~普通の文房具屋~
僕の友達に林田君というのがいるという話は、この前したと思う。林田君は、“林田文具”という文房具屋の息子だ。
林田文具は、普通の文房具屋である。なので、店はあまり広くはない。いや、実を言えば、かなり狭い。「どうして、この狭いお店の経営が成り立っているのだろうか?」と、昔から不思議だった。
おそらく、それは店主である林田君のお父さんの人柄だろう。近所でも評判になるくらい、いい人なのだ。
それから、品揃えもなかなかいい。狭い店内なので、あまり数は置けないが、なんというかセンスがいいのだ。「あ、これ欲しいな」と思えるような筆箱や鉛筆が揃っている。
それにしても、だ。家族4人が食べていけるだけの利益を出せるというのは、並大抵のことでない。そんなお店を何年にも渡って経営し続けたのだ。立派な手腕と言えるだろう。
しかも、林田文具は2号店も出店した。余程、儲かっていたのだろう。場所は、ちょっとばかしへんぴな地域にあるのだが、それでも2号店は2号店である。これは、実に尊敬すべきことだろう。
話は変わって、森田文具である。
森田文具というのは、中学校の前にドデ~ンと店を構えている大きな文房具屋なのだ。中学校と直接の取り引きもあるらしい。学校で使う教材…たとえば、画用紙だとか筆だとか半紙だとか、そういった物もまとめて卸しているらしい。だから、かなり儲かっているみたいだ。何よりも、安定して収入がある。
しかも、中学校の目の前にあるものだから、学校の先生や中学生がよく買い物に来る。時には、忘れ物をした生徒が休憩時間にやってきて、文房具を購入したりするらしい。本当は、1度学校に登校した生徒は、下校時間まで外に出てはならないのだが、そのくらいは先生も大目に見ているのだろう。もちろん、森田文具の店員も、何も言わずに売ってくれるという話だ。
幸い、僕は中学在学中に、そのような行為に及んだことは1度もなかったが。
林田文具は、そんな森田文具のようなお店を相手に長年経営を続けてきたわけだ。場所は少し離れて建ってはいたが、それでも影響がないはずはない。
けれども、その林田文具も、ついに潰れてしまった。
理由は、100円ショップの台頭である。安くて、それなりの品質の商品をズラリと並べる100円ショップは強大過ぎた。さすがの林田文具も、時代の流れには逆らえなかったわけだ。
それでも、2号店は残っている。1号店の方は場所も良く、家賃も高かったので、店をたたんでしまったが、2号店の方は健在である。最近、近くを通ったが、元気に営業していた。
そこで、大人になった僕は再び不思議に思うのである。
「こんな時代に、よくこんなお店の経営が成り立っているものだな…」と。




