などと考えて、何度でも何度でも繰り返す。
もちろん、そこには家庭の環境など、様々な要因が存在するのだろう。貧乏な家の子は犯罪に走りやすい傾向になるという話も聞く。説得力のある説だ。ただ、今回、それは置いておこう。
今回するのは、“普通の万引き”の方の話である。つまり、よく知らずにやってしまう方。だから、1度注意すれば、大抵はそれでやめることになる。
で、万引きをしたのは、誰かという話なのだが…
残念ながら、うちの子である。娘ではない。息子の方だ。
息子が、まだ小学校低学年の頃。確か、入学してしばらくしてだから、1年生の時だったと思う。
その日、息子は妻について行って、近所のスーパーへと出かけた。そこで、どうしても欲しいお菓子があったらしい。何かのキャラクターグッズがおまけについたお菓子だ。けれども、妻はそれを拒否した。「この前、買ってあげたばかりでしょ!」とか何とか言って。で、そのまま、買い物を終えて、帰宅した。
ところが、息子のポケットには、買ったはずのないお菓子が入っている。それは、家に到着してから発覚した。もちろん、妻は息子を叱った。で、僕が帰宅してきた。
ここで、普通の父親ならば、どうするだろうか?当然、商品を返却しに、スーパーへと向うだろう。もしくは、商品の代金を支払いに、だ。
だが、妻はそれを拒否した。
「もう終わったコトだし、いいでしょ」などとぬかすのだ。さらには、「お店の人にはバレてないみたいだし、わざわざ伝えに行く必要はないじゃないの。体裁だって悪くなるし。その分、今度余計に買い物をするから」などと続ける。
ここで、僕は激怒した!
「そういう問題じゃない!駄目に決まってるだろう!」と。
が、それ以上、ケンカにはならなかった。セールスマンに英語の教材セットを買わされて、50万円も支払った時のようにはならずに済んだのだ。さすがに、妻も罪悪感を感じていたのだろう。悪いというコト自体は、わかっていたのだ。
その後、閉店間際のスーパーまで、僕は息子と2人で出かけた。そうして、平謝りに謝り、商品の代金を支払った。店員さんは、ニコニコとした笑顔で許してくれた。それどころか、こんな風にまで言ってくれたのだ。
「いやいや、今どき、珍しいですね。わざわざ、そこまでしてくれる人なんて、そうはいませんよ。わかっていても、お金を払いに来てくれるだなんて。普通は、できませんよ。子供に注意して、それで終わりでしょう」
いや、違う。そうではないのだ。店員さんのその言葉は、心の底からありがたかった。けれども、これは普通のコトなのだ。普通の息子がやってしまった普通の万引き。それを普通の父親であるこの僕が、普通に謝りにやって来て、商品の代金を支払った。実に、普通の行為である。
「ぼうや、もうやっちゃ駄目だぞ」
店員さんは、そうやさしく息子に注意してくれた。
もちろん、息子も「はい…」と小さく返事をした。しおらしくて、いかにも心の底から反省していますという返事であった。こういう場面で最も適切であると思われる普通の対応ができた瞬間だった。




