~普通の食事~
僕の食生活は、いたって普通である。
世界的に見てどうかは知らないが、現代の日本人的には、極々普通の食生活だろうと思う。妻の作る手料理も食べれば、外でファミリーレストランや定食屋などに入り、食事をすることもある。もちろん、ハンバーガーやらカップ麺のような、体に悪そうな物も平気で食べる。
好き嫌いは、ほとんどない。子供の頃には、いくらかあったが、それもシイタケとセロリくらいのものだった。大人になってからは、それらも普通にパクパクと食べることができるようになっていた。
そりゃ、よっぽどのゲテモノだと話は別だが。たとえば、虫の唐揚げなんかが目の前に出されたとして、食べられるかどうかはわからない。あるいは、外国の人とのつきあいで、犬料理が出てきたとしよう。もちろん、相手は好意で勧めてくれている。そんな時、僕は平気でそれらの料理を食べられるだろうか?
その時になってみないとわからないが、「ま、せっかくだから」と口にするかも知れない。しかし、内心、断りたい気持ちでいっぱいだろう。
昔は、食べたい物を好きなだけ食べて暮らしていた僕だったが、それでも限度は知っていた。安いからといって、無理をして、いっぱいのお腹に詰め込んだりはしない。
まして、最近は、塩分なんかも気にするようになってきた。なるべく調味料はかけないように気を使っているし、昔は何倍でもおかわりしていたミソ汁なんかも、1杯で抑えるようにしている。ミソ汁は意外と塩分が高い。そういえば、ラーメンのスープも残すようになったな。若い頃は、平気で全部飲み干したりしていたのだけど。「お店の人に悪いから」とかいう理由で。でも、今は自分の体の方が大切だと思うようになってきた。
こういうのもテレビの影響かも知れない。テレビというのは影響力が大きい。かつて程ではないとはいえ、まだまだその力は絶大である。特に、僕のような普通の人間にとっては。
僕だけではない。妻も、「これ、テレビで言ってたんだけどね」などと、よく話をしている。職場の人間にしても、それは同じだ。子供達は、もうちょっと違う。「これ、インターネットに書いてあったんだけどね」というセリフの割合も高い。それでも、小さな子供の頃から、テレビの影響は大きく受けて育ってきた。
そうそう。今回は、テレビの話ではなかった。食事の話だ。
妻は、僕にお弁当を作ってくれる。仕事に行く前に、それを持たせてくれるのだ。けれども、“必ず”というわけではない。どうしても忙しくて作れない日もあるし、食材が足りない日だってある。
そんな時には、会社の食堂でお弁当を頼む。食堂とはいっても、お弁当しかない。ラーメンだとか、カレーライスだとか、A定食なんかがあるわけではない。お弁当オンリー。それも、朝、頼んでおかなければ、お昼に食べることができない。注文制なのだ。
食堂は、いつも混んでいる。注文したお弁当を食べる人もいれば、僕みたいに家で作ったお弁当を持ってくる人もいる。お茶は飲み放題。お吸い物やミソ汁は、お弁当を注文した人だけが飲むことができる。
外部の人が、やって来れる環境でもない。自然と顔を合わせるメンバーは決まっている。話題も、毎日、似たようなものだ。それでも、僕はそんな食堂で過ごすお昼の時間がたまらなく好きだった。こういうのを嫌う人もいるが、僕にとっては、最高の時間。変わらぬ日常こそが、僕の最大の望み。そうして、会社の食堂には、それがあるのだから。




