~普通の子育て~
僕には、2人の子供がいる。女の子と男の子が1人ずつ、だ。
もう、どちらも成長してしまって、“子供”というには大き過ぎるが、それでも僕にとっては子供なのだ。おそらく、それは死ぬまで変わらない。いつまでも、僕にとっては子供であり続けるのだろう。
自慢じゃないが、どちらの子も、それなりに子育てには成功したと思っている。
大きく人の道から外れるようなことはなかったし、自分の意志もハッキリと持って成長してくれた。僕にとっては、それだけで充分。
人には人の生き方がある。いくら僕の子供だからといっても、そこは1人の人間なのだ。ある程度の年齢に達するまでは、あれこれ口を出すこともあるが、それでも基本的には本人の自由に生きていって欲しいと願っている。
子供達とケンカしたという記憶は、あまりない。全くないわけではないが、そう多くはない。たとえば、子供達がまだ小さい頃に「あのおもちゃを買って欲しい」「あのお菓子が食べたい」などとワガママを言ってきて、軽く叱ったことなどはある。似たようなことは何度もあった。せいぜい、その程度だ。
それよりも、子育てについて妻とケンカする方が多かった。結婚するまでは、目立って大きな口ゲンカなどしたこともない僕らだったが、結婚してからはよく衝突した。ま、夫婦なんてそんなものだ。“ケンカする程、仲がいい”ともいうし、これも普通の夫婦の形であるのだろう。
一番大きなケンカをしたのは、いつだっただろうか?
そう、あの時じゃないだろうか?「英語の教材を購入する」とかなんとか妻が言い出した時。確か、50万円くらいもする高価な品だった。娘が、まだ小学校に上がる前だったから、5歳くらいだったと記憶している。
教材のセールスマンがやって来て、「これからの時代は英語ですよ!英語ができれば、将来安心です。それどころか、外国語の1つも話せないようでは、これからの時代ついてけませんよ」などという勧誘文句に乗せられて、高価な英語教材セットを購入してしまったのだ。
それを妻から知らされたのは、全額、振込先の口座に入金した後だった。
僕は激怒した!
「そんなもの何の役にも立つものか!英語だったら、もっと安い教材で、効率よく勉強できるだろう!」と。
それに対して、妻はこんな風に反論したのを覚えている。
「いいじゃないの。子供の将来の為だもの。私が稼いだお金で、私が支払ったんだから!それで、文句ないでしょ!」と。
その後も、口論は続いたが、全てはもう遅かった。お金は払い終わっているのだ。今さら、どうこう言った所で、もう手遅れ。“クーリングオフ”なんて制度もあるにはあったが、そんなもの使うつもりは妻には全くないようだった。
結局、その高価な教材は、数ヶ月もしない内に見向きもされなくなった。誰にも触れられることもなくなり、部屋のインテリアと成り下がり、やがて何年か後に、親戚の子の家に宅配便で送られていった。おそらく、その子もすぐに飽きて、触れられることはなくなっただろう。そんなものだ。
でも、そのコトを口にすると、またケンカになるのは目に見えていたので、僕はその件に関して再び話題にすることはなくなった。
ま、こんな出来事の1つや2つは、どこの家庭にでもあるものだろう。そんな所も、我が家は普通なのである。




