08 かみとうたうたい
08 かみとうたうたい
「君の名前は、なんていうの?」
せいじさんは私の長い長い髪をとかしながら、そう聞きました。生まれてから一度も切ったことの無い髪は、きっと小窓からたらしたら、地面についてしまうのではないのかというくらい、とてもとても長いです。
「私の、名前……」
とても小さい頃、おばあさんに、「お前の名前はとっても変な名前だ。馬鹿にされたくなかったら、誰にも言うんじゃないよ」って言われています。
それが本当なのかわからないけれど、せいじさんにばかにされたくなかったから、わたしはなんて答えていいかわからなくて、黙ってしまいました。
「ん? どうしたの?」
「ぁ、わたし……名前は」
「答えたくないかな? だったらいいよ」
少しだけ冷たい声に感じて、わたしはぎくりと背筋がふるえました。
「あぁ。違うよ、君がなのってくれるまで待ってる。でも、いつまでも君って呼びたくないから、なんて呼べばいいのかな?」
「……ラプンツェル」
せいじさんは私の様子に気がついて、付け足してくれました。
「ラプンツェルか……。知ってる? おはなしに出てくるラプンツェルって、とっても歌が上手なんだよ?」
「そうなの?」
「うん。ラプンツェルは歌は得意?」
「そんなことないよ」
本当は小窓から空を眺めながら歌っています。でも、歌なんて習ったこと無いから、リズムははちゃめちゃだし、歌って言うのは、ちょっと違う気がしました。
「うそ。だって、俺が仕事をしているとき、君の美しい歌声が聞こえて来るんだよ」
髪をとかすのをやめたせいじさんは、わたしの前に来て、座っていたわたしを同じ目線になるように座りました。
「今度、君の歌をちゃんと聞かせて欲しいな」
感想・評価お待ちしています。